どんな時にも、癒しの時間って大切だなぁと感じるこの頃。「家呑み」をする人が増えているのも、その表れなのかもしれません。また癒しと言えば香りにまつわるものも多く、香りのよい食材はお酒との相性も抜群です。
そのなかでも今回は、今が旬の山椒に注目!
知られざる山椒の歴史や効能とともに、家呑みがもっと美味しく楽しくなる「山椒の実の塩漬け」の作り方と、我が家でも人気のアレンジレシピをご紹介したいと思います。山椒のピリリとした香りで、身体の内側からリフレッシュしませんか。
では、さっそく進めていきますね。
日本人に古くから親しまれてきた山椒
山椒と聞くとすぐに思い出すのは、うなぎの蒲焼に添えられた粉山椒。食欲をそそる組み合わせですが、室町時代にはすでにこの食習慣があったそうです。
山椒の歴史はとても古く、なんと『古事記』や『魏志倭人伝』にも登場しています。日本に古くからある香辛料のひとつで、別名「ジャパニーズペッパー」とも呼ばれています。現在は栽培されたものも多く出回っていますが、明治時代以前は山野に自生しているものを使っていたのだとか。
ちなみに山椒は、ミカン科に属しており植物全体に独特の香りがあります。山椒と一口に言っても、「木の芽」と呼ばれる若葉、黄色の花が咲く「花山椒」、その後にできる「実山椒」などがあり、いずれも古くから料理に使われてきました。
「小粒でもピリリと辛い」山椒のパワー
たった一粒食べただけでも、ピリリとした辛みと爽やかな香りが口いっぱいに広がる山椒。そのことから「山椒は小粒でもピリリと辛い」ということわざが生まれ、「身体は小さくても才能や力量に優れ、あなどれない」という意味を持っています。
では、これだけの辛さと香りを持つ山椒には、どんな効能があるのでしょうか。
・食欲増進、消化促進…山椒の辛味は「サンショオール」という成分によるもの。この成分が大脳を刺激し、内臓の働きを高めてくれる。
・血行促進…辛みと香りが、血行を促進させて新陳代謝を高めてくれる。昔から肩こり、冷え性などの民間療法などでよく使われてきた。
・殺菌・防腐効果…川魚などに添えて食中毒の予防などにもよく使われる。うなぎに粉山椒が添えられている理由には、味の相性だけでなく、食材の味を保つ意味もある。
食欲が落ちやすく体調を崩しやすくなる梅雨~夏。山椒は、これからの時期を健やかに過ごすためにも欠かせない食材と言えそうですね!
また、山椒は七味唐辛子やカレー粉、漢方薬にブレンドされるなど、実はいろいろな場面で幅広く使われています。
山椒の特徴のひとつに、しびれるような辛味があります。民間療法では、歯が痛い時などに山椒を食べて、気になる痛みをマヒさせる「応急処置」として使うこともあるのだとか。
それだけ強いパワーを持つ食材でもあるので、食べ過ぎにはくれぐれもご注意くださいね。
「山椒の塩漬け」を作ってみよう!
こんなにも素晴らしいパワーと歴史を持つ、山椒。5月末~6月にかけて旬を迎えるため、スーパーなどでも山椒の実をよく見かけるようになりました。今だけの香りと効能を閉じ込めて、美味しい保存食を作ってみましょう!
そこで今回は「山椒の塩漬け」をご紹介したいと思います。
これを片手にお酒をちびちび飲むのもいいですし、いつも料理に添えるだけでもお酒によく合う一品になります。
実はほぼ毎晩お酒を楽しんでいる我が家でも、大活躍! 山椒の醤油漬けやみりん漬けなども作ってみましたが、いろいろと試してみた結果、シンプルな塩漬けに落ち着きました。
枝を外している時も熱湯で茹でている時も、とってもいい香り。これを楽しめるのは、手作りする人の特権です。山椒が手に入ったら、ぜひ新鮮なうちに、五感を研ぎ澄ませて仕込んでみてくださいね。
〈材料〉
・山椒の実
・自然塩 山椒の重量の10%
*山椒の実と塩だけで仕込むので、どんな塩を使うかによって仕上がりの味が大きく変わります。そのまま食べて「美味しい」と思う塩を使ってくださいね。
1.山椒の実は、枝を丁寧にはずす。
2.沸騰したお湯に1の山椒を入れて、弱火で6~8分程度加熱する。一粒つまんでみて、手で潰せるくらいの固さになればOK。火を止めて、ザルにあげる。
3.2の山椒をボウルに入れて水を加えて、アク抜きをする。1時間位経った頃に味を見て、好みの味になっていればOK。ザルにあげて、水気をふき取る。もう少しアクを抜きたい場合は、水を取り替えて再び水に浸す。
4.3の山椒と塩を混ぜて、保存瓶などに入れる。1~2日は常温で保管し、その後は冷蔵庫に入れる。1週間位経つと、味が落ち着いてくる。
写真と作業工程がずらりと並びましたが、基本的には「枝を外して、茹でて、アクを抜き、塩漬けにする」こと。枝を外すところは一苦労ですが、後は時間が経つのを待つだけです。冷蔵庫で保管すれば、一年間は美味しく食べられます。ぜひたっぷりと作ってみてくださいね。
【アレンジ1】ちりめん山椒風
本来の作り方とは違いますが、山椒の塩漬けをちりめんじゃこと混ぜれば、手軽にちりめん山椒にも似た一品ができあがり。炊き立てのごはんの上に乗せてどうぞ。
山椒の塩漬けは魚の臭みを消してくれるので、青魚などとの相性も抜群。焼き魚やマリネ、煮魚などに添えるのもおすすめです。
【アレンジ2】冷奴や麺類の薬味として
山椒の塩漬けは、豆腐料理や麺類の薬味に使うのも、よく合います。冷奴の上に、山椒の塩漬けを数粒乗せるだけで、酒の肴ができあがり。
冷奴などのように夏の料理は身体を冷やすものも多いですが、山椒など身体を温めるスパイスや香味野菜を組み合わせることで、その作用を和らげてくれます。山椒の塩漬けがあると、口にも身体にも嬉しい一品になります。
【アレンジ3】煮物や煮浸し、サラダなどのアクセントに
「トマトと新玉ねぎの煮浸し」の上に、山椒の塩漬けをパラリ。普段の煮物やサラダなどのアクセントとして加えるのもおすすめです。
小さなお子さんがいるご家庭などでは「お酒は飲みたいけれど、そのためにもう一品作るのは面倒! 」という声もよく聞きます。いつもの料理に山椒の塩漬けを添えるだけでお酒によく合う一品に変身するので、そんな方にもぜひおすすめです。
家呑みをもっと楽しもう!
家呑みの楽しみは、料理やお酒そのものを味わうだけでなく、いろんな話をして親しい人と語り合うこと。そこに山椒の塩漬けのような旬の一品が加わると、家呑みはもっと豊かで楽しい時間になります。
「枝を取るのが大変だった」「ピリリとするなぁ」といった会話が生まれることも、手作りならではの面白さなのかもしれません。
一粒にびっくりするほどのパワーを秘めた山椒の実。
旬の香りを心身いっぱいに味わって、家呑みをもっと楽しみませんか。