扇面の宗達、団扇の光琳が琳派好きの合言葉
絶妙なデザイン感覚が味わえる光琳団扇
尾形光琳『紅葉流水図(竜田川図)』
「宗達の扇面、光琳の団扇」と称されるように、団扇というイレギュラーな舞台で、光琳はデザイン性をいかんなく発揮。掛軸に仕立て直されたこの団扇には、緑の丸い山に沿って流れる川に光琳特有の竜田川模様が描かれ、紅葉と金が華やぎを添えている。
一幅 紙本着色 江戸時代(18世紀) 24.4×24.3㎝ 五島美術館蔵
金を背景にした生気みなぎる百合
池田孤邨『百合図屛風』
抱一の弟子として其一と同格であった孤邨は、琳派の伝統を守りながら、個性的な作品を残している。本作は表が金地の鉄砲百合、裏は銀地の小さな百合が描かれていて、抱一の『夏秋草図屛風』に着想を得たと目されている。
二曲一隻 紙本金地着色 江戸時代(19世紀) 56.6×169.3㎝ 遠山記念館蔵
工芸への展開をリードした光悦作
本阿弥光悦 『舟橋蒔絵硯箱』
光悦の工芸品の多くは直接つくったのではなく、アートディレクターやアドバイザーという立場で、蒔絵師と注文主を仲介したものだとされる。本作は『後撰和歌集』の源等の和歌が題材になっている。
一合 木製漆塗 江戸時代(17世紀) 24.2×22.9×11.8㎝ 国宝 東京国立博物館蔵 Image:TNM ImageArchives
簡略化された自然美と名歌のコラボレーション
本阿弥光悦書・俵屋宗達下絵
『四季草花下絵古今集和歌巻』
9mの書簡には、冬を表す竹に始まり、梅、つつじ、蔦と順に四季を描いた宗達の下絵。その絵や余白に光悦が古今和歌集の歌を書いた巻物は、琳派が誇る最強のコラボレーション。順を追って見ていくと、その凄さが実感できる。
一巻(部分) 紙本金銀泥絵・墨書 江戸時代(17世紀) 33.7×918.7㎝ 重文 畠山記念館蔵
光悦の『嵯峨本』の模様を描いた代表作
尾形乾山 『白泥染付金彩芒文蓋物』
すすきの穂と葉が混じりあった柄は、光悦作の謡本『嵯峨本』の模様からヒントを得たものとされ、時代を超えて受け継がれてきた琳派デザインのコラボレーションと考えられる。39~50歳のころに乾山が手がけた蓋物の名品。
江戸時代(18世紀) 26.4×26.8×8.2㎝ 重文 サントリー美術館蔵
ひとり気を吐いた大坂琳派の雄
中村芳中『白梅図』
江戸琳派隆盛期、大坂で独自に琳派の画風を受け継いだのが中村芳中。扇面や草花図を得意とし、本作が掛幅装の代表作。意匠化が巧みで、墨のたらし込みに緑青や群青を混ぜ、金泥を用いたのが特徴。
一幅 紙本着色 文化期(1804~1818年)ごろ 134.5×66.5㎝ 千葉市美術館蔵
まっすぐ伸びた姿に其一の気魄が満ちる
鈴木其一 『向日葵図』
画面の中央に茎をまっすぐ伸ばし、大輪のひまわりが上下いっぱいに描かれた作品は、見る者に挑んでくるかのような気迫に満ちている。確かな技術をもちながら、どこかエキセントリックな作風を示した其一の真髄が味わえる。
一幅 絹本着色 江戸時代(19世紀) 119×49.6㎝ 畠山記念館蔵
-2013年和樂10月号より-