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2017.07.24

尾形光琳「紅白梅図屏風」の謎を解く! 中央の川は女性のボディってホント?

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琳派の名絵師・尾形光琳が晩年に描いた「紅白梅図屏風(こうはくばいずびょうぶ)」。光琳が模索し続けたグラフィカルな構図やデザイン性の集大成ともいうべき作品です。日本美術の代表的名画としても知られ、後世に多大な影響を残した傑作。今回は、そんな「紅白梅図屏風」の注目すべきポイントをご紹介します。

「紅白梅図屏風」に表現されたユニークな暗喩の数々

スクリーンショット 2017-07-18 16.38.03尾形光琳「紅白梅図屛風」紙本金地着色 2曲1隻 各156×172.2㎝ 江戸時代(18世紀) MOA美術館蔵

背景を省略し、右隻に紅梅、左隻に白梅を配して、梅の木の間に流水をクローズアップ。紅梅は画面いっぱいに描きながら、白梅の大部分は画面外に隠され、左右対照の妙を見せながら、中央の流水を未広がりに描いて微妙な曲面をつくり上げた構図は、光琳の独創性の賜物です。

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その独創性ゆえ、この絵は様々な見方がなされてきました。いくつか例をあげると、左右の梅は男性で女性を表した流水を奪い合っているという説や、紅梅は若さ、白梅は老いを表し、流水は時間の流れを表すという説など。実際のところは不明ですが、そのようなイメージや暗喩を喚起するのも、比類なき名画であるがゆえのこと。いかに多くの人の心をとらえたかということの証でもあります。

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この絵にはほかにも、のちに光琳梅と呼ばれる意匠のもととなる花弁を線描きしない梅花や、琳派の絵師たちに受け継がれる「たらし込み」の技法で木の幹が描かれていたりして、見どころ満載。

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さらに、近年の科学調査によって、中央の流水文の表現は、銀箔地に流水文をマスキングして描き、周囲の銀を黒色に硫化変色させるという極めて珍しい工芸的手法が用いられていることが判明。呉服商の御曹司であった光琳は染色技法に詳しかったことから、この作品の金銀地において、防染技術を試みたと考えられています。

このように卓抜した技術とアイディアを凝縮した作品は、重厚な雰囲気の中にリズム感やしゃれたセンスがちりばめられていて、目にした人をたちまち魅了してしまうほど。まさしく光琳の集大成にして最高傑作なのです。

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「紅白梅図屏風」をみるなら、MOA美術館へ!

2019年1月25日から3月12日まで、MOA美術館で「リニューアル3周年記念名品展 第1部 国宝『紅白梅図屏風』」が開催します。名品中の名品が一堂に会する、春の贅沢な展覧会。今回ご紹介した尾形光琳の最晩年の傑作「紅白梅図屏風」をはじめ、野々村仁清の「色絵藤花文茶壺」、奈良から室町期までの古筆名蹟の集大成といえる「翰墨城(かんぼくじょう)」と、MOA美術館が所蔵する国宝3点がすべて展示されます。ほかにも、仏教美術、中国・日本絵画、漆工芸など、東洋美術の名品がずらり。広大な庭園内の梅園も見ごろを迎える時期、展覧会の後はゆったり散策を楽しんで贅沢な休日を過ごしてください!

リニューアル3周年記念名品展 第1部 国宝「紅白梅図屏風」

■概要
会期 2019年1月25日〜3月12日
会場 MOA美術館
住所 静岡県熱海市桃山町26-2
TEL 0557-84-2511(代表)

■交通アクセス
JR熱海駅より
バス  バスターミナル8番乗り場よりMOA美術館行き 約7分 終点「MOA美術館」下車すぐ
駐車台数 200台
利用時間 9:00〜17:00/料金  無料
※ 大型バスをご利用の際は事前にご連絡ください。下車、駐車場をご案内いたします。
※ 満車の場合は市内の駐車場などをご利用いただき、公共の交通機関をご利用ください。

■開館時間・休館日
開館時間 9:30〜16:30(最終入館は16:00まで)
休館日 木曜日(祝休日の場合は開館)

■観覧料
一般 1,600円(1,300円)
高大生 1,000円(700円)
小中生 無料
シニア割引 1,400円
障害者割引 800円
※ ()内は10名以上の団体料金
※ 各種割引の併用はできません。
※ 高大生の方は入館の際、身分を証明できるものをご提示ください。
※ シニア割引の適用は65歳以上となります。(証明できるものをご提示ください)
※ 障害者割引の適用は障害のある方とその付添者1名となります。(証明できるものをご提示ください)