夏という季節に大人も子供も心が浮き立つのは、全世界共通。澄んだ海、乾いた風がひときわ心地よく感じるころ、時間に余裕があるのなら、本島のその先にある離島を目ざしてみませんか?今月のINTOJAPANでは、『佐渡』『対馬』『大三島』を3週にわたってご紹介します。
日本で3番目に大きな離島『対馬』、そこのある古代から変わらない風景
博多から約120㎞沖の玄界灘に浮かぶ島、対馬。佐渡島、奄美大島に次ぐ国内で3番目に大きな離島です。対馬は北西の朝鮮半島までおよそ50㎞の距離にあり、九州本島のほうがずっと遠い。それが、対馬が『国境の島』と呼ばれるゆえんです。
対馬という島は南北に細く長く広がっている地形に特徴があります。その9割が森林で覆われているため、平地があるのはごく限られます。また地層は粘板岩や頁岩(けつがん)からできているため、田を開くことができる場所も限りがあります。加えて、傾斜が険しいために、山にも田を開けないのでした。
「海岸の近くのわずかな土地に住宅が密集しているのが見えますか?これが対馬の典型的な人々の暮らしの風景なんです」と今回、島のガイド役を担ってくれた対馬観光物産協会事務局長の西 護(にし まもる)さん。そう言われて注意して見ると、谷間や海辺に身を寄せるようにして家が並んでいます。集落には必ず小さな祠があり、その後ろには手つかずの森がありました。なにしろ、対馬には200もの寺社があり、祠の数も加えたらその倍以上になるという話も!
佐護洲崎にある『天神多久頭魂神社』。島の南西端にある豆酘の『多久頭魂神社』と対をなしている。
どの寺社に行けば、対馬の『おおもと』の姿を見られるのかと迷っていたところ、西さんからのアドバイスは「昔から島の要所といわれる所」に行くのがよい、とのこと。人の住む場所が限定されるこの島だからこそ、古くから港のある集落には歴史がある。西さんの提案に従い、南西端の『豆酘』、島の中央部『小船越』あたり、北部の『佐護』の各地を巡ります。
左/鴨居瀬にある『住吉神社』 右/『和多都美神社』
最初に訪ねたのは『小船越』。上の島と下の島をつなぐ地峡に位置する入江です。「九州などから来た船はここに入りました。小さい船は陸にあげて、入江の対岸に広がる浅茅湾へ運び、そこからあらためて朝鮮半島に向かったのです」と西さん。小船越に入る手前、海岸の突端に立つ『住吉神社』を訪ねました。鳥居が海のきわにあるのは、船上から参拝するため。澄んだ入江からはサンゴを見ることができ、清々しい気の流れる場所でした。その浅茅湾に沿うように北上すれば『和多都美神社』があります。この神社の見どころは、社殿のその奥。森の茂みの中にある磐座(いわくら)です。古代はここに神が宿ると考えられ、祭祀が行われていた場所とのこと。日本に神道が生まれるよりずっと前、海や森、神秘を感じる『場』そのものに対して人は信仰を捧げていたのです。
天神多久頭魂神社の祭壇。
島の北部と南部には天道信仰に基づく神社が対をなすようにあり、北にあるのが『天神多久頭魂神社』です。御神体は背後にそびえる天道山であり、社殿はなく、野ざらしになった磐座が祭壇です。鳥居よりもずっと前から置かれている石積みを見れば、社殿や鳥居は形式的につくられたものに感じます。この島には古代信仰が今も生きているのでした。
対馬をもっと楽しむ旅案内!
【訪れる】
対馬野生生物保護センター
島内に100頭程度生息しているといわれるツシマヤマネコ。ここ対馬野生生物保護センターでは、ふだん見ることのできないツシマヤマネコの生態を知ってもらうために、ガラス越しに公開。写真はオスの福馬くん。
webサイト:対馬野生生物保護センター
観光情報館ふれあい処 つしま
観光案内所を中心に、お土産販売所や郷土料理を扱う食堂も併設。南北に長く、観光名所が点在する対馬を効率よく巡るには、ガイドについてもらったほうがよい。来島前のパンフレットの請求やガイド手配などもすべてこちらへ。
webサイト:観光情報館ふれあい処 つしま