連日の猛暑もひと段落した今、ぜひとも見に行きたい展覧会を日本美術から現代アートまでご紹介します。会期終了が迫っていますのでどうぞお見逃しなく。
『レオナルド×ミケランジェロ展』
三菱一号館美術館(〜9月24日まで)
ミケランジェロ・ブオナローティ『背を向けた男性裸体像』 1504年〜5年 カーサ・ブオナローティ蔵©︎Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti
男性の背面の、克明な筋肉の描写に思わず眼をみはる『背を向けた男性裸体像』。フィレンツェ・ヴェッキオ宮殿の壁画『カッシナの戦い』のための習作です。「自分は画家ではなく、彫刻家だ」と言っていたというミケランジェロらしい彫刻家の眼を感じさせる捉え方と、「平らなものを立体に見せるという技量…画家はこの点で彫刻家を凌駕している」としたレオナルド・ダ・ヴィンチの作品を比較できる展覧会。軍配はどちらに?
『AMBIENT 深澤直人がデザインする生活の周囲展』
パナソニック汐留ミュージアム(〜10月1日まで)
《ISSEY MIYAKE TWELVE NYOP001》セイコーウォッチ株式会社、2015年 セイコーウォッチ株式会社蔵
プロダクトデザイナーの深澤直人が「時計をよりシンプルにする」ために考えたのは、文字盤の目盛りを外し、その代わりに12角形のガラスを用いること。ただの12個の角が、何の説明もなく文字盤の役割を果たしていることに、新鮮な驚きを覚えます。国内外で電子精密機器から家具、インテリアまで、幅広いジャンルのデザイン、コンサルティングを多数手がけている深澤の、国内初個展となる、知的な刺激に満ちた展覧会。
『細見コレクション名品選 麗しき日本の美-秋草の意匠-』
細見美術館(〜10月9日まで)
『秋草鹿蒔絵文台』 細見美術館蔵
細見美術館のコレクションから名品を紹介するシリーズ展。今回は「秋草の意匠」をテーマに、絵画や工芸品を紹介します。琳派の作品をはじめ、絵巻、蒔絵など、秋草の優美で繊細な趣をモチーフにした数多くの作品が並び、うつろいを愛でる日本人の美意識を感じさせる展覧会に。神坂雪佳(かみさかせっか)『秋草図扇子』や、酒井抱一の最晩年の弟子である田中抱二(たなかほうじ)の『垣根に秋草図屏風』など、デザイン性に富んだ洗練された作品も見事。
『館蔵 秋の優品展 大般若経と禅宗』
五島美術館(〜10月15日まで)
重要文化財 藤原教長筆 『般若理趣経』平安時代・永治2(1142)年 大東急記念文庫蔵
「一切の存在はすべて空である」と説く『大般若経』は、全六百巻におよぶ仏教最大の経典集。真言密教から禅宗まで宗派を超えて大切にされてきた『大般若経』と、仏画、禅画、墨蹟など60点の名品を展示します。平安時代の能筆家、藤原教長(ふじわらののりなが)の『般若理趣教』など、高僧が書いた大きな梵字も興味深く、人々の心の有り様まで伝わってきます。国宝『紫式部日記絵巻 五島本第一段』も公開(展示予定期間:10月7日〜15日)。