良寛(りょうかん)さんは、江戸時代後期に生きた、詩歌・書に優れた托鉢僧(たくはつそう)です。生涯寺をもたず、清貧の中で生けるものへの愛を失わず、子供と戯れ、友と語り、和歌や漢詩を詠んで書に興じた人です。そうした良寛さんの生きざまや残された書の数々は今も多くの人々の共感を呼び、魅了し続けています。
生誕260年を記念し、永青文庫に100点が揃う
永青文庫では2018年4月21日(土)から7月11日(水)まで、良寛さんの生誕260年を記念し、「心のふるさと良寛」展が開催されます。日本有数の良寛コレクター秘蔵の作品を中心に、生涯にわたる遺墨100点あまりから書風の変遷をたどることで、「日本人の心のふるさと」と評される良寛さんの人間性や人生観の全貌に迫るものです。
「小杉放庵 良寛盆踊り図」縦32.0×横51.8㎝ 個人蔵 【展示期間:4月21日〜5月27日】。良寛は最晩年、盆踊りの輪に加わるのが好きだった。小杉放庵が、良寛の姿を叙情豊かに描いた。
なかでも、文政13(1830)年、最晩年の良寛さんの人生に花を添えた法弟・貞心尼(ていしんに)宛ての「書簡 貞心尼宛 先日は眼病の」はお見逃しなく。
「書簡 貞心尼宛 先日は眼病の」縦16.5×横52.5㎝ 個人蔵 【展示期間:5月30日〜7月11日】。貞心尼宛ての優しい心遣いに溢れた美しい和歌。
良寛さんは与板の医師に眼の治療をしてもらった後、体調が悪くなって臥(ふ)せっていました。萩の花が咲くころ、貞心尼の住む福島の閻魔堂(えんまどう)を訊ねる約束をしていたものの、腹痛や足の怠さがあり、貞心尼のもとへは行けなくなったことを伝えるものです。そんな状況においても、貞心尼に宛てて詠んだ和歌は優しい心遣いに溢れており、極めて美しいのでした。
「俳諧 蚊屋とりて」縦23.5×横7.9㎝ 個人蔵 【展示期間:5月30日〜7月11日】。狭い庵にかかる蚊屋をはずしたときの広さを実感した感動を素直に表現している。