進化を続ける時計製造の理想郷

「A.ランゲ&ゾーネ」は、ムーブメントを構成する部品からすべて自社内で製造できる稀有(けう)なマニュファクチュールですが、その技術力の高さのみならず、見えない部分にまで施される「こだわり」の多さと強さにおいては、他メゾンの追随を許しません。

その気高い独自性を象徴するのが、ひとつの新作モデルをつくるときには、必ずムーブメントから新たに開発するという哲学。手間暇やコストのことを考えたら、そう実現できることではありません。現時点では別記事でご紹介している「1815」に搭載されているのが最も新しいもので、これは復興後75個目のムーブメントになります。

また、通常では目に触れない部分や小さなネジに至るまで、徹底的に美観を追求することも「A.ランゲ&ゾーネ」の流儀。ミクロの世界と対峙(たいじ)する職人たちの超絶技巧の数々が、これらを実現させているのです。


ムーブメントを構成する部品のひとつひとつに、繊細な装飾や独自の仕上げを施すことでも知られる「A.ランゲ&ゾーネ」。
上/「テンプ受け」という部品にエングレービングを施すのもメゾンの特徴。フリーハンドで彫刻し描く模様は、職人の筆跡のようなものであり、すべての製品に使用されている「テンプ受け」が、だれの手によるものかがわかっている。
下/自らの分身のような存在である彫刀はエングレーバーの手製。
そこかしこに息づく、職人たちの静謐なる情熱
比類なき「A.ランゲ&ゾーネ」のこだわりは、ムーブメントの組み立てにも見受けられます。それは「二度組み」という独自のプロセス。
すべてのムーブメントはまず、無装飾の状態で組み立て、機構が完璧に機能するか厳密にチェックが行われます。その際、ほんのわずかでも齟齬(そご)が発生した場合は入念に調整し、その後すべて分解。超音波洗浄機で汚れを落とし、最初に使用した無装飾のビスに替え、職人の手作業によって青く染められたビスを使って、最終仕上げが施された部品を組み立て。最後にもう一度調整を施し、ようやく完成に至るのです。

組み立ては、微細なネジをネジ穴に入れることひとつさえも、非常に高度な職人技が要される精緻を極めた作業。職人たちの高い技能と集中力が、高精度と美観を兼ね備えたムーブメントに魂を宿すのです。
それらのこだわりはすべて、精度の高い完璧な時計をつくるため。商品開発責任者のアントニー・デ・ハス氏は「時計とは情熱そのもの。情熱のすべてを注がないのなら、私たちが時計をつくる意味はありません」と言い切ります。

「決して立ち止まらない」という社是のとおり、より高みに向かって──。静かなる情熱の炎は燃やし続けられていきます。

「リヒャルト・ランゲ・ジャンピングセコンド」から、ピンクゴールド製文字盤の限定モデル(写真左)が誕生。文字盤の繊細な色味と輝きによって、右の現行モデルとはまた異なるスポーティエレガンスを実現。[ケース:ホワイトゴールド、ケース径:39.9㎜、ストラップ:アリゲーター、手巻き]価格要問い合わせ ※世界限定100本(A.ランゲ&ゾーネ)
問い合わせ
A.ランゲ&ゾーネ
0120-23-1845
https://www.alange-soehne.com
※本記事は『和樂(2025年12月・2026年1月号)』の転載です。

