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Gourmet
2019.09.26

沖縄「やんばる野外手帖」とは何か?畑人×料理人でその日限りのごちそうを五感で味わう

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沖縄本島北部に位置し、豊かな自然が残る「山原(やんばる)地区」。「やんばる野外手帖」は料理人と畑人(はるさー:沖縄弁で「農業を営む人」の意味)が美味しい料理を提供するプロジェクト。

「海と森に囲まれたやんばるは、島野菜をはじめとする農産物に恵まれた地域です。近海にはよい漁場もあり、アグー豚など畜産も盛ん。豊富な食材を使って農家と飲食店が一体となった『オールやんばる』でおもてなしをしたい、とスタートしました」と語るのは、やんばる畑人プロジェクト事務局の小泉伸弥さん。

やんばるの自然と食を五感で感じてもらいたいと、その「食卓」は、主に海や森などの野外に設けられる。メニューは、旬の食材を使ったシェフの創意工夫に富んだ「その日限りのごちそう」。毎回、内容は異なり、スタッフたちが「やんばるの魅力を知ってもらう」ために工夫を凝らしている。

やんばるのさまざまな場所で行われる「野外レストラン」

色鮮やかな南国の花々を使ったコーディネートも美しい

たとえば「ビーチでピクニック」。ビーチで火を起こして焼き上げたローストポーク、採れたての島野菜をバーニャカウダで、グルクンはパスタに、パッションフルーツとシークワサーのフレッシュジュース……。目にも鮮やか、そしてライブ感あふれるフルコースのメニューを、透き通る海を眺めながらいただく。そんな「ワンランク上の野外遊び」は沖縄フリークにも大人気だ。

美しいやんばるのビーチで、細部までこだわったおもてなし

沖縄伝統の帆かけサバニ船に乗ったり、さまざまなアクティビティも用意

ローストポーク、島野菜のバーニャカウダ

料理は盛り付けもカラフルでスタイリッシュ。バツグンのインスタ映え

どんなプランが待っているのだろう? ワクワクして訪れたやんばるは、残念ながら雨。けれど、やんばるの魅力を知り尽くしたスタッフが腕によりをかけた素晴らしい「食卓」が待っていた。

歴史ある泡盛醸造所が、今日の食卓

案内されたのは、赤瓦の屋根が美しい「津嘉山酒造所」。沖縄で唯一、戦前からの建物で操業する名護市の泡盛醸造所だ。昭和3年ごろに建築された昔ながらの佇まいを残す古民家が本日の「食卓」。

「津嘉山酒造場」。現在も泡盛造りが行われている

木造建築の母屋は、色鮮やかなやんばるの野の花々や、草で彩られたスペシャルな空間に設えられていた。

テーブルコーディネートもシチュエーションに合わせてとことんこだわる

この日のシェフは、やんばる島豚が楽しめる名護市「島豚七輪焼 満味」オーナーでもある、満名匠吾さん。肉のみならず、生産者の思いを大切に、野菜など食材が持つ美味しさを最大限に引き出した料理を提供している。

満名匠吾さん。ジャンルを超えた味の追求を惜しまず、沖縄料理と焼肉を融合させたオーナーを務める「島豚七輪焼 満味」は連日大盛況

やんばるの畑人たちが心をこめて育てた野菜たちを使用

そして料理にあわせるのはもちろん、泡盛。津嘉山酒造所の「国華」と、やんばる野外手帖ならではのスペシャルとして、この日はなんと、「山原島酒之会」の島袋正敏さんが携えた24年ものの古酒も登場。

津嘉山酒造場の「国華」。従業員2人で、仕込む泡盛は香り高くやさしい味わい

島袋正敏さん。存亡の危機となっていた琉球在来のアグー豚の復元にも貢献。やんばるの有名人!

美味しい古酒はそのまま放っておけばでき上がるわけではない。
「泡盛を美味しい古酒に仕上げるためには、『仕次ぎ』という作業を行います」と、島袋さん。「15年もの、10年もの、5年ものを用意し、古いものから順に、その1割ずつを次に古いものに継ぎ足していくんです。世界の蒸留酒のなかで、仕次を行うのは泡盛だけ。沖縄ならではの文化です」。戦前は100年ものの古酒もあったという。

山原島酒之会では、「100年古酒」を育てていこうというプロジェクトも行っている。島袋さんは、「自分の孫に100年ものの古酒を飲ませるために」ていねいに古酒を育てている。

地元の文化を伺い知ることができる機会を設けているのも、やんばる野外手帖ならではの魅力だ。

島野菜と熱帯の魚を使った、目からうろこのスペシャルメニュー

次々と運ばれてくるのはやんばるならではの食材を使い、巧みにアレンジした美しいメニュー。

前菜は「二見赤からし菜とそばの実」。名護市二見地区で古くから親しまれていた在来野菜「赤からし菜」のペーストを、葉でぐるりと巻いていただく。濃い緑の味わいが口の中に鮮やかに広がる。

続いては、「グルクンのラグー」。細かく切って煮込んだグルクンを島らっきょう、サワークリームともにシュー生地につめこんだ一品。天ぷらでしか食べたことがないグルクンがこんなおしゃれなオードブルになるとは! そして正直、グルクンは揚げるしかない魚かと思っていたけれど、旨みがあってこんなに美味しかったとは!
黒ごまをたっぷり使ったタレを豚肉にのせて蒸した「ミヌダル」は、琉球王朝の宮廷料理。こっくり深みのある味わい。

左からミヌダル、古代黒米、モーウィ、グルクンのラグー

旬野菜のサラダとスクガラスのバーニャカウダは、丸おくらと、赤おくら、そしてオクラの花に、アイゴの稚魚を塩漬けにした「スクガラス」をバーニャカウダ風にアレンジしたソースをかけていただく。濃厚なオクラの味わいに、パンチのあるソースがぴったり。スクガラスといえば、島豆腐にちんまりと何匹かトッピングされた居酒屋の定番「スクガラス豆腐」。こんな食べ方ができるとは!

沖縄ならではの白身魚「アカジン」をマース(塩)だけで煮込んだ「アカジンのマース煮」。ふっくらしっとり煮あがった身のやさしい味わいに、ほっこり。

やさしい口当たり、ふわりと甘い「やんばる島豚」

メインは、「やんばる島豚のしゃぶしゃぶ」。やんばる島豚は、イギリス原産の黒豚・バークシャー種の雄と、イベリコ豚の母親でもあるアメリカ原産のデュロック種の雌から生まれた豚に、琉球在来種「アグー」を交配した貴重な豚だ。

やんばる島豚。脂身の美味しさが魅力

「やんばるの森の中で海藻、サンゴなどのエサを食べ、美味しい水を飲み、ストレスなく育ったやんばる島豚は甘みのある脂が魅力。しかも、融点が低い脂なのでさっぱりした味わいです」と満名さん。

やんばる島豚専門店のオーナーとして、その美味しさを極めた満名さん自ら、しゃぶしゃぶを調理。

的確に火を通したやんばる島豚のとろけるような、やさしい口当たりと、軽やかでふわりと甘い味わいにただ、ただ、感動。

そして、最後になったが島袋さんの24年ものの古酒は、すばらしい艶やかな香り。まったくとがったところがない、まろやかな味わい。長い時間をかけて、大切に育てられた泡盛の熟した風味にひととき、時間のスピードが遅くなる。

島袋さんのお話も最高のごちそう

古民家で、やんばるの食の幸と文化を味わう極上の「おもてなし」。ぜひ、やんばる野外手帖を開いて、沖縄の新たな魅力を発見してみては?

やんばる野外手帖

書いた人

薬膳アテンダント。国立北京中医薬大学日本校卒業、国際中医薬膳師資格取得。食文化ジャーナリスト、さばファンの団体「全日本さば連合会」にて広報担当「サバジェンヌ」としても活動中。http://www.yuruyakuzen.com/