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Gourmet
2019.11.11

石川旅行のお土産におすすめ!「加賀かきもち」あの弁慶も食べたかもしれない?

この記事を書いた人

風物詩は、その地方の気候や文化と関係してくることが多い。じつは、北陸の冬の風物詩の一つに、家の軒下に吊るされた餅が挙げられる。これが「かきもち」だ。

特に、北陸地方はかきもち作りに適した気候だ。寒すぎず、熱すぎず、程よく低温。凍らせず、カビを生えさせず、無事にかきもちを作り上げるには、気候はことのほか重要だといえる。

このかきもちを昔ながらの製法で現在に伝えるのが「加賀かきもち丸山」。徹底して伝統の味を守る丸山の随所に光るこだわりを紹介する。

「加賀かきもち」「関所あられ」の由来とは?

ド派手な暖簾(のれん)。歌舞伎の演目で有名な「勧進帳」だ。

「勧進帳」と「加賀かきもち丸山」の暖簾(のれん)

そもそも、勧進帳とは、時は平安時代、山伏姿となった源義経(みなもとのよしつね)一行が、兄の源頼朝(みなもとのよりとも)から逃げるために、北陸を通って奥州(おうしゅう=現在の東北地方)へ行く際に通る関所での物語だ。加賀国の安宅の関(あたかのせき=現在の石川県小松市)にて、義経一行と身元がばれないよう、家臣である武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)が機転を利かす。関所を守る富樫左衛門(とがしさえもん)の追及に対して、書かれてもいない真っ白な巻物を「勧進帳(かんじんちょう=寺の寄付を募る目的が書かれたもの)」として読み上げるのだ。歌舞伎十八番の一つである。

じつは、石川県小松市に伝わる「加賀かきもち」「関所あられ」はこの勧進帳と大いに関係する由来を持つという。

加賀かきもち

というのも「加賀かきもち」「関所あられ」の起源は、遠く平安末期だとされている。源義経一行は運よく安宅の関を切り抜けたのち、近隣の農家より「かきもち」と細かく賽の目(さいのめ)に切った「あられ」をもらったのだとか。それを道中の糧として無事に奥州まで逃げ延びたと言われているからだ。以来、毎年一月、二月の厳冬の時期になると、この地方では、かきもちやあられを作る習わしとなったという。

製造工程は2か月も⁈手間暇かけた「加賀かきもち」

この勧進帳の舞台となった「安宅の関」から歩いて5~10分のところにあるのが「加賀かきもち丸山」(石川県小松市)だ。

「流れ作業でかきもちを製造して1日で終わるところもあるが、うちは違います」

「加賀かきもち丸山」の曽我(そが)氏は、自信を持ってこう話す。

まず、地元の原料を使う。石川県のもち米、水も霊峰白山(れいほうはくさん)の伏流水、お醤油も金沢丸大豆醤油とこだわっている。製法にも、もちろん伝統の技が光る。丁寧にもち米を蒸して、ついてお餅にし、1ヵ月程度干す。一般的に12~2月の寒の時期に干すと、味も保存もよく「寒干しかきもち」といわれるのだとか。これを石焼き窯で焼き上げると「加賀かきもち」となるという。

「2か月です」
「賞味期限がですか?」
「いや、出来上がるまでです」

なんと、乾燥させて昔ながらの伝統ある製法で焼き上げて作っているため、2か月もかかるらしい。種類によっては3ヶ月かかるものもある。

様々な種類のおかきが並ぶ(令和元年いしかわスイーツ博に出店の模様)

かきもち、あられは種類が多くて迷ってしまうほどだ。例えば、古代米を使っている「黒あられ」は大変珍しい。辛党には「山椒」や「唐辛子」などのあられが人気だそうだ。
唐辛子あられには、以下の詳細な原材料が表記されている。

石川県産もち米
金沢丸大豆醤油(ヤマト醤油味噌様)
唐辛子・やまつ辻田様

ここまで詳細に表記できる。その上、シンプルだ。これだけで、加賀かきもちを製造する「加賀かきもち丸山」の自負を感じることができる。

シンプルなのに新鮮?ロマン感じる「加賀かきもち」

加賀かきもち(醤油)

やはり気になるのはその味だ。
さて、実際に食した感想はというと、シンプルさがかえって新鮮だということ。これが昔ながらの味かと、平安時代に戻ったような気になる。特にかきもちは、歯ごたえが十分すぎるほど。最初の一噛み目に関しては、入れ歯の方は少し注意が必要かもしれない。

素焼きは本当に餅の味である。餅を作る際に入れた塩味のみと説明されたが、ほぼ塩の味もしないほどだ。塩分摂取の制限を受けている方にはおススメだろう。そして、噛めば噛むほど唾液と混ざって、もち米本来の味がしてくる。色々と複雑な味が多い中で、逆に素材の味のみのシンプルさが新鮮と感じた。

左から「加賀あられ」「おかき(素焼き)」「唐辛子あられ」

唐辛子あられは、あとに残る辛さで美味しい。あられ自体は香ばしくソフトな噛み応え。口の中に入れると最初は辛いか?と思うも、噛むと唐辛子の味が広がり鼻までくる。ただ決して鼻をつまむくらいまで辛くはない。ちょうどよい辛さである。ビールに合いそうと思ったが、この辛さがなかなか消えず、後から少しずつくる。ビールを飲んだら、余計に辛いと感じるやつだ。辛党でなくても、この変化する辛さがクセになるあられだ。

「加賀かきもち」には、なんとロマンがあるのだろう。平安時代後期、源義経、武蔵坊弁慶も食べたかもしれないその味を噛みしめると、なんだか不思議な気分だ。これだから、日本の伝統文化は侮れない。

写真撮影:O-KENTA

基本情報

店舗名:加賀かきもち丸山
住所:石川県小松市安宅町タ121番地
電話番号:0761-22-2066
公式webサイト:http://www.kakimoti.co.jp/

書いた人

日本各地を移住するフリーライター。教育業界から一転、ライターの道へ。生まれ育った京都を飛び出し、馬車馬の如く執筆する日々。戦国史、社寺参詣、職人インタビューが得意。