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2019.09.13

今見ても超カッコいい!人間国宝・芹沢銈介の作品たち

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大胆な図案ながらも親しみを感じる作品たち。没後35年たった今なお新しさを感じさせる作品を世に送り出した型絵染の人間国宝、芹沢銈介(せりざわけいすけ)とはどんな人物だったのでしょうか。自然や風景、文字、職人の姿など多数の作品と共に紐解きます。

芹沢銈介の生い立ち

芹沢銈介は明治28(1895)年、富士山のおひざ元、静岡県静岡市の呉服商に生まれました。幼いころよりその卓越した画才に注目が集まっていましたが、実家に不幸があり、画家の道は断念。東京高等工業学校図案科を卒業し、20代のころは日々スケッチをしながら、商業デザインの分野で活躍します。

芹沢銈介 「富士と雲文のれん」 1967年ごろ 木綿・型染 静岡市立芹沢銈介美術館蔵
数ある富士作品の中でも、最もシンプルに図案化されたもの。富士山は静岡市生まれの芹沢にとっても特別な存在でした

芹沢銈介 「四季文風炉先屏風」 1936年 麻・型染 静岡市立芹沢銈介美術館蔵
20代のころは、樹木や花などを多くスケッチしていました

民藝との出合い

そんな芹沢にとって大きな転機となったのが、30代のころ。柳宗悦(やなぎむねよし)の著作を読んで感銘を受けた芹沢は、銀座鳩居堂(きゅうきょどう)で行われていた第1回日本民藝品展覧会に立ち寄ります。

初めて民藝に触れた芹沢は心を打たれ、また、東京上野公園の御大礼(ごたいれい)記念国産振興博覧会の「民藝館」で沖縄の紅型(びんがた)に衝撃を受けたことから、静岡市内の紺屋(こうや)に弟子入りします。そこで型染(かたぞめ)の技法を身につけ、染色家としての道を歩み始めるのでした。
芹沢銈介 「杓子菜文間仕切(しゃくしなもんまじきり)」 1928年 木綿・型染 静岡市立芹沢銈介美術館蔵
染色作家としてのデビュー作は身近にある野菜をデザインしたものでした
芹沢銈介 「柳文間仕切」 1960年 麻・型染 静岡市立芹沢銈介美術館蔵
生涯師と仰ぎ、「先生」と呼んだのは柳ただひとり。そのためか、柳モチーフの作品も多数制作しました

型染作家として花開く

やがて柳らの民藝運動に本格的に加わるようになった芹沢は、昭和9(1934)年に染色工房を構えて独立。その後昭和14(1939)年、民藝運動の沖縄調査の一員として訪れた芹沢は、かつて衝撃を受けた紅型の技法を学び、みずからの染色工芸に取り入れます。

芹沢銈介 「沖縄絵図」 1939年 絹・型染 日本民藝館蔵
沖縄から戻ったあとに制作されたもの。紅型の技法が大いに取り入れられ、芹沢の紅型に対する尊敬の念が伝わる

風景や自然から得たモチーフを大胆に図案化し、意欲的に仕上げられた芹沢作品は優れたデッサン力とそれを独特の文様に仕立てるデザイン力、そしてのれん・マッチ箱などの用途が決められているものにはめ込む構成力と想像力で、ずば抜けたオリジナリティを発揮し、高く評価されました。

なお、芹沢は型紙を彫るところから、布に重ねて糊を置き、色をさすという型染めの工程すべてを自ら手がけたようで、職人肌の人物であったことが伺えます。

芹沢銈介 「いろは文字文帯地」 1958年 木綿・型染 静岡市立芹沢銈介美術館蔵
代表作のひとつ。芹沢は書家に弟子入りしていた父の影響もあり、若いころから書に親しんでいました
芹沢銈介 「窯(かま)だし文のれん」 1970年 木綿・型染 静岡市立芹沢銈介美術館蔵
作陶(さくとう)作業の一場面。晩年、好きな人を聞かれ、「職人さん」と答えるほど、芹沢にとって職人は憧れの存在であり、その姿を多く作品に残しました

生涯エネルギッシュな作家だった!

昭和になってアーティストとして活躍した芹沢は、染色家としてだけでなく、本の装幀(そうてい)や地図の作製、レタリングなど幅広い作品を手がけました。特に、柳が編集を手がけた雑誌「工藝」などの装幀は、本にも工芸品としての美を求めた柳にとってはなくてはならないものとなりました。

芹沢は近代日本が大きく変わっていくその時代のなかで、画家、書家、デザイナーなど、何事にも縛られることなく自由に創作活動をし続けました。

晩年は鎌倉の津村で過ごし、昭和59(1984)年、88年の生涯を閉じましたが、ユーモアと愛らしさに満ちながらも高い品格を感じる芹沢の作品は時代が移っても色あせることなく私たちをときめかせ続けているのです。

芹沢銈介 「津村小庵文帯地(つむらしょうあんおびじ)」 1967年 縮緬(ちりめん)・型染 静岡市立芹沢銈介美術館蔵
晩年を過ごした鎌倉・津村を題材にした作品も多く描いていました

芹沢銈介の作品はここで見れます!

静岡市立芹沢銈介美術館
住所:静岡県静岡市駿河区登呂5-10-5(月曜休)
開館時間:9時〜16時30分
公式サイト

東北福祉大学 芹沢銈介美術工芸館
住所:宮城県仙台市宮城野区榴岡2丁目5-26
東北福祉大学仙台駅東口キャンパス内(月曜休)
開館時間:10時〜17時(入館は16時30分まで)
公式サイト

『和樂』2014年12月号、2015年7月号の記事を再編集