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2019.08.31

彫刻総数5173点!日光東照宮に行ってみたら想像をはるかに超えていた!【栃木】

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夏の避暑地としても名高い奥日光。その東側に位置するのが日光東照宮です。今回は、世界遺産でもあり、国宝を多数所蔵する、日光東照宮の魅力や歴史をご紹介します。

日光東照宮とは? 何の神を祀っている神社?

日光東照宮は、江戸幕府の初代将軍、徳川家康の霊廟(れいびょう)で、家康を「東照大権現(とうしょうだいごんげん)」という神として祀っています。

駿府(すんぷ)に隠居していた家康が、亡くなる2週間前に「1周忌ののち日光山に小さい堂をたてて祀れ。関東8カ国の鎮守となろう」と遺言したことから、家康の死後、2代将軍秀忠(ひでただ)が栃木県日光市の現在地に社殿を構え、埋葬地であった静岡県の久能山(くのうざん)から、家康の遺体を移しました。

その後、家康を熱烈に崇拝した孫の家光によって、寛永13(1636)年、今の壮麗な社殿に建て替えられたのです。

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日光山、その長い歴史

日光東照宮のある日光山は古代から山岳宗教の霊場として知られ、奈良時代から神仏習合の地として発展してきました。

中世には、関東武士の信仰を一身に集めて栄えましたが、豊臣秀吉と北条氏との争いの際に秀吉に攻められて領地を没収され、衰退しました。

それが家康の遺言により、家康を祀る霊廟の造影が始まり、家康の死後約1年半経った元和3(1617)年3月に日光東照宮が完成したのです。

秀忠の時代に創建当時の建物はほとんど現存しませんが、現在の東照宮より6割程度の大きさで、かなり質素だったようです。

ちなみに、創建された場所は日光の中でも「風水」の上でもっとも優れた場所を選んだといわれ、その地形を生かして境内がつくられています。

国宝「陽明門」はみどころがたくさん!

寛永13(1636)年につくられた陽明門(ようめいもん)は、平成29(2017)年3月に4年がかりの修復が完了しました。この「平成の大修理」は、門から古い金具や塗料を取り除いて木地を修復したあと、漆塗りや金箔による箔押し、彩色を施し直す本格的なもので、現在私たちは江戸時代初期の鮮烈な極彩色を目にすることができます。そのみどころをご紹介します。

こちらが修復を終えた陽明門。その豪華絢爛な姿に思わず立ち尽くします。撮影:永田忠彦

みどころ1 華やかな唐様の建築

陽明門は、鎌倉時代に中国から伝来した禅宗の建築様式唐様(からよう)」でつくられています。

日光東照宮は家康を神として祀っているため、本来であれば神宮の様式となるはずですが、創建当初は隣接する輪王寺(りんのうじ)などと一体の、日本古来の神への信仰と仏教が融合した神仏習合の神宮だったので、寺院の様式が用いられています。

屋根の端が柱や壁から外へ突き出た部分、軒(のき)の重量を支える部材の組物(くみもの)が、日本の伝統的な和様建築では柱の上にのみ置かれるのに対し、陽明門のような唐様では柱と柱の間にも置かれ、にぎやかな雰囲気になっています。

みどころ2 一日見ていても見飽きない! 多種多様な彫刻

日光東照宮の建物には、総数5,173点もの彫刻があります。その中で陽明門の彫刻は約1割を占める508体が!

麒麟(きりん)・龍・唐獅子(からじし)など「霊獣」と呼ばれる想像上の動物や、中国の故事(こじ)を表現した人物像、中国のこども「唐子(からこ)」が遊ぶ姿などが配され、そのどれもが違う表情を見せています。

まさに一日中眺めていても飽きない「日暮らしの門」です。

唐子が遊ぶ微笑ましい様子も。撮影:永田忠彦

みどころ3 鮮やかな彩色

彫刻の龍などを金・緑・赤などの中国的な濃い色で彩っているのが、陽明門の彩色の特徴です。他方、柱などでは漆の黒や、貝殻からつくられる胡粉(ごふん)の白、金箔などを基調とすることで統一感を出しています。

彫刻の極彩色と柱のシンプルな色合い、そのメリハリによって、全体として上品かつ華やかな印象に仕上がっているのですね。

極彩色と白のコントラストがお互いの美しさを引き立てる。撮影:永田忠彦

まだまだあるぞ! 東照宮のおすすめ国宝3選

最も神聖で重要な場所「本殿」

本殿の建築様式は、権現造(ごんげんづくり)といわれ、家康の神号(しんごう)「東照大権現」にちなんだもの。神社で最重要の建物であることから、彫刻も多く施されています。

本殿軒下の組物の間には、悪夢を祓うといわれる神獣・獏(ばく)の彫刻50数点があります。建物の内部は非公開となっていますが、狩野探幽など狩野派や、絵仏師木村了琢(りょうたく)の絵で装飾されています。

とにかく華やか! 「廻廊(かいろう)」

陽明門の両脇から東西に巡る「廻廊」。その内部は朱漆で塗った円柱や床が続く吹き抜けになっており、外側は透し彫りに極彩色を施した華麗な彫刻が続きます。金箔をふんだんに使った廻廊上部の透し彫りは、最大横2m、縦1mを超える(!)巨大な1枚板に彫られています。

威厳に満ちた「唐門」

本殿に至る最後の門が「唐門」です。左右の柱には、古代中国では王権の象徴であり、家光の干支でもある、昇り竜と下り竜の彫り物があります。

扉口の上にある人物彫刻は、中国の伝説上の皇帝・舜(しゅん)に臣下が拝謁(はいえつ)する場面を表したものです。家系よりも治世の能力と人徳によって帝王の位についた舜の逸話は、豊臣秀吉の没後に政権を取った徳川の正当性を象徴するものといわれています。

胡粉で白く塗られた600点以上もの精緻な彫刻と、ところどころにあしらわれている飾り金具と金箔が格調高く、見る人に威厳を感じさせます。

大人気! キュートな動物たちも国宝です

日光東照宮といえば、動物の彫刻を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。今回は、中でも国宝として名高い2つをご紹介します。

こどもへの教え「三猿」

「見ざる・言わざる・聞かざる」でおなじみの三猿は、そのユーモラスな表情が人気の国宝。こちらは人間の一生を風刺して描いた彫刻8面のうち、2番目にあたり、幼少期のこどもには悪いことを「見せない・言わせない・聞かせない」という教えを表しています。

古来、猿は馬の守り神とされ、こちらの彫刻も神様の乗り物として奉納された神馬(しんめ)がいる厩舎(きゅうしゃ)に彫られています。

見ると和む「眠り猫」

家康の墓所がある奥宮への通路の上という重要な位置にある眠り猫は、伝説の彫刻家と伝わる左甚五郎(ひだり じんごろう)が制作したとされる彫刻ですが、その真偽はわかっていません。

猫の彫刻は他の神社にも例がありますが、目を閉じているものは皆無だそうです。この彫刻や、その裏に彫られたスズメの彫刻の意味には多くの説がありますが、まずはともあれ、この眠り猫がゆったりとまどろんで寝ている姿を見ると、ほっこりできますよ。

東京から電車で約2時間。旅行に役立つアクセス情報

日光東照宮へは東武日光またはJR日光駅からバスと徒歩で向かいます。東京・浅草からは特急で約2時間です。

拝観時間
4月1日〜10月31日:午前8時より午後5時まで
11月1日〜3月31日:午前8時より午後4時まで
※尚、各期間とも受付は閉門30分前に終了。

料金
【日光東照宮単独拝観券】
大人・高校生:1,300円
こども:450円

【セット料金(東照宮拝観券+宝物館入館券)】
大人・高校生:2,100円
こども:770円

公式ホームページ

※本記事は小学館ウィークリーブック 週刊ニッポンの国宝100 vol.24 国宝FILE47 日光東照宮 陽明門を一部編集・再構成したものです。
小学館ウィークリーブック 週刊ニッポンの国宝100 vol.24 国宝FILE47 日光東照宮 陽明門の概要についてはこちらから!

※トップの写真撮影:永田忠彦