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2017.03.08

根津美術館で開催!朝鮮半島で描かれた世にも美しき仏教絵画

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内覧会狂想曲

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3月4日から東京南青山の根津美術館で開催されている「高麗仏画 香りたつ装飾美」展。

仏画というと、ちょっととっつきにくい気がするし、ましてや中世の朝鮮半島で描かれたものとなると、縁遠いようにも思いますが、これがどうしてどうして! とても美しく、心の平安を呼び覚ましてくれるものばかりなのです。

さらに、ちょっとした知識を持つと、そこをフックにどんどん興味がわいてくるのです。
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「高麗(こうらい)」は、918年に誕生し1392年まで朝鮮半島にあった王国で、仏教を国教としました。その当時は朝鮮半島中に多くの仏教寺院が建てられ、仏像や仏教絵画が生み出されたのだとか。

高麗時代の仏教美術の中でも興味深いのは仏教絵画=仏画です。現在、この高麗仏画と呼ばれるものは、世界中で約165点のみしか確認されていません。そのうちの110点近くが日本にあるそうで、今回の展覧会ではその中から、重要文化財7点を含む、貴重な作品が計26点、出展されています。さらには、経7点、工芸品5点を加え、計38点の朝鮮半島で誕生した仏教美術が一挙公開されたわけです。

仏画っていったい何だろう?の疑問にこたえてくれる一大展示

そもそも仏画って何だろう? と思う人も多いかもしれません。

しかし、そこに描かれているものは私たちにもなじみのある名前の”ほとけさん”ばかり。阿弥陀如来、帝釈天、地蔵菩薩・・・なるほど、これまでいろいろなお寺でみたり、日本で制作された仏教絵画の画題としてみたものとおんなじものがいっぱいじゃないか!というより、日本美術の歴史の中でみてきた多くの仏教関連の美術作品の祖型が、そこにあると言ってもいいかもしれません。

そもそも仏画というのは、基本は同じ画題を同じように描くものなのだそうです。阿弥陀三尊像といえば中央に阿弥陀如来を、向かって左に勢至(せいし)菩薩、右に観音菩薩が描かれています。とはいえ、同じように描かれていても、そこにはディテールの違いがあるわけで、今回の展覧会ではそれを見比べながら鑑賞する楽しみに気づくことでしょう。
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たとえば今回の展覧会のポスターにもなっている、根津美術館所蔵の「阿弥陀三尊像」の場合、勢至菩薩の左手に火炎宝珠(かえんほうじゅ)が、右手にはスタンプのような印璽(いんじ)をもった姿が描かれています。この印璽は、極楽に来たことを認め、華厳の世界に行くことを許す、いういわばパスポートコントロールの時に押されるハンコのようなものなのだとか。しかし、この印璽をもった勢至菩薩が描かれている例は希なのだそうです。

ではなぜ、この阿弥陀三尊像には、印璽をもった勢至菩薩が描かれたのか????そんな意味をひとつひとつ知った上で鑑賞すると、仏画の魅力、奥深さにどんどん引き込まれていくようです。

今回の展覧会では、オーディオガイドでそのあたりを詳しく解説してくれているので、鑑賞の際には是非ともオーディオガイドの利用をお勧めします。(後半へ続く)

高麗仏画 香りたつ装飾美

会期/2017年3月4日(土)〜3月31日(金)
会場/根津美術館
住所/東京都港区南青山6-5-1 地図
会館時間/午前10時~午後5時(入館は4時30分まで)
休館日/月曜日・展示替期間・年末年始

【内覧会協奏曲(根津美術館)】
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