振り返る女性の後ろ姿はなんて魅力的なのでしょう。それが着物姿でも可憐なドレス姿でも。今回は、江戸や19世紀パリの女性たちを魅了した、ミュシャと菱川師宣(ひしかわもろのぶ)の作品をご紹介します。
美しい人が着る美しい服! お洒落は女性の幸せです
元禄時代の浮世絵師・菱川師宣。代表作「見返り美人」は、浮世絵の原点ともいわれる傑作です。実は、横顔をチラ見せして振り返った姿は、元禄時代に流行した着物や帯、髪型を見せるためのポージング。着物は緋色(ひいろ)の地に桜と菊の花丸模様、帯は吉弥(きちや)結び、髪型は玉結びにべっ甲の櫛…と、当時の流行最先端が描かれています。江戸の女性たちは最先端ファッションのお手本として、この絵を鑑賞していたのです。
菱川師宣「見返り美人」江戸時代 1幅 絹本着色 63.0×31.2㎝ 東京国立博物館 ©alamy/PPS通信社
19世紀パリを席巻(せっけん)したアールヌーヴォーの旗手、ミュシャ。可憐な女性像と優美な装飾で人気を博した画家・デザイナーです。ミュシャもまた、振り向く美女を描きました。「四芸術~ダンス」は、絵画、音楽、ダンス、詩という四芸術の特徴を、美しい女性のポーズと花によって表現した連作のうちの1点。華やかな衣装や装飾品で数々の女性たちを虜にしました。素敵なファッションは女心を幸せで満たす。昔も今も変わらぬ真理です。
アルフォンス・ミュシャ「四芸術~ダンス」1899年 カラーリトグラフ ©Bridgeman Images/PPS通信社