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2025.10.22

3Dデジタル&実体験できる正倉院1300年の宝物。驚きと感動に満ちた新しいアートの世界。 美容家・石井美保の「和魂美才」vol.11

美容家・石井美保さんが、日本文化と和装の魅力を伝える連載「和魂美才」。今回は、東京の上野の森美術館にて開催中の「正倉院 THE SHOW―感じる。いま、ここにある奇跡―」を訪れました。大迫力の3D動画と、あえての再現模造展示によるさまざまな体験が大きな魅力です。今回の展示クリエティブを行った、角川メディアハウスの今井久さんとの熱のこもった宝物談義をお楽しみください。

巨大スクリーンで投影される感動の3Dデジタルアーカイブ

「正倉院 THE SHOW―感じる。いま、ここにある奇跡―」展示室の1階部分をほぼ占める巨大スクリーン。美しさに圧倒される美保さん。

同じく、3Dのデジタルアーカイブを堪能する美保さん。色や柄、質感までリアル感が楽しめる。

角川メディアハウスの今井久さん(右)から解説を受ける石井美保さん(左)。背景は2階に展示されている「勅封扉」。扉はレプリカですが、錠前は現在も使用されている本物。

石井美保(以下、石井):正倉院宝物*というと、年に1回ごくわずかの期間しか見ることができない大変貴重なものだというイメージです。今回の展示は、11月に奈良で開催される展示と、どう違うのでしょう?

*正倉院宝物:8世紀の中頃の奈良時代に、光明皇后が聖武天皇の御冥福を祈念して、御遺愛品などを東大寺の本尊盧舎那仏(大仏)に奉献。その品々は同寺の正倉(現在の正倉院宝庫)に収蔵し、永く保存されることとなった。これが正倉院宝物の起り。

今井久(以下、今井):はい、奈良では、本物の正倉院宝物が展示されており、こちらの展示は3Dデジタルデータと再現模造の展示、というのが大きな違いです。

石井:3Dデジタルというのは、1階の巨大スクリーンで見た動画のことですね。色といい細部のデザインといい、質感まで美しく細かく表現された、ものすごい迫力のある画像で本当に感激しました。

今井:正倉院宝物を360度からスキャン。最新の3次元計測や高精細写真撮影、質感取得技術を駆使して作成された、精緻なデジタルアーカイブです。実は2019年から宮内庁正倉院事務所とTOPPAN株式会社が、「螺鈿紫檀五絃琵琶」をはじめとする宝物のデジタルアーカイブを実施。本展ではその中から選りすぐりを集め、ストーリー仕立てにしました。

石井:実際に奈良にタイムワープしたような感覚で、さまざまな宝物のリアルな再現力は本当に満足感がありますね。

今井:実際に「螺鈿紫檀五絃琵琶」の再現模造も展示してありますが、単に模造品ではないんです。正倉院事務所が目指したのは、「正倉院宝物をもうひとつつくること」で、1972年から模造事業を開始。この「螺鈿紫檀五絃琵琶」は各種の分析装置や光学機器を駆使して当時の素材や技法を探り、試作を繰り返しながら制作に約7年かけています。

石井:すばらしい! もはや模造品がひとつの芸術品といえるレベルの高さ。圧倒的なクオリティで感動がすごいです。

謎に包まれてきた伝説の香木「蘭奢待」の香りを体験!

織田信長が熱望したという伝説の香木、「蘭奢待」のレプリカの展示も。

今回の展示で大注目の「蘭奢待」の香りをかぐ美保さん。

石井:私が感動したのが、もうひとつ。「蘭奢待」の香りを実際に楽しめたことです。伝説の香りはこれまで体験したことがない香りでした。

今井:宮内庁正倉院事務所が2024年度から高砂香料工業株式会社の協力により、伝説の香りを再現。ちょうどこの展覧会前に完成されました。

香りの再現には、「蘭奢待」の脱落片を用いた成分分析はもちろん、「蘭奢待」の周囲の空気を採取して分析。調香師の研ぎ澄まされた感覚によって現代によみがえりました。

石井:そんな熱意も本当に感動します。香りをかぐ体験は本展示限りですよね。貴重な体験ができてうれしいです。

1300年のときを経て聖武天皇と光明皇后の愛の物語をたどる

1階の巨大スクリーンを見ながら楽しめる、「螺鈿紫檀五絃琵琶(模造)」。制作に約7年かけ、素材や技法を踏襲し宝物本来の姿を再現している。

同じく1階の巨大スクリーンの展示室に配置されている、「螺鈿箱(模造)」。帯を納めていたそう。

当時の素材や技法を用いて再現した「瑠璃坏(るりのつき)」レプリカ。ブルーが美しい。

今井:本展示は、実は聖武天皇と光明皇后の愛の物語をたどる展示でもあります。もともと、聖武天皇の死をなげいた光明皇后が、聖武天皇の愛蔵品である宝物を奈良の大仏に奉献されたのが正倉院宝物の始まりで、そこにはおふたりの深い愛の物語があるのです。

石井:はい。おふたりの書も残されていてお人柄もしのばれますし、何より宝物がきちんと美しいままで1300年後の今、見られるというのがすごいですね。

今井:世界的に見ても貴重だと思います。古代の遺品は、地中から発掘されたものが多いのですが、この正倉院宝物は木造の宝庫に大切に納められ、1300年にわたって伝来してきたもの。

石井:人の手によって守られてきたのですね。

今井:高床式の宝庫やひとつひとつ箱に納められていたこともすごいことですが、もうひとつ、宝庫の扉は天皇の許可なしには開くことはできなく、現在では年に1回2ヶ月間のみと決められている「勅封」という制度です。

石井:開閉には天皇の命令が必要という錠前のことですね。なるほど、とにかく極力ダメージを受けないようにと、人の手によって宝物を1300年繋いできたのですね。改めて、日本人ってすごい。日本のすばらしさを感じることができました。
展示を回ると、深い感動に包まれると同時に気持ちが高揚します。まるでエネルギーチャージをしたみたい。ぜひ、もう一度ゆっくり体験したいと思います。

ーー石井さんが感動した正倉院の宝物の数々。和樂12/1月号(11/1)の「正倉院」特集では、さらに詳しくその秘密を追究しています。「正倉院 THE SHOW」を見る前に、見た後に、お楽しみください。

美容家・石井美保の「和魂美才」 これまでの記事はこちら

展覧会概要

「正倉院 THE SHOW―感じる。いま、ここにある奇跡―」
2025年11月9日(日)まで

会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園 1-2
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:※会期中無
休)
展示お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

展覧会公式ウェブサイト:https://shosoin-the-show.jp/tokyo/

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石井美保

美容家、トータルビューティーサロンRiche代表。深い美容愛とさっぱりした物腰で、幅広い層にファンが多い。自身の経験に基づく美容法とコスメ選びは、常に注目を集めている。

インタビュー・本文/國藤直子(STRIPE)撮影/目黒智子 着付け/星山奈保子 ヘア/高倉里美 撮影協力/上野の森美術館
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