Art

2026.10.26

作品とものづくりを未来へ。エルメスジャポンと金沢21世紀美術館の「壊れていくもの、継承していくもの」

金沢21世紀美術館で、2026年10月31日(土)から、展覧会「今日から明日へ 作品を継承すること」が開催されます。本展に協賛するエルメスジャポンは、同館とともに関連プログラム「壊れていくもの、継承していくもの」を開催。アート、保存修復、ものづくりの視点から、作品やものを未来へ受け継ぐ意味を考える取り組みをご紹介します。

変わりゆく作品を、未来へ残す

「今日から明日へ 作品を継承すること」は、金沢21世紀美術館の長期休館前最後の特別展です。2027年5月からの設備更新と修繕工事を前に、2004年の開館以来積み重ねてきた20余年を振り返り、次の20年、さらにその先へと作品を受け渡すための課題に向き合います。

素材の経年変化、機材の旧式化、展示環境や社会状況の変化。作品の継承には、その姿を保つだけでは解決できない問題があります。本展では、保存・修復や展示方法などの検討を必要とするコレクションを中心に、調査、修復、機材更新、再演、記録といった過程も紹介します。

宮永愛子氏の《waiting for awakening -chair-》は、素材のナフタリンが昇華し、次第に形が失われていく作品。変化を止めることが、必ずしも作品を残すこととは限りません。作品にとっての「時間」を、どのように未来へ継承するのかを考えます。

宮永愛子《waiting for awakening -chair-》2012 (C)MIYANAGA Aiko photo: NAKAGAWA Akifumi 提供:金沢21世紀美術館

館内や屋外にある恒久設置作品も、展示の一部に位置づけられます。レアンドロ・エルリッヒ氏の《スイミング・プール》もそのひとつ。水面の上と下にいる人々が互いの姿を見つめる体験を、建築や設置環境、日々の手入れとの関係から捉え直します。

レアンドロ・エルリッヒ《スイミング・プール》2004 (C)Leandro ERLICH photo: NAKAMICHI Atsushi / Nacása & Partners 提供:金沢21世紀美術館

光や動き、空間全体を用いる作品では、鑑賞者が出会う体験も継承の課題となります。16年ぶりに展示されるジェームズ・タレル氏の《ガスワークス》は、横たわった鑑賞者が球体の内部に入り、移り変わる光と色に包まれる作品。ボランティアが運営を担い、体験を支える人々とともに作品を未来へつなぎます。

ジェームズ・タレル《ガスワークス》1993 (C)James TURRELL photo: SAIKI Taku 提供:金沢21世紀美術館

ヤノベケンジ氏の《ビバ・リバ・プロジェクト―スタンダ―》は、放射線の検知をきっかけに、高さ約3mの子ども型の人形が立ち上がる作品です。2024年の展示中に機器の不具合で稼働を中止しましたが、分解点検・整備後、初めての展示を迎えます。前期に起動確認を行いながら、作品固有の動作を受け継ぐ方法を探ります。

ヤノベケンジ《ビバ・リバ・プロジェクト―スタンダ―》2001 (C)YANOBE Kenji photo: KIOKU Keizo 提供:金沢21世紀美術館

展示室4の「継承の実験室」では、普段は公開されない保存・修復に関わる資料も紹介。バックヤードや収蔵庫の前室を思わせる空間に、作品や保存箱、検品・調査・記録に関する資料などが並びます。会期を3期に分けて作品を入れ替えながら、継承に向けた判断の積み重ねを来場者と共有します。

西山美なコ《Sugar Crown》2004 (C)NISHIYAMA Minako photo: SUEMASA Mareo 提供:金沢21世紀美術館

新作を発表するゲストアーティストのひとり、髙橋銑(たかはし せん)氏は、彫刻の保存修復を行う家族の記憶に着目。仕事や制作、手入れの経験をテキストと作品で表現し、親から子へ受け継がれるものと、受け継がれないものを見つめます。

髙橋銑 新作完成イメージ 提供:金沢21世紀美術館

エルメスと考える、修復と継承

展覧会で提起される問いを、アート、保存修復、ものづくりの視点から掘り下げるのが、関連プログラム「壊れていくもの、継承していくもの」です。

エルメスジャポンと金沢21世紀美術館は、2024年から協働を続けてきました。本企画は、これまでの能登への支援や、アートを介した職人の技術と手仕事の継承を背景に、その取り組みをさらに発展させるものです。

金沢21世紀美術館 外観 撮影:渡邉修
提供:金沢21世紀美術館

その一環として、2026年11月14日(土)には、同館のシアター21でシンポジウムを開催。複数の素材を組み合わせた作品やメディア・アート、インスタレーションなど、従来の保存修復の枠組みでは捉えきれない作品を、どのように未来へ継承できるのかを議論します。

エルメスが受け継いできた修復と継承の思想も、エミール・エルメス・コレクションとスカーフのものづくりを通して紹介。エルメスジャポン株式会社取締役会長の有賀昌男(ありが まさお)氏と、エルメスのスカーフを多数デザインしてきたアーティストの野村大輔(のむら だいすけ)氏が登壇します。

展覧会に新作を出品する髙橋銑氏も登壇者のひとり。彫刻の保存修復に携わりながら、自身もアーティストとして作品を制作しています。

Photo: Jukan Tateishi 提供:金沢21世紀美術館

さらに、修復家で京都大学准教授の田口かおり(たぐち かおり)氏、作品の設置を担うインストーラーの有元利彦(ありもと としひこ)氏、同館館長の鷲田めるろ(わしだ めるろ)氏が参加。学芸課長の角奈緒子(すみ なおこ)氏をモデレーターに、それぞれの立場から意見を交わします。

最後には登壇者によるラウンドテーブルを行い、「壊れていくもの」と「継承していくもの」の関係から、美術館とものづくりのこれからを考えます。

作品の変化を見つめ、それをつくり、守り、展示する人々の言葉に耳を傾ける。展覧会での鑑賞とシンポジウムでの議論を通して、「受け継ぐ」という営みを支える技術や判断にも触れられそうです。

「壊れていくもの、継承していくもの」シンポジウム

日時:2026年11月14日(土)14:00~16:30(開場13:30、途中休憩あり)
会場:金沢21世紀美術館 シアター21
参加費:無料・予約不要
※満席の場合は入場できないことがあります

「今日から明日へ 作品を継承すること」展

会期:2026年10月31日(土)~2027年4月18日(日)
会場:金沢21世紀美術館 展示室1~6、交流ゾーン
開場時間:10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)
※2027年1月2日・3日は17:00まで
休場日:月曜日、2026年11月24日、2026年12月29日~2027年1月1日、2027年1月12日・3月23日
※2026年11月23日、2027年1月11日・3月22日は開場
観覧料:一般1,200円/大学生800円/小中高生400円/65歳以上1,000円
※WEB購入・団体(20名以上)は一般1,000円/大学生600円/小中高生300円
※当日窓口販売は閉場の30分前まで
※《ガスワークス》の体験予約方法は公式サイトをご確認ください
※ヤノベケンジ《ビバ・リバ・プロジェクト―スタンダ―》の展示は2027年1月31日まで
協賛:エルメスジャポン株式会社

公式サイト:https://www.kanazawa21.jp/

トップ画像/マイケル・リン《市民ギャラリー 2004.10.09-2005.03.21》2004 (C)Michael LIN photo: NAKAMICHI Atsushi / Nacása & Partners 提供:金沢21世紀美術館

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和樂web編集部

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