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2026.11.01

特別展「源氏物語 王朝のかがやき」を鑑賞した塩野瑛久さんが、和樂webに語った美的センス抜群のコメントとは?

10月6日から京都国立博物館で始まった特別展「源氏物語 王朝のかがやき」で、音声ガイドナビゲーターを担当した俳優の塩野瑛久(しおのあきひさ)さん。2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」で、孤独な美しき帝・一条天皇を演じ、塩野さんファンのみならず大河ドラマ好きの心を震わせました。ドラマの終盤には、紫式部をモデルとしたまひろ(演・吉高由里子さん)が綴る物語が、一条天皇と中宮彰子(演・見上愛さん)との距離を徐々に縮めていくという展開も。 『源氏物語』を絵巻や屛風、工芸などに表現した作品が、京都と東京の国立博物館でのべ257件公開されます。塩野さんにとっても特別なものだという紫式部の『源氏物語』の世界が展開されるこの展覧会についての、和樂web単独インタビューをお届けします。

千年続く“推し活”が見られる展覧会!?

「光る君へ」で一条天皇を演じる以前と、この展覧会で作品を鑑賞してからでは、『源氏物語』や平安時代の美術や文化について、印象は変わったのでしょうか。

「演じる前にもっていたイメージは、漠然と雅やかな世界だな、ということでした。先ほど展示室でたくさんの作品を拝見させていただきましたが、僕がもっていたイメージは大きく違ってはいなかったなという印象です。それは、『源氏物語』が読み継がれてきたなかで、絵に描かれたり、工芸品のモチーフになったりしてきたからなんだと思います。いまこの時代に生きる僕たちにも、その世界観がしっかり伝わっていると、作品を見ながら感じていました」

『源氏物語』は40以上の言語に翻訳され、世界中で読まれている、世界最古の長編恋愛小説です。

「読み物としての完成度が高く、身分や男女の差がなく楽しめる物語を生み出した、紫式部のすごさも感じました。ご本人は、まさか千年も読み継がれるなんて思ってもいなかったでしょうね。時代時代に紫式部が描いた物語やその世界観のファンがいて、お話のなかのエピソードを絵にしたり、工芸の意匠にしたのでしょうか。『源氏物語』の“推し活”が現代まで続いていることが、この展覧会で感じとれると思います」

一条天皇が生きた時代にはたくさんの人が物語に熱中しましたが、そのあとの時代は物語を読むだけでなく、絵画や工芸品などの造形化したくなる、美術的な創作意欲を刺激し続けたのが『源氏物語』です。

雅やかな平安王朝の世界を金碧障屛画に

展覧会の公式サイトで公開されているスペシャルインタビューで、屛風に興味があると語っている塩野さん。

「一条天皇を演じていたとき、お祝い事などがあると立派な屛風が自分の後ろにあったりしたのですが、撮影用のセットなのに空間にパワーをもたらすというか。単純に、大きさや迫力に圧倒される感じもあって、興味をもつようになりました。この展覧会にはたくさんの素晴らしい屛風が展示されていますが、僕にとっては今まで見たことがないようなものばかり。何百年も前に制作されたものが美しいまま目の前にあるということ自体、計り知れない魅力だと感じました。最初に目にした瞬間は、単純に“わ、すごい”と思い、その次に“お金に換算するとどれくらいの価値だろう?”というのが素直な感想でしたけれど(笑)」

『源氏物語図扇面貼交屛風』(左隻) 室町時代・16世紀 広島・浄土寺蔵
【京都会場:11月1日まで展示】

金屛風が最も盛んに、そして華々しく制作されたのは安土桃山時代(16世紀後半〜17世紀初頭)。織田信長や豊臣秀吉といった天下人が、安土城や大坂城、聚楽第など巨大な城郭を築いたことで、その大広間を飾る障壁画や屛風などの金碧障屛画(きんぺきしょうびょうが)が飛躍的に発展しました。その時代の『源氏物語』にちなんだ作品も数多く展示されています。

国宝『源氏物語絵巻』の見方

屛風が空間を飾るものなら、絵巻は手元で愛でるもの。塩野さんはどのように鑑賞したのでしょう。

「特に印象的だったのが、国宝『源氏物語絵巻』と、それを復元模写した絵巻です。国宝のほうは色褪せてしまったり剥落したりしていますが、そうなってしまっていることも含めて魅力があると感じました。一方の復元模写は、もともとはこういう色だったということが復元されているわけですから、見比べてみてとても興味深かったです。しかも、絵画なので平面のはずですが、立体感が感じられたというか。展示ケースの前にしゃがみ込み、水平から見て確かめたくなったくらいです。筆だけでなく指を使って描いたりもしていると研究員の先生にうかがいましたが、そいういうことも関係しているのかなと考えながら見入ってしまいました」

塩野さんは美術には全く詳しくないと言いますが、興味をもつポイントやコメントに美術的なセンスが感じられます。

国宝『源氏物語絵巻』(愛知・徳川美術館蔵)は、数ある“源氏絵”のなかでも最高峰とされる作。塩野さんが見ているのは、「柏木一」という場面。柏木との密通によって男児を出産した女三の宮、娘を心配するあまり仏道修行中の身でありながら山を下った朱雀院、そして女三の宮の夫である光源氏が対面。

初めて見る“金色”は心地いい色

京都会場前期の展示作品をひと通り鑑賞した塩野さんが、最も釘付けになったのは工芸品だったとか。徳川美術館所蔵の「初音の調度」と呼ばれる、金蒔絵が施された国宝の品々です。

「こういう工芸品も初めて拝見しました。絵や意匠が表現されていないところにも細かい金の粒や筋が隙間なく埋め込まれていて、手の込みようが凄いですね。何度も見直してしまったくらいです。色味もとても素敵で、見たことがない金色でした。『源氏物語』の世界を屛風や絵巻や工芸品に表現するうえで、金のあしらいがとても重要だったことも感じました。制作当時とは変わっているのでしょうけれど、今の僕たちが鑑賞するこの金の色味は、ずっと見ていられる心地いい色だと感じました」

国宝『初音蒔絵旅香具箱(初音の調度)』 幸阿弥長重作 江戸時代・寛永16(1639)年 愛知・徳川美術館蔵
【京都会場:通期展示/東京会場:展示なし】

京都国立博物館で開幕した特別展「源氏物語 王朝のかがやき」を、本展の担当研究員である井並林太郎さんの案内で鑑賞した塩野さん。展示室の様子を、「『源氏物語』という作品がもつ“余白の美”というものも感じられる展示ですね。特に能装束や能面の展示が印象的でした」と話してくださいました。
京都会場限定ですが、展示室内に復原能装束を用いた「源氏能」の舞台もあり、前期(11月1日まで)は能『葵上(あおいのうえ)』を、後期(11月3日〜11月29日)は能『玉鬘(たまかづら)』が再現されます。

京都会場に再現された能舞台の前で。この舞台のみ写真撮影が可能です。

能の主人公には『源氏物語』の登場人物も多く、その背景には“幽玄”の美意識が。

『源氏物語』の世界に自分もいた――不思議な感覚

「僕が演じた一条天皇は、まひろが書いた物語を文字だけで楽しんだわけですが、現代の僕たちは物語はもちろん、美術品になった“源氏物語の世界”も楽しめるので、一条天皇より贅沢ですね(笑)。僕にとっては、平安時代の一条天皇も読んだ物語のなかに自分がいるようで、少し不思議な感覚もあります。ぜひ、実際にご自分の目で、肉眼で実物をご覧になってください」

紫式部の『源氏物語』での、身分の低い桐壺更衣を深く愛し、周囲の非難を浴びながらも寵愛し続けた桐壺帝の姿は、皇后・定子に深い情愛を寄せた一条天皇の姿がベースになったと考えられています。

日本独自の貴族文化が花開いた平安時代。しみじみとした情趣と洗練された優雅さを美学として根差したこの国風文化を、『源氏物語』を通して見つめる本展は、11月29日まで京都国立博物館で、2027年1月19日には東京国立博物館で開催されます。

『源氏物語絵巻葵(盛安本)』葵 江戸時代・17世紀 京都国立博物館蔵
【京都会場:通期展示】※帖替あり、この場面は京都会場の前期展示(11月1日まで)

特別展「源氏物語 王朝のかがやき」

【京都会場】
会期:10月6日(火)~11月29日(日)
会場:京都国立博物館 平成知新館(京都府京都市東山区茶屋町527)
休館日:月曜(11月23日は開館、翌24日休館)
開館時間:9時~17時30分(金曜は20時まで、入館は各閉館の30分前まで)
観覧料:一般2200円、大学生1200円、高校生700円

【東京会場】
会期:2027年1月19日(火)~3月14日(日)
会場:東京国立博物館 平成館(東京都台東区上野公園13-9)
休館日:月曜(2月22日は開館)
開館時間:9時30分~17時(金・土曜は20時まで、入館は各閉館の30分前まで)
観覧料:一般2400円、大学生1300円、高校生900円

【展覧会公式サイト】https://genjiten.jp

[塩野瑛久さんプロフィール]
東京都出身。2012年、デビュー。スーパー戦隊シリーズ「獣電戦隊キョウリュウジャー」で立風館ソウジ/キョウリュウグリーン役を演じた。近年の主な出演作に、ドラマ「魔物(마물)」(’25)「未来のムスコ」「嘘が嘘で嘘は嘘だ」「告白ー25年目の秘密ー」(’26)、映画「SAKAMOTO DAYS」「マジカル・シークレット・ツアー」「ラブ≠コメディ」(’26)など。10月1日より放送の「天狗の台所 Season3」では、天狗の末裔・愛宕有意役にて出演中(BS-TBSにて毎週木曜23:00〜23:30、全10話)。第79回カンヌ国際映画祭・ある視点部門正式出品作品の、映画「すべて真夜中の恋人たち」が11月13日より全国ロードショー。11月14日より新橋演舞場で上演される、自身初参加となる劇団☆新感線「髑髏城の七人 LAST STAND」では、無界屋蘭兵衛(Wキャスト)を務める。
トップ画像:特別展「源氏物語 王朝のかがやき」 京都会場 『源氏物語図扇面貼交屛風』(広島・浄土寺蔵)の前 
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和樂web編集部


取材・文/小竹智子
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