志野茶碗 銘 卯花墻 国宝 16世紀末~17世紀初め 1口 口径11.6cm 高9.6cm 三井記念美術館 東京 展示期間:終了
国宝に指定されている日本製の茶碗はたった2碗しかない。そのひとつが「志野茶碗 銘 卯花墻」(うのはながきと読む)で、桃山茶陶の頂点とされている。轆轤で成形したあと、大胆に篦で削り、形をゆがませる。縁は釉薬が薄いため赤く焦げ、底付近には陶工の指跡も生々しく残る。
美濃で焼かれた志野焼は、日本陶磁史上はじめて下絵付で絵を描いた陶器で、本作にも簡略な格子状の線が引かれる。江戸時代前期の武将茶人・片桐石州は、その文様の、白い釉薬で見え隠れするさまを卯の花が咲く垣根に見立て、「卯花墻」と名付けた。小ぶりの茶碗に、茶人の想像力をかき立てる景色が広がっている。