Craft
2019.08.16

「津軽塗 こえだちゃんの木のおうち」に目がハート! 伝統工芸とおもちゃのコラボレーション~前編~

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タカラトミーから発売されているミニドール付きハウス玩具シリーズ「こえだちゃん」。子供たちの温かく優しい気持ちを育むことを目的として「自然」や「緑」をメインテーマにしたこえだちゃんに、懐かしさを感じる方は多いかもしれません。

今回、そのこえだちゃんが300年の歴史を持つ青森県で唯一の伝統的工芸品「津軽塗」とコラボレーションをしました。津軽塗の優美さと、可愛らしいこえだちゃんの世界がどう交わるのか必見です!

こえだちゃんて誰?

現在発売中の「こえだちゃん」

タカラトミーから発売されている「こえだちゃん」はみどりのもりの妖精。約40年間、ごっこ遊びなどでたくさんの子供たちの想像力を育んできました。かわいらしさがより強調された今のこえだちゃんになるまでには、ソフトビニール製やプラスチック製といった素材の変化に加えて、ピンクの髪の毛、黄色い髪の毛、目のパッチリ加減や、にこやかな表情など、その時代の子供たちの好みに合わせて変化を遂げて来ました。

こえだちゃんの木のおうちとは?

現在発売中の9代目「こえだちゃんの木のおうち」

こえだちゃんが暮らすのが「こえだちゃんの木のおうち」です。初代こえだちゃんの木のおうちは、屋根に付いたボタンを押すと木が開きおうちになるという仕掛けが人気を博し、その後は庭やテラス、すべり台が付いたり、おしゃべり機能が搭載されるなどこちらも変化を重ねています。

現在9代目の木のおうちはシリーズ最高の高さ40㎝に伸びる3階建て。ハンドルを回してエレベーター遊びを楽しむことができるギミックが人気で、今回の「津軽塗 こえだちゃんの木のおうち」はこの9代目をベースに制作されています。

世界にひとつ「津軽塗 こえだちゃんの木のおうち」「津軽塗 こりんごちゃん」

こえだちゃんとコラボレーションをしたのが、青森県で唯一、経済産業大臣指定伝統的工芸品として登録されている「津軽塗」です。

こえだちゃんの木のおうちの屋根部分には深緑色をベースに、ピンクの窓や付属パーツなど深みのある落ち着いた色の津軽塗が施されました。

ほかにも、たくさんいるこえだちゃんの仲間の中から、青森の特産物でもある「りんご」をモチーフにした「こりんごちゃん」とのコラボレーションが生まれました。こりんごちゃんの頭とソファーの背もたれ部分に津軽塗が施され、こりんごちゃんに一気に重厚感が加わりました。

今回の作品には、津軽塗の数ある技法の中から代表的な技法のひとつである「唐塗(からぬり)」が用いられています。

唐塗の特徴は、複数の色が浮かび上がる鮮やかな斑点模様です。卵白を加えた粘度のある黒色漆を“仕掛けベラ”という穴がたくさん開いたヘラに付け斑点模様を付けていきます。その上に色漆を塗り重ねて研磨することで断面に独特な模様が現れます。

塗る・乾かす・研ぐという作業を何度も繰り返し、全部で48の工程から生み出される唐塗は完成までに約1~2か月かかると言われています。

津軽塗とこえだちゃんコラボ誕生の秘話

そもそも、津軽塗とこえだちゃんのコラボレーションが生み出されたのはどういった経緯からだったのでしょうか? タカラトミーの広報・池澤さんに伺いました。

青森県は2018年度に行う事業の中で「地域の伝統工芸と玩具とのコラボモデル」を検討していました。そこでタカラトミーに提案をいただいたのがきっかけです。お話をいただきタカラトミーでの検討の結果、津軽塗ならば「こえだちゃん」のカラフルな世界観を表現するのにぴったりなのではないかと感じ「こえだちゃん」シリーズを提案させていただいたところ快諾いただいて、コラボレート作品の制作が始まったというわけです。

――たくさんある津軽塗の技法の中から、唐塗になったのはなぜでしょうか?

唐塗を用いたのは、やはり津軽塗を象徴する模様であることからです。さらに“緑の森のやさしい家族”をイメージしたことから緑を貴重とした唐塗に決定しました。48もの工程から生み出される唐塗は大変手間のかかる技法で、今回の作品にも完成までに約3か月かかっています。それにもかかわらず、あえて唐塗を選んだのは、たくさんの人に津軽塗をぜひ知ってもらいたい、そのためにはやはり分かりやすく津軽塗を表現できるものが良いだろうということから、唐塗が選ばれました。

――色使いにポイントやこだわりは何かありますか?

実は、初めの案では屋根の部分はこの深い緑色ではなかったんです。最初は本物の木のおうちと同系色の“黄緑色”に近い色にしようという案が出ていました。しかし、唐塗をより生かすことができ、さらにインパクトを重視したいということからこの深い緑色に決定しました。

津軽塗の認知度アップに加え、これまでにない発想で異業種との連携を考えていた青森県。そして発売当初から「自然」や「緑」に縁が深く、カラフルな世界観を持つ“こえだちゃんシリーズ”との相性の良さを感じたタカラトミー。双方の想いがピタリと重なり、今までにはない発想でまさにインパクトのある作品が誕生しました。

「東京おもちゃショー2019」へ実物を見に行きました!

残念ながら、津軽塗が施されたこえだちゃんの木のおうちとこりんごちゃんの販売予定はありません。しかし実物を見てみたい! …ということで、今回、展示があると聞き「東京おもちゃショー2019」(6月13日~16日、東京ビックサイト)へ実物を見に行ってきました。

タカラトミーのブース内にはたくさんの人・人・人! こえだちゃんのコーナーにもたくさんの人が集まり「伝統工芸とおもちゃ」というめずらしいコラボレーションに目をとめる人がたくさん見られました。

緑を基調にした自然いっぱいのこえだちゃんの世界。津軽塗とのコラボレーションは、この色とりどりの世界との相性の良さから生まれたのですね。

深い緑色の屋根に、ポイントになるピンクの窓がシック! 屋根と窓だけではなく、付属部分もまた違う色で塗りが施されています。

唐塗の特徴ある斑点模様は、長い時間と高度な技の積み重ねで作り上げられます。それを少し知っただけでも作品にとても存在感が感じられました。

コラボ作品と一緒に置かれた津軽塗のりんごにも唐塗が施され、とっても可愛い!

この日は一般客以外の展示会だったため大半が大人でしたが、こえだちゃん自体に懐かしさを口にする人も多く、かつて遊んだ…もしくは見たことのあるおもちゃと伝統工芸とのコラボ作品に、細部までのぞき込んで興味を示す人がたくさん見られました。

制作者のひとり若手津軽塗職人・小林正知さん

今回の作品で漆塗りを施したのは、津軽で約百数十年の間、6代にわたって技術を受け継ぐ津軽塗メーカー「小林漆器」です。制作に参加した30代の若手職人である小林正知さんは、数々の展示会やメディアにも出演され、さらなる津軽塗の発展に貢献するひとり。タカラトミーによると、今回の小林さんの抜擢には「若い感性を生かして欲しい」という思いがあったそうです。

小林さんは制作にあたり「こえだちゃんの木のおうちの屋根部分は、波型の凹凸があり形状が複雑なため、漆の研ぎ出しに手間がかかりましたが、津軽塗の代表的な模様となる唐塗にこだわり制作をしました。凹凸部分は均等な漆塗りと研ぎ出しが必要ですが、凹凸の無い作品と比べても遜色のない仕上がりを目指しました。厚みの無い屋根部分は柔らかいため、研ぎ出しの際、力加減の調整にはとても難儀しました。」とコメントされています。

ちなみに小林さんは、こえだちゃんで遊んだ経験は無いそうですが、こえだちゃんとのコラボレーションを聞いたとき、意外性のある組み合わせに興味を持たれたと言います。彩りのあるこえだちゃんの世界観のまま、こだわりの唐塗が存分に表現された作品を見事に作り出されました。

7月1日から青森・弘前市で実物を見るチャンス!

おもちゃショーは終了しましたが、実物を見ることができるチャンスがやって来ます! 2019年7月1日(月)から青森県弘前市にある藤田記念庭園 考古館では、「津軽塗 こえだちゃんの木のおうち」「津軽塗 こりんごちゃん」が展示される予定です。

繊細で重厚な津軽塗とコラボレーションしたカワイイこえだちゃん木のおうち&こりんごちゃんを目にする機会をお見逃しなく!

◆藤田記念庭園 考古館

住所 青森県弘前市上白銀町8-1

展示期間 2019年7月1日(月)から終了時期は未定。

公式サイト

おもちゃと伝統工芸の異色のコラボは、さらに後編へと続きます。後編では、同じくタカラトミーから発売されている「プラレール」と伝統工芸がコラボした「アート プラレール」をご紹介。これはおもちゃの域を超えた、まさに芸術品です!

書いた人

関西と中部の両文化が入り乱れる伊賀地方の出身。1年間の放浪生活を送ったオーストラリアで良き日本を再認識。広く浅い知識を頼りに活動中。子のためなら鬼にでもなると2人の男児を溺愛するも、その子どもから鬼と呼ばれている。好きなものは道具、模様、コーヒー、プリン、深夜ラジオ。