奥が深すぎるニッポンの染め文化!技がすごいんじゃ

奥が深すぎるニッポンの染め文化!技がすごいんじゃ

あまり人に知られることなく、特殊な世界になりつつある日本の染織工芸。ですが、日本で製品を作り始めた時期は明確にわかっていないものの、先史時代以前か先史時代からあるものだと考えられています。

その技法は非常に洗練されており、日本の誇れる技術のひとつと言えるでしょう。そこで、今回は中でも「型染め」「ろうけつ染め」に着目して工程や仕上がりの違いをお伝えします。

染織とはどういうものか

色をつけるとき、絵画(洋画や日本画)は顔料を重ねていきますが、染織(染めと織り)は染料を生地や糸に染み込ませます。特に「染め」では染料が染めたところから糸の繊維を伝ってどんどん走って(広がって)しまうので、一つひとつ別の色が出るよう染め分けるためには、狙ったところ以外に色が染まらないように染料をせき止める必要があります。染めはせき止めるための防染(染まらないようにすること)の方法で技法が分かれていて、糊を用いる場合には「型染め」、蝋(ろう)を用いる場合に「ろうけつ染め」といいます。ちなみに織りの場合は先に糸染め(先染め)をするので防染の概念がありません。

顔料で描く絵画や「織」、絵画でいうと油絵には絵の具の質感など物理的に立体的な部分があり、それが味わいの一つと言えますが、例えば浮世絵や絹織物の柄のような「染め」は一般的に平坦で凹凸がありません。ですが、表面に色が乗っているのではなく、糸の中に染み込んでいることで生まれる色の深みがあります。これは、繊維の中を光が通り抜けることで生まれるもので、それが「染め」の魅力のひとつでもあります。

染織の作品が出来上がるまでにはたくさんの工程があり、多くの職人の手が入ります。例えば、染めでいうと、意図していた色に染まらなかった、という場合に上書きすることは出来ません。あらゆる点で最初から足し引きの出来ない作品作りです。現在の美術的な制作においては一貫して一人で仕上げることもありますが、いずれにしてもどこかの工程で失敗すれば最初からやり直しになります。さらに一つひとつの工程にも高度な技術が必要になり、知っている人が見れば作品の仕上がりもわかってしまう、繊細さがあります。そういったところにも美しさ、そして技術者の凄さを感じます。日本の伝統工芸品は他国には出せない「細やかさ」があり、それが強みだと思いますが、染織はその代表といえるでしょう。

型染めの工程

型染めは、大きく①型紙を作る②防染糊を使って染めるという工程に分かれます。まずは下絵に沿って染めたくない部分を切り抜き、「型」をつくります。

次に、その型を生地の上に置き、防染糊をヘラで刷り込んでいくと、切り抜いたところにだけ防染糊が付きます。そうすると、染料で染めても防染糊の部分は染まりません。なお、この工程を糊置きといいます。

型染めでは、切り抜いた線がそのまま作品自体の染めの境界になり、しっかり染まりますので、線はかなりシャープに出ます。それだけでなく、余分な染料が防染糊に吸収されるため、染め際は色むらなく染まります。広い範囲をムラなく染めるためには相応の技術が要りますが、広い範囲を一気に染めて平坦で凹凸がないように仕上がると色の美しさが際立ちます。

制約があるからこそ面白い、ツリ

型染めは長い布に対して小さな型紙を置いてその上に糊を置いたらその隣に型を置いて糊を置くという作業を繰り返し行いますので、型紙の図柄が繋がっていないと、型を作成したときに型紙が動いてバラバラになってしまい、糊置きという工程が出来ません。

目を粗く織った薄い絹織物「紗」を型紙に貼ることで型紙を固定するという方法もありますが、紗を貼らない場合には「ツリ」という互いの型を橋のように繋げる、本来は要らない線作るという制約に従って、型紙がバラバラにならないようにする必要があります。

このツリの部分は、糊置きの際に手作業で糊を置いて行います。ですがどうしても手作業ではツリを行わない場合に比べてシャープなラインにはならないため、ツリを多用せず、可能ならば全くなしで、いかに表現するか模索します。

型が繋がらない場合はそれだけ自由な表現を行えるため、ツリを多用したくはなりますが、型染めのシャープな美しさという魅力の一つを台無しにしてしまうかもしれません。一見すると制限の多い技法ではありますが、その制限を表現のためにどう乗り越えるか、取り込むかを考えて制作するのも製作者側の、楽しみの一つになっています。

 

ろうけつ染めの工程

ろうけつ染めは溶かした蝋を筆で生地に塗ることで、その部分が染まらなくする技法です。蝋を薄く塗れば少しだけ染まるようにもなるため、塗る蝋の厚みのまばらさがそのまま色のまばらさとなり、作品の表現につながります。

染めと蝋を置くのを繰り返すことで、比較的自由に表現することができます。型染めに比べると、筆を使って描くこと、少しずつ染めていくことなどから絵画に近い技法と言えるでしょう。

蝋は染料をはじく性質を持っているので、色を染める際、生地の上を走っていく染料が蝋の際(きわ)で止まり、その際に少なからず染料が溜まります。すると、染料のたまる際だけが少し濃くなりますが、これがろうけつ染めの味わいとなります。まるで筆の筆致が強調されているようで、作者の筆運びが浮彫りになるように感じられ、それが魅力の1つとなります。

また、生地に塗った蝋に乾燥ひびを入れることで、防染した部分にもひび割れに従って染料が入り込んでいくようになり、より複雑なデザインに仕上がります。これもろうけつ染めならではの表現になります。

ろうけつ染めは、淡さやグラデ―ジョンの出方、ひび割れなどによる偶然性など、蝋という道具の影響が色濃く出る絵になります。

型染めとろうけつ染めの仕上がり傾向の違い

最終的な仕上がりの傾向としては、「型染めはシャープな線でデザイン的、ろうけつ染めは手描きの線で絵画的」です。技法の特徴的にそうなりがちではありますが、その制約の中で限界を追求することでその傾向に収まらない作品も多々あります。

よく知られている作家として、型染めは鳥羽美花さん、ろうけつ染めは古屋絵菜さんが挙げられます。ぜひ、高い技術を誇る作家たちの作品を目で楽しみ、その違いを肌で感じてみてください。

まとめ

他にも染織の技法というのは多数ありますが、今回は型染めとろうけつ染めという2つの技法について、対比も含めてご紹介いたしました。

染織技法は実用品をつくるために編み出されたもので、現在でも染織作品と言えば着物が多く、絵画的な使い方をすることはまだ多くはありません。ですから、一般的に美術鑑賞をする方でもあまり身近ではないと思います。

「テキスタイル」と表現を変えて、世界的に見れば実は結構ありますが、まだまだ知られていない世界ではあります。どんな風に染められているのかな?と作品を細かく見てみると、繊細な技術で染められた奥行きのある染めの表現をもっと楽しめますよ!

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