Craftsmanship

2024.11.07

豪華クルーズだけじゃない。「飛鳥Ⅱ」が守り継ぐ日本の伝統文化とは?

世の中が平常を取り戻してきた今、長い間封印されていた旅行への意識がいっそう高まっていることを感じます。旅行にはいろいろなスタイルがありますが、ラグジュアリーな旅の極致と目されているのがクルーズ船を利用したツアーです。

クルーズというと、ゆったりと時間をかけて世界を旅するイメージがありますが、実は、日本国内の港をつなぐ2泊3日をはじめとした短期間の旅から世界一周まで、さまざまなプランがあります。そんなクルーズ船において、日本で絶大な人気を集めてきたのが郵船クルーズ株式会社の「飛鳥Ⅱ」です。

だれもが憧れるクルーズ船「飛鳥Ⅱ」は噂に違わぬ素晴しさ! 編集部乗船レポートでクルーズの魅力はおわかりいただけたと思いますが、極上の時間のなかでもとりわけ印象的だったのが、『和樂』が大切にしてきた日本文化に対する特別な取り組みです。

キャビンに用意された「輪島塗」の箸

それは、乗船してからキャビン(客室)に入ったときのことです。
テーブルに、「幸福へのはし渡し」と書かれた、漆の箸を入れた箱が置いてあったのです。

この箸は、令和6年1月1日の震災で大きな被害を受けた能登半島の伝統工芸である、輪島塗。
少しでも復興の力になればという思いを感じました。

飛鳥クルーズ×日本工芸会

その後、「飛鳥Ⅱ」の船内を眺めていたら、いたるところに伝統工芸の品々が展示されていることに気が付きました。

作品のそばには、それを手がけた人間国宝をはじめとした作家名が記されていて、美しさはもとより、クオリティの高さに背筋が伸びるような気にもなりました。

この取り組みは、重要無形文化財保持者(人間国宝)を中心に、伝統工芸の作家や技術者などで組織される「公益社団法人 日本工芸会」と「飛鳥Ⅱ」を運営する飛鳥クルーズとのコラボレーションによるもの。まさに『和樂』の心をとらえたのが、この取り組みだったのです。

デッキ5に展示された伝統工芸品。

ブックラウンジ〝イー・スクエア〟には専用のケースがあり、伝統工芸品を見やすく展示。

「飛鳥Ⅱ」では、優れた技術を受け継ぐ伝統工芸の品々を鑑賞するだけでなく、購入もできます。
そして、クルーズ船が寄港する全国津々浦々の地に息づく伝統工芸にも目を向け、地域の応援や地方創生の応援も行っています。

さらに、寄港地では、その土地の工芸作品に触れることができる寄港地観光ツアーなども用意。
さまざまな形で伝統工芸を支えているのです。
その一環として、「夏の金沢・函館クルーズ」では、漆工芸のひとつ「沈金」の重要無形文化財保持者・山岸一男さんによる講演「能登はやさしや土までも」が、〝ハリウッドシアター〟が行われました。

能登の山河や美しい海岸線は、能登半島地震で大破してしまい、漆工芸をはじめとした伝統文化も壊滅的な打撃を受けました。
山岸さんの工房も大きな被害を受け、現在は工房を能登から金沢に移し、沈金に取り組んでいるとのこと。
しかしながら、環境が変わったからといって以前の通りの制作が続けられるわけではなく、さまざまなことに苦労されていることがしのばれました。

向かって右側に腰かけているのが人間国宝・山岸一男さん。自らの作品をスクリーンに映しながら、能登の現状への理解と支援を呼びかけた。

お話のなかで山岸さんは、室町時代に能登を訪れた浄土真宗の蓮如上人が歌った「能登はやさしや土までも」を引用し、能登の人情を説き、分業制によって形成された輪島塗の産地の歴史を解説。

能登の人々が寡黙で粘り強く働くこと、意地っ張りでよいものをつくろうと一生懸命なことなど、能登・輪島の漆職人が今、力強く立ち直ろうとしていることを教えてくれました。

そして、漆工芸を守ろうとする心から、若者たちに対する支援を呼び掛けておられました。

「飛鳥Ⅱ」の11デッキにある和室「游仙」には、さまざまな伝統工芸品が飾られている。

左/キャビンに飾られた作品。右/誰でも見やすい場所に置かれた人形。

デッキ6のショップでは、伝統工芸を受け継ぐ作品を取り扱っていた。

山岸さんの講演をきっかけにして、飛鳥クルーズが能登半島地震からの復興に向けて「飛鳥Ⅱ」で販売している工芸作品の売上の一部を「公益社団法人 日本工芸会」へ寄付していることを知りました。
また、「公益社団法人 日本工芸会」もオンラインショップの売上の一部など、復興支援に熱心に取り組んでいるいので、ぜひご覧になってみてください。

公益社団法人 日本工芸会

https://www.nihonkogeikai.or.jp/donation

さらに、2025年就航予定の新しいクルーズ船「飛鳥Ⅲ」にも、「公益社団法人 日本工芸会」と飛鳥クルーズのコラボレーションは受け継がれることになっています。
日本を代表する飛鳥クルーズによって、伝統工芸が末永く継承され、いっそう発展して浮くことを祈ってやみません。

「飛鳥Ⅱ」の問い合わせ先

郵船クルーズ株式会社 https://www.asukacruise.co.jp/
2025年世界一周クルーズ 飛鳥Ⅱ公式予約サイト https://www.asukacruise.co.jp/

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山本 毅

昭和のころからファッション雑誌の編集に携わり、重ねたキャリアだけは相当なもの。長らく渋谷の隣駅(池尻大橋)近くに住んでいたが、諸事情により実家(福岡県飯塚市)に戻る。以後もライターの仕事に携わることができ、現在2拠点生活中。LCCの安さに毎回驚きながら、初めて住んでみた人形町・日本橋エリアでの生活が楽しくて仕方がない!
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