Culture

2026.01.25

やっぱり老舗は京都と東京に多い? 江戸と京都の老舗物語

老舗が多い土地と聞いて思い浮かぶのは、古都・京都と江戸を起点とする東京ではないでしょうか。御所や寺社の御用に支えられた京都、武家と町人の需要で育った江戸。ふたつの都の歴史から、日本に老舗が多い理由をひもときます。

歴史を反映した老舗が数多くある、京都と東京

古くからの暖簾(のれん)を守り続けてきた「老舗」。
その名にふさわしい店や会社が多い地域を考えてみると、京都と東京という、これまで政治や経済、文化の中心地として栄えたふたつの都市が思い浮かびます。

さすが京都! 平安時代以来の老舗が今も!

794年に平安京が開かれた古都・京都には、それ以前に創業した記録がある「池坊華道会」をはじめ、平安時代に創業して現在も営業を続けている筋金入りの老舗が5軒も!
千年の古都と呼ばれる京都の歴史を、まざまざと思い知らされます。

このように長い歴史が脈々と受け継がれてきた裏には、天皇の居所である御所や寺社の存在がありました。

たとえば、京都でも最古の「傳來工房(でんらいこうぼう)」は平安時代の806年に創業し、弘法大師(こうぼうだいし)が唐(とう)から伝えた鋳造(ちゅうぞう)技術による青銅製品を寺社におさめ、 885年創業の「田中伊雅(たなかいが)」は寺院用の荘厳具(しょうごんぐ)をつくってきた老舗。
「あぶり餅一和(あぶりもちいちわ)」は今宮神社の参道で商ってきた茶店で、いずれも御所や寺社との密接なかかわりがあります。

安土桃山時代から江戸初期の京都の風俗を活写した一双の屏風。アイキャッチ画像は豊臣秀吉が建てた方広寺の大仏殿。『洛中洛外図屏風(舟木本)』(右隻) 岩佐又兵衛 国宝 江戸時代・17世紀 東京国立博物館 出典:ColBase (https://colbase.nich.go.jp)

京都の老舗の特徴

御所や寺社のお眼鏡にかなったら、専属契約のような形で取引ができる〝御用〟という安定した立場を得ることができました。
そうすると、つくり手の経営は安定し、仕事に携わる職人はいっそう技術を磨くことができ、同業他社との競争とともに、よりよい商品の開発を目ざしてさらなる発展を遂げることにつながります。

平安時代以後、鎌倉、室町と時代が移っても、御所はそのまま。さらに多数の寺社が開かれた京都には様々な職種の御用の店が現れます。
職人技を大切にするといわれる京都の伝統は、このような歴史に培われてきたもの。現在の京都の老舗は、長い歴史の生き証人ともいうべき存在なのです。

『東海道五十三次之内 日本橋 朝之景』 歌川広重 江戸時代・19世紀 メトロポリタン美術館 The Metropolitan Museum of Art. Rogers Fund, 1918

東京にはどうしても歴史的に不利な面が

一方の江戸は、『吾妻鏡(あずまかがみ)』の1180年の条に初めて地名の記録が見られるように、歴史の面では京都に太刀打ちできません。

東京で最古とされる「高田装束店(たかだしょうぞくてん)」は、御所の装束に用いる有職織物(ゆうそくおりもの)の調進をつとめてきた織物店。
「塩瀬総本家(しおせそうほんけ)」は奈良で創業した和菓子舗、寝具の「西川産業」の創業地は滋賀県の近江八幡(おうみはちまん)で、江戸時代より前に創業した店(企業)には、江戸以外の地から移ってきたところが名を連ねます。

その後、江戸に幕府が開かれると、将軍家や諸大名家といった武士はもとより、経済力をもつようになっていた町人たちの需要に合わせて、たくさんの店が開かれます。
このように、現在まで続く江戸時代以来の老舗は、武家と町人によって支えられてきました。

明治時代以降、老舗の数が逆転

明治時代に京都から東京へ皇居が移った際には、御用とされていた京都の老舗も一緒に東京へ移転しました。
2013年の帝国データバンクのデータによると、創業100年以上の企業は東京に約2500軒、京都には約1500軒となっていて、企業数ではかつての江戸が京都を逆転したことになっています。
ただし、この数字には企業として登録していないものが抜けていて、老舗の数はもっと多いとされます。

ふたつの都のおかげで日本は老舗大国になった!

なぜそれほど多くの店が何代にもわたって受け継がれてきたのでしょうか。
その理由の第一として、都が置かれた地では御所や寺社の御用をはじめ、茶道や芸能などの伝統文化が大切にされてきたことがあげられます。
そして、食品や薬品、嗜好品(しこうひん)など生活に根差した商品をつくり続け、変わらぬ信用と愛顧を得たこと。さらに、職人技を一家で代々受け継いできたことも見逃せないところです。

伝統文化に直結した京都の老舗、町人の暮らしに欠かせない江戸の老舗。
ふたつの都で育まれた老舗は他の地域にも普及し、創業100年を超える老舗が日本全国で26000軒を超えるといいます。
古きよき日本の伝統文化が見直されている現在にあって、京都と江戸の歴史伝統を今に伝える老舗は、まさに日本文化の本質といっても過言ではないでしょう。

『東都名所 駿河町之図』 歌川広重 江戸時代・19世紀 東京国立博物館 出典:ColBase (https://colbase.nich.go.jp)

京都の老舗10

(創業年順 ※「頃」の場合もあります)
578(用明天皇2)年 池坊華道会(いけのぼうかどうかい)[華道家元]
806(大同元)年 傳來工房(でんらいこうぼう)[鋳造]
885(仁和元)年 田中伊雅(たなかいが)[仏具]
1000(長保2)年 あぶり餅一和(あぶりもちいちわ)[和菓子]
1160(永暦元)年 通圓(つうえん)[茶]
1184(治承8)年 菊一文字(きくいちもんじ)[刃物]
1192(建久3)年 乾大佛堂(いぬいだいぶつどう)([仏具]
1392(元中9)年 松前屋(まつまえや)[水産加工]
1417(応永24)年 佐藤織物(さとうおりもの)[織物]
1421(応永28)年 亀屋陸奥(かめやむつ)[和菓子]

江戸の老舗10

(創業年順 ※「頃」の場合もあります
1346(貞和2)年 高田装束店(たかだしょうぞくてん)[和装小物]
1349(貞和5)年 塩瀬総本家(しおせそうほんけ)[和菓子]
1566(永禄9)年 西川産業(にしかわさんぎょう)[寝具]
1575(天正3)年 ミヤザキ[食品・工業商品]
1576(天正4)年 玉英堂彦九郎(ぎょくえいどうひこくろう)[和菓子]
1582(天正10)年 銀座香十(ぎんざこうじゅう)[香]
1585(天正13)年 メルクロス[商社]
1586(天正14)年 松井建設(まついけんせつ)[建築]
1590(天正18)年 住友金属鉱山(すみともきんぞくこうざん)[非鉄金属]
1590(天正18)年 伊場仙(いばせん)[和装小物]

※本記事は雑誌『和樂(2014年7月号)』を再編集し転載しました。
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和樂web編集部

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