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書店と人の思わぬ出会いにワクワク!全国46店参加の「御書印プロジェクト」って何だ?

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あなたにとって書店はどんな存在ですか? 「かなり行ってる」という人も「あまり行かない」という人も、これ、見てください!

表参道の山陽堂書店でもらった御書印

手帖に捺(お)されたハンコの正体は、御朱印ならぬ「御書印(ごしょいん)」。2020年3月1日にスタートした「御書印プロジェクト」では、全国の参加書店で「御書印ください」と伝えると、訪問した日付と3つの印、そして各書店のメッセージや書店が選んだ本の一節がもらえます。

「御書印」は人と書店を結ぶ印です。

御書印を訪れると、そこで書店員が選んだ本と偶然に出会うでしょう。
そしてあなたはこれまで知りえなかったことにふれるかもしれません。

御書印帖の使い方は自由です。
書店で出会った本を書き留めたり、気に入った物語の一節を書き添えたり、
旅先の思い出をそっと綴じ込めたり。

さあ、御書印帖を持って本と書店を巡る旅に出かけましょう。

〈「御書印帖」1ページ目のメッセージ抜粋〉

和樂web編集長セバスチャン高木が、日本文化の楽しみをシェアするためのヒントを探るべく、さまざまな分野のイノベーターのもとを訪ねる対談企画。第10回は番外編(!)。和樂web編集部さいころが、セバスチャンに代わってプロジェクトの発起人たちにお話を伺いました。

両サイドのボディガードのようなおふたりが発起人。左が松本さん、右が小川さん、中央がさいころです。

ゲスト:小川宗也さん(写真右)
株式会社小学館パブリッシング・サービス 営業企画部、小学館の児童書と雑誌を主な領域に、販売戦略を考えたり分析している。

ゲスト:松本大介さん(写真左)
株式会社小学館パブリッシング・サービス 営業企画部、一般書、文庫などの販売を担当。前職は書店員。入社後、小川さんに弟子入り志願するも保留にされる。

聞き手:さいころ(写真中央)
和樂web編集部スタッフ。御書印プロジェクトでは印の作成からnoteの運営などWebプロモーションやディレクションを幅広く担当。

御書印、いくつ持ってる?

小川: 高木さんに「聞き手やってみなよ」って言われて、今日は聞き手に(笑)?

さい: はい、1時間前に任命されました(笑)。今回は私があれこれ伺います。さっそくですが、小川さんは御書印いくつ集めましたか?

小川: 1、2、3……6つですね。さいころさんは?

さい: 1、2、3、4、5……9つです。

小川: おっ、たくさん集めましたね!!

さい: 和樂web編集部のみんなで神保町界隈の書店をいくつかまわったんです。

小川: 三省堂は菊池寛なんだ。へぇ〜! この各書店が選ぶ本の一節部分、京都の丸善だったら梶井基次郎の一節だろうな〜……なんて漠然としたイメージはあったんですけど、蓋をあけてみたら、一節も印も、各書店でかなり個性がありますね。こんなに多様性が表れるとは。

御書印参加書店一覧。オリジナル印がずらりと並ぶだけでも、ワクワク!

フレーズが舞いおりてきたんですよ

さい: 御書印プロジェクトは、現在いくつの書店が参加されているんですか?

小川: 2020年3月1日時点で、全国46の書店が参加しています。

さい: なぜこのプロジェクトを始めようと?

小川: たしか2019年10月末だったかな。荻窪のとある書店に立ち寄った帰り道、とつぜん「御書印」というフレーズが舞いおりてきたんですよ。

さい: 企画名が、先に頭に浮かんだんですね。

小川: そうです。書店のレジで「御書印ください」と伝えると、店主が手帖に印を捺して、一筆をしたためてくれる。御書印というフレーズからそんな妄想が膨らみました。

御書印の楽しみ方。詳細は公式noteにて。

さい: 書店を巻き込んだプロジェクトは、以前から考えていたんですか?

小川: 電子書籍や通販で本を買うことがあたりまえになった現代において、我々が街の書店と一緒になってその役割をアップデートできないかなぁと考えてはいました。それでこのアイデアを最初に相談したのが、今隣にいる松本さんです。

さい: 松本さんは、アイデアを聞いていかがでしたか?

松本: 僕、実は2019年の3月まで書店に勤めていたんです。書店に勤めていた頃は、書店が街といかに関わっていくか、本を購入する目的以外でどうやってお客さんに足を運んでもらうかが悩みのひとつでした。ですから小川さんからこの相談をいただいたときは「これは書店の希望になる!」と興奮しました。もちろん「小川さん、これはすごいアイデアです。ぜひお手伝いさせてください!」と答えました。

高木さんに尻たたかれた

さい: そのあと、私たち和樂web編集部へ相談にいらっしゃったんですよね。

小川: そうです。同僚や上司にも御書印プロジェクトの相談をして、わりと早い段階で高木さんのところに企画書を持っていったんですよ。

さい: 高木さんの反応は?

小川: それまでに相談した人たちの多くが「いいね!」と優しくリアクションしたのに対して、高木さんは「これは今すぐやるべきだ、一刻も早く」と力強く断言されたんですね。僕は正直「1年くらいかけてやればいいか」なんて考えていたので、もしも彼にお尻をたたかれていなければ、今も妄想でとどまっていたと思います(笑)。それですぐ社長に企画を相談して、正式に始動したんです。

松本: 高木さんに相談した後から、一気にプロジェクトが具体的になりましたよね。

御書印帖の表紙にはヒエログリフで「I LOVE BOOK」。これは高木さんのアイデア。

さい: 私は元銀行員ということもあって、こういう新しいプロジェクトを始めるとき、最初にルールを固めなくちゃと慎重に身構えるんです。でもこの企画は、いきなりスタートしたというか……ものすごくフレキシブルに動いているというか(笑)。もちろん運用に必要なルールはありますけど「書店の判断におまかせします」な部分も多いですよね。例えば、印の色。パン屋の本屋は、茶色のインクを使っていたり。

小川: 朱以外の色を選んだのは5店舗ですね。僕は「全部朱色がいい」と言ったんだけど、高木さんが「なんでもいいじゃん」って言ったんだよね。今思うと、たしかにそれでよかったかも(笑)!

御書印帖の最初のページに書かれたメッセージも、実は高木さんによるもの。

書店への一歩、そのハードルを下げるために

さい: 今回参加された書店の中には全く知らなかったお店もありました。私と同じように「御書印がきっかけで、気になる書店に行ってみた!」なんて人もこれから増えそうですよね。例えば、御書印のおかげで農文協・農業書センターのような専門書店に初めて訪れたんですけど……。

小川: 農業書センター、おもしろかったでしょ?

さい: はい!行ってみたら、すごくおもしろくて。難しそうな専門書ばかり並んでいるのかと思いきや、料理や動物にまつわる本があったり、レジの横でタネを売っていたり。気軽に入れる場所だと気づくことができたのは、御書印のおかげです。

小川: 書店を巡る理由を御書印がつくるというか、ハードルをとっぱらう役割にも期待していたので、さいころさんのような体験をする人が増えたら僕としてもすごく嬉しいです。

さい: それから、書店っていろんなイベントが開催されているので気になっていましたが、ちょっと参加しづらいイメージもあったんです。御書印をきっかけに気になっていた書店に訪れることで、イベントへ参加するハードルも下がる気がしました。

松本: さいころさんのおっしゃること、よくわかります。例えば、池袋にある天狼院書店なんかおもしろくて、部活やゼミと称してイベントをされていたり、お店にこたつが置いてあって、知らないお客さんがそこでさも我が家のように本を読んでいるんですね(笑)。そうやって上手に場所を活用してコミュニティをつくっていても、一度も訪れたことのない人にとっては、そこに入るのってハードルが高いじゃないですか。でもその入り口として御書印があると、書店とまずはゆるくつながって、そこからちょっとずつ関係を深められるのがいいなと思うんです。

さい: 御書印のおかげで、お客さんも書店も互いに距離が縮めやすくなりそうですね。

本を買う場所から、人と出会う場所へ

さい: プロジェクトが始動して、何か実感されたことはありますか?

小川: 実際に書店を巡って担当者の声を聞いてみると、書店員たちもワクワクしているというか。このプロジェクトをきっかけに、書店が自分たちのことをより誇らしく思えるようになるんじゃないか?と感じるようになりました。

さい: もしかすると御書印のようなシンボルをつくることでお客さんに「私の店はこういう場所ですよ」と、アイデンティティを伝えやすくなったかもしれませんね。印や書かれた一節をきっかけに会話することで、これまで「本を買う場所」だった書店が、御書印を通じて「人と出会う場所」に変わったような気がしました。

小川: 機械的なスタンプラリーのような体験にはしたくなかったので、そういうやりとりが生まれているのは嬉しいことです。

松本: きっとさいころさんと同じことを、書店も感じていると思いますよ。書店員とお客さんの会話って、一番大切な仕事ですが、日常業務に追われる中で意味を見失いがちでもあるんです。御書印を通じて会話することで「自分たちの役割ってなんだっけ?」と再確認できるというか。書店に限らずこれからの小売業で最も大切なことを、御書印がわかりやすく見える化しているのかもしれません。

全国展開の先に海外展開も?

さい: 参加書店は今後も増えるんですか?

小川: はい。既に二次募集が始まっていて現在80店の参加が決まってます。北海道から沖縄まで全国の参加店が集まって、5月には120を超える書店で御書印をもらえるようになる予定です。

さい: では最後に「御書印プロジェクト」今後の展望を最後に教えてください。 まずは松本さんから。

松本: 書店から「御書印をもらいに訪れたお客さんが、本も買ってくれた!」という話を聞いて、このプロジェクトがまわりまわって書店の売上にも貢献できるんじゃないかと新しい期待も膨らんでいます!

さい: 私も御書印をもらった書店で絵本を一冊書いました! 御書印をきっかけに本を買う楽しみに気づく人が増えたら嬉しいですね。小川さんはいかがですか?

小川: 僕の野望としては、2021年3月を目指して、捺印文化のある台湾や韓国にも御書印プロジェクトを展開したいなと。そのあとはニューヨークへ!

さい: 海外への展開! 旅の目的のひとつとして御書印が世界に広がっていくなんて、まさに夢のようです。 本好きの方はもちろん、私と同じように「書店に行くのはハードル高いなぁ」と感じていた方にこそ、このプロジェクトの機会を通じて書店に足を運んでいただけたら、何か発見があるんじゃないでしょうか。本日はありがとうございました!

御書印プロジェクト

Webサイト(note):https://note.com/goshoin/
参加書店一覧:https://note.com/goshoin/n/ndd270b812fb5
Instagram:@goshoin_project
Twitter:@goshoinclub