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松枝小夜子さん「久留米絣」
藍という色には無限の色が含まれている
小夜子さんは、いつもきもの姿の母に習った着付けで、折々に哲哉さんや玉記さんの作品を纏(まと)います。けれど、自作のきものを自分に仕立てることはありませんでした。
「私がつくる作品は、人が生きる力を出して幸せになることを願うものですから、自分のために着ることは生涯ないと決めていたんです」。
それを今回、特別にお願いして、自作を仕立てて着ていただきました。記念すべきその写真が下の「珠(たま)の光(ひかり)」と題した、濃き藍地に流れるように配された白と淡藍(あわあい)の水玉絣。凜として美しいきものです。
「初めてで落ち着きませんけど、こうして着心地を確認するのも、つくり手として大切なことですね。着心地ですか? 軽やかで、さらりと潔くて、気持ちいいですよ!」
松枝小夜子さんの創作のミナモト
きっかけ/絵の具で出せない経糸と緯糸の織色の美しさに惹かれて。
活動年数/独学からはじめて約40年。
転機/夫(哲哉さん)との結婚。
好きな色/藍です!
1956年、熊本市生まれ。1979年、紬縞織(つむぎしまおり)・絣織の人間国宝・宗廣力三(むねひろりきぞう)主宰の郡上(ぐじょう)工芸研究所に入所。1985年に松枝哲哉さんと結婚。2021年、重要無形文化財久留米絣技術保持者 認定。日本工芸会正会員。
松枝小夜子さんの作品と出合うには
工房「藍生庵(らんせいあん)」※予約で見学可能。
住所:福岡県久留米市田主丸町竹野3
電話:0943-72-4377
作品の取り扱いは、東京・銀座「銀座もとじ 和織」(電話:03-3538-7878)ほか。
撮影/篠原宏明 構成/氷川まり子 ※本記事は雑誌『和樂(2015年11月号)』の転載です。