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Fashion&きもの

2024.08.16

モダンな空間とのリンクを楽しむ、洗練された夏の着物スタイル。美容家・石井美保の「和魂美才」vol.5

美容家・石井美保さんが、日本文化と和装の魅力を伝える連載「和魂美才」。今回はブルガリの美意識と日本文化を融合させたラグジュアリーホテル「ブルガリ ホテル 東京」の45階にある「ブルガリ バー」を訪れ、夏の着物スタイルについて聞きました。(聞き手:和樂web編集部)

夏のかしこまった場所へのお呼ばれにも、石井美保さんは着物を選びます。薄黄色の薄物を纏った石井さんが訪れたのは、「ブルガリ ホテル 東京」にある「ブルガリ バー」。モザイク画に彩られたカウンターが印象的な空間は、東京の景色を一望できる2つのルーフトップテラスに囲まれた天空の庭園です。

バースツールなどはイタリアの建築家・デザイナーのアントニオ・チッテリオが「フレックスフォルム」のためにデザインしたもの。特注の「リッツウェル」や、「フォンタナアルテ」のライトなどが心地よく配置されたモダンな空間。

実はスリップ1枚感覚の軽やかさ! 空間になじむ装いも大人のたしなみ

和樂:ブルガリ バーには、以前も訪れたことがあるそうですね。

石井美保(以下、石井):そうなんです。ティラミスがおいしいと聞いてどうしても食べたくて、テラス席でいただきました。

和樂:記録的な暑さが続いていますが、暑すぎる夏の着物選びではどのようなことを意識されていますか。

石井:夏、着物を着ていると「暑くないですか?」と周囲の方が声をかけてくださることがあります。気を使わせてしまわないよう、見た目にも涼しげなものを選ぶようにしています。夏真っ盛りには透け感のある「薄物」。「絽」や「紗」などがありますが、今回は紋紗を選びました。模様を織り出した紗生地で清涼感があり、肌触りもさらりとしてとても気持ちがいいんです。

実は薄物は、皆さんが想像する以上に涼しいんです。帯周り以外は、生地に通気性があるので風が通ると涼やかですし、生地も軽いので、実はスリップ1枚でいるみたいな感覚なんですよ。

和樂:スリップ1枚! 洋服よりも軽やかですね。

バーカウンターの奥には、楽園を表現したガラスモザイクの壁画。石井さんはアースカラーのイエローとリンクした着物をセレクト。

石井:夏の和装といえば浴衣ですが、もとは湯上りに着たものと言われていて、現代でもラフなスタイルです。長襦袢を合わせ着物風に着付ければ、食事会などにも着て行きやすくなりますが、木綿の浴衣は実は涼しくないし、重さもあります。それに対して薄物は、本当にスリップに腹巻きをつけている感覚で着られますから(笑)。きちんと着ると、着物はとても快適なんです。

和樂:その軽やかさ、気になります。色や柄選びで気をつけていることはありますか。

石井:これは夏に限ったことではないのですが、着物は行く先の空間になじむものを選びます。シンプルな空間であれば着物がアクセントになるような色や柄で遊ぶのも素敵ですが、ホテルやバーのようにさまざまなスタイルの方がその空間に溶け込んでいくような場所では、空間を主役に、場所の雰囲気になじむような装いをしたくて。着物はそれだけで目を引くこともありますから。今日は、ブルガリのラグジュアリーでモダンな世界観を楽しみに来られる方の邪魔にならないコーディネイトにしてみました。

夏の日差しに透ける軽やかな美しさは、薄物ならでは。

ワントーンの涼しげな洗練。ブルガリのバッグ&ジュエリーを合わせて

和樂:イエローのワントーンコーディネイトも素敵です。

石井:色数を増やさず、「着物で頑張りました」感が出ないよう、でも地味になりすぎないようなコーディネイトを心がけています。

今回は、バーカウンターの壁のモザイク画やクッションなどにも黄色が使われているので、インテリアとリンクするような淡い黄色を選びました。帯にはやわらかなレモンイエローを。どこかひまわりを思わせる刺繍は和の空間にもモダンな空間にも合うんです。帯締めはレースのような質感に品のいいラメ感のあるものを選んで、夏の光のきらめきを取り入れてみました。

石井さんが選んだ帯は、「美術工芸 啓」の截金紋様をモチーフにした、単衣盛夏用。着物と帯の黄色のワントーンコーデが爽やか。

和樂:そして今日は、バッグとリングもブルガリですね。

石井:着物に洋バッグを合わせるときは、ワンハンドルでかちっとしすぎない小ぶりのものを選んでいます。夏の着物にレザーのバッグは少し重く感じますが、「セルペンティ」コレクションのバッグは、クラシカルなシェブロン柄の生地で軽やかさがあり、アイコニックなスネークヘッドのマグネットクロージャーも程よくアクセントに。実は夏の着物ととても相性がよくて素敵なんです。

ジュエリーは、着物で改まった場所に行く時はあまりつけないのですが、バーのような空間ではワンポイントにリングをつけることも。今日のリングはマザー・オブ・パールとダイヤモンドの組み合わせも品があり、着物にひっかかりにくいデザインも気に入っています。リングの形にリンクさせて銀杏型のかんざしを合わせてみました。

リング 「ディーヴァ ドリーム」¥594,000、バッグ「セルペンティ」¥473,000(ブルガリ ジャパン〈ブルガリ〉)

和樂:時を過ごす場所になじむように、身につけるものをさりげなくリンクさせた着物コーデには知的な品が漂います。石井さんの夏の着物スタイルは、洋装でも参考になりそうですね。

石井:行く場所によっては、その空間や訪れる方々にも気を配りながら引き算のコーディネイトをしたいですね。夏の薄物は本当に軽やかに着られるので、ぜひトライしてみてほしいです。本当にスリップ1枚分ですから(笑)。

後編は、夏の和装のメイクのポイントについてお聞きします。

インタビュー・本文/松田亜子
撮影/岩谷優一(vale)

※掲載の価格表記は税込価格です

問い合わせ

ブルガリ バー
住所:東京都中央区八重洲2-2-1 ブルガリ ホテル 東京 45階
電話:03-6262-3333(代表)
営業時間:12:00~24:00
定休日:なし
公式サイト

ブルガリ ジャパン 0120-030-142

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石井美保

美容家、トータルビューティーサロンRiche代表。深い美容愛とさっぱりした物腰で、幅広い層にファンが多い。自身の経験に基づく美容法とコスメ選びは、常に注目を集めている。
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