走ったり踊ったり、自転車で破いたり……阿部顕嵐の501論
鈴木深(以下、鈴木):今日の着こなしでまず目を奪われたのは、その絶妙に馴染んだデニムです。前回とはまったく違うムードですが、こちらも「リーバイス」501ですよね?

阿部顕嵐(以下、阿部):はい。やっぱり501が大好きなんです。ゆったりしたシルエットが好みなので、少し大きめを選んで、ノンウォッシュのままひたすら履き込んでいます。擦れたり破れたりするたびに直しながら、自分の体に馴染んできた一本ですね。
鈴木:その“直しながら育てていく”感じは、今日の取材で挑戦していただいた金継ぎにも通じますね。
阿部:まさにそのイメージで、今日はこのデニムにしました。手をかけて長く使っていると、本当に自分の一部になっていく感覚があります。

鈴木:確かに。この501はもう他の誰にも再現できない唯一無二。古着を買って「見た目だけダメージ」を楽しむのとはまた違う、“あなたの歴史”が刻まれていますね。
阿部:僕にとっては“特別な一点もの”です。走ったり踊ったり、自転車で破いたり(笑)。その積み重ねで生まれた色落ちが本当に好きなんです。
撮影で着て一目ぼれ。買い取って今もお気に入り「レインメーカー」のブラウス
鈴木:古き良き501に合わせたトップスは、驚きのジェンダーレスなブラウスですね。これはどちらのものですか?

阿部:「レインメーカー」という京都のブランドです。以前撮影で着て気に入り、サンプルを買い取りました。
鈴木:レインメーカー! ストイックな美意識のブランドですよね。素材も仕立ても本当に綺麗。この繊細なムードのブラウスをタフな501に合わせるのが、まさに顕嵐さんらしい“境界線のオシャレ”です。

阿部:メンズとウィメンズ、イタリアンブランドと和アイテム…意外性のある組み合わせを楽しむのが好きなんです。
鈴木:今日も一見シンプルですが、小物の攻め方が絶妙ですね。アクセはイエローゴールド、足元は足袋型のスニーカー…!

阿部:アクセは「クロムハーツ」。ホワイトゴールドより肌になじむイエローゴールドにしました。全身キラキラは苦手なので、ほんの少しだけ華やぎを入れるイメージです。足袋スニーカーは「マルジェラ」。遠目にはシンプルなのに、近くで見ると前衛的、という二面性が好きで。
鈴木深が考える、境界線から生まれる着こなし
今回も阿部顕嵐さんのスタイルは秀逸でした。彼はやはり、テイストMIXの感覚が驚くほど鋭い。最新モードで固めるタイプでも、古着のうんちくを語るタイプでもなく、とにかく自由なのです。

ふと思い出したのは、「あらゆる生命力は境界線から生まれる」という言葉。
和と洋、メンズとウィメンズ、最新とヴィンテージ、攻めと守り──その境界線に立つことで、伸びやかで唯一無二のスタイルが生まれるのだと実感しました。
育てた501に前衛的な足袋スニーカー、ジェンダーレスなブラウス。
そのどれもが“阿部顕嵐らしさ”を語るピースとなり、ひとつの調和を生む。
今日もまた、彼の着こなしから学ぶことがたくさんありました。
写真/篠原宏明 文/鈴木深 構成/給湯流茶道
阿部顕嵐 お知らせ
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2026年1月7日(水)
1st 14:00開場 / 15:00開演
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