『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』展
茶の歴史に燦然と輝く樂焼の初代、長次郎。利休の意を受けた長次郎は、轆轤を一切用いない手捏ねという原始的な手法で、樂茶碗を創出しました。その長次郎を始祖とする樂家450年の名作をスペクタクルに紹介する展覧会が「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」です。
すでに京都国立近代美術館で大好評を博したこの展覧会が、千鳥ヶ淵に桜が咲き乱れる3月、東京国立近代美術館に巡回します。これに先立つこと2年前、本展の元となる企画展が、ロサンゼルス・カウンティ美術館、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館、モスクワのプーシキン美術館で開催され、約19万人を動員しました。
それをパワーアップしたのが本展。公の美術館で26年ぶりに一般公開される初代長次郎作の黒樂茶碗「大黒」をはじめ、重要文化財に指定されている樂焼のほとんどを一挙に公開します。樂家の現当主が「私が生きている間に、二度とこれほどの規模の展覧会は開催できない!」と太鼓判を押すラインナップです。
表千家秘伝の名碗と誉れ高い本作品。特に利休年忌などの重要な行事でしか公開されない。
黒樂茶碗 銘 禿
『初代 長次郎 桃山時代(16世紀)表千家不審菴蔵』
利休がいつも手もとにおいて愛玩したことから、太夫に常に従う少女、「かぶろ」にちなんでつけられた名前という。こんもりとした口まわりがキュート。
ほとんど見る機会の少ない珍品。濃淡のついた多彩な黒の表情がまるで宇宙の銀河のよう。
黒樂茶碗 銘 シコロヒキ
『初代 長次郎 桃山時代(16世紀)裏千家今日庵蔵』
利休の孫、宗旦が名付けた「シコロヒキ」は、平家物語の藤原景清が、源氏方の武将の兜のシコロ(首をおおう部品)を引きちぎったことに由来。利休が所持し、のちに蒲生氏郷の手にわたった。
歴代樂焼の重要文化財のほとんどを一挙公開します
軟陶の楽焼は世界各地でつくられますが、樂家の樂茶碗がほかと異なっている点は、ただひとつ。「一子相伝」を堅く守る希有な存在だというところ。一子相伝とは、秘伝や奥義を自分の子ひとり、もしくは代を継ぐひとりの子にだけ伝え、ほかには秘密にしてもらさないことをいいます。ではその子に詳しく教えるのかといえば、樂家の場合はそれも違う。樂家には、秘技の手引書はまったくありません。ただ一緒に暮らし、茶碗を焼くときに当主の手伝いをするだけ。子は苦悩しながらも、己の表現を創り出すほかないのです。
現在まで十五代続く樂家歴代の作品は、時代と向かい合い、自己と激しく戦った痕跡が残るものばかり。利休に魅力を引き出された長次郎や、その上のステージを目ざした本阿弥光悦、歴代や当代の名品約140点を堪能できる展覧会です。
これも、裏千家秘伝の茶碗。滅多にお目にかかれない。丸みを帯びた腰のカーブが、しとやか。
赤樂茶碗 銘 太郎坊
『初代 長次郎 重要文化財 桃山時代(16世紀) 裏千家今日庵蔵』
頴川美術館蔵の赤樂茶碗「無一物」とともに、数少ない長次郎の初期の赤樂を代表する優品。薄くかけられた釉薬がほとんど失われて、土の素顔を見せる。利休から宗旦、藤村庸軒を経て鴻池家伝来。
歴代の中でも、ひときわ造形力に優れると評判が高い当代。あらたな作品にチャレンジし続けている。
焼貫黒樂茶碗
『十五代 吉左衞門 平成24(2012)年 東京国立近代美術館蔵』
当代の代表作のひとつ。伝統に根ざしながらも現代と対峙する強い力がみなぎっている。焼貫の技法は、黒樂より高い温度で、炎との融合をはかり、複雑な窯変をつくる。とても難しい焼き方だといわれている。
常に革新を目ざした樂焼の魅力がここに!!
会期/2017年3月14日(火)~5月21日(日)
会場/東京国立近代美術館
住所/東京都千代田区北の丸公園3-1 地図
開館時間/10時~17時(金曜は20時) 入館は閉館の30分前まで
休館日/月曜(3月20・27日、4月3日、5月1日は開館)、3月21日。
前売券(3月13日まで)1,200円。当日券1,400円。
●東京国立博物館「茶の湯」展との共通チケットは2展で2,600円(5月21日まで販売)。4月11日~5月21日は2館をつなぐ無料シャトルバスを運行(乗車には展覧会チケットが必要)。