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2017.06.15

森のオアシス、京都の下鴨でより道の旅してみませんか?

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世界遺産の森を歩き、小さな骨董に出合う

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下鴨神社の鎮守、「糺の森」。その語源は「直澄」ともいわれ、清き水の湧く鴨川の水源地として信仰を集めた。今も4つの清流が流れている。

京都御所の北東部。市内を流れる鴨川と高野川(たかのがわ)の間に挟まれた三角地帯が、下鴨エリアです。平安京に都が遷(うつ)るはるか昔から栄えていた地域で、住んでいたのは、山城国の主・賀茂氏(かもし)一族。その氏神であった賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ「通称・下鴨神社」)と鎮守の森が、人々の心の拠(よ)りどころでした。緑が生い茂る「下鴨」から、ふたつの川が合流する「出町柳(でまちやなぎ)」界隈まで、太古の自然と賑わいを感じながら歩いてみましょう。

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縄文の自然が残る鎮守の森。賀茂の神様も歩いたカモ?

スタートは早朝。下鴨神社への参道を囲む史跡「糺(ただす)の森」へ足を踏み入れたとたん、木々の葉をゆらす秋風の音が、頭上から降り注いでくるのを感じます。ここは、縄文時代と同じ植生を保つ3万6千坪の森。足元では、万葉集に歌われた瀬見(せみ)の小川や奈良の小川がキラキラと輝きます。「早起きしてよかった」と心底思う瞬間です。
スクリーンショット 2017-08-08 15.35.47糺の森には、鴨長明も歌に詠んだ「瀬見の小川」が。昔はここを渡ることが祓いとされた
 

参道の奥に見ゆるは、糺の森とともに世界遺産に登録されている下鴨神社……と、その前に、思わず目をひかれたのが「女性守護 日本第一美麗神」の札。下鴨神社の摂社である「河合(かわい)神社」です。手鏡の形をした鏡絵馬に、手持ちの口紅でメークをして奉納。スクリーンショット 2017-08-08 15.38.17美人祈願で人気の「河合神社」。手鏡型の絵馬に、手持ちの化粧品で顔を描いて奉納する

心も顔も美人になあれ、と祈りつつ、下鴨神社の赤い鳥居をくぐります。東西2棟ある本殿は国宝。古代京都を開いたとされる神様・賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)と、縁結びの神である玉依媛命(たまよりひめのみこと)に詣でたら、かわいらしい双葉葵(ふたばあおい)の紋が入ったお守りを手に、社殿を後にします。スクリーンショット 2017-08-08 15.43.08「下鴨神社」で。朱塗りの楼門は重要文化財。すぐ手前には「相生社」という縁結びの社。

スクリーンショット 2017-08-08 15.47.00かつては糺の森に自生していた双葉葵。下鴨神社の神紋として至るところに配されている。

ここでひと息、おやつタイム。目ざすは老舗の果物専門店「ホソカワ」です。ジューシーな旬の果物とふんわり生クリームのフルーツサンドで気持ちも小腹も満たされたら、下鴨本道(しもがもほんどおり)を南へと下りましょう。スクリーンショット 2017-08-08 15.49.12メロンやパパイヤ、苺を挟んだ「フルーツ&カフェ・ホソカワ」のフルーツサンド

下鴨神社の西端にあたる下鴨本通は、門前甘味から話題のブーランジェリーまで、目移り上等、満腹必至。焼きたて団子が絶品の「加茂みたらし茶屋」や、低温長時間発酵の山型食パンが人気の「ナカガワ小麦店」をのぞいたあとは、若い目利き店主が営む自宅ギャラリー「アンティーク&アートMasa」へ。スクリーンショット 2017-08-08 15.51.12店主の自宅で営まれる「アンティーク&アートMasa」。照明や花生けのセンスも参考に。

酢〆めの鯖鮨、みたらし団子。ここが発祥、さすがの旨さ

さて、通りをさらに下った先は、市民の日常を垣間見られる「出町柳」界隈。その入り口にある「出町桝形(でまちますがた)商店街」は、若狭(わかさ)湾と京都を結ぶ鯖街道(さばかいどう)の終着点として知られています。となれば、お昼は当然、創業百余年「満寿形屋(ますがたや)」の鯖鮨(さばずし)です。脂がのった肉厚の鯖をほおばれば、歯ごたえむっちり、味はさっぱり。酢の旨みを上品に効かせたおいしさに、京の食の底力を知る思い。スクリーンショット 2017-08-08 15.54.02出町柳の「満寿形屋」。長崎豊後の新鮮な鯖を絶妙の酢加減で〆めた鮨は、持ち帰りも可能。

何分並んでも食べたい「出町ふたば」の搗きたて豆餅を買ったあとは、鴨川の西岸に位置する「北村美術館」へ。スクリーンショット 2017-08-08 15.56.02「出町ふたば」の豆餅。店内で搗く餅、餡、赤えんどう豆が三位一体

年に2回特別公開される「四君子苑」がお目当てです。風雅な離れの茶室が有名ですが、圧巻は、初代館長北村謹次郎の旧住居。スクリーンショット 2017-08-08 15.57.57「四君子苑」は年2回、春秋に特別公開。

スクリーンショット 2017-08-08 16.00.15東山の緑を借景にした「四君子苑」の茶苑は、国の登録有形文化財。庭には、日本最古の年銘入りと貴重視される13世紀の石灯籠もある。

モダン建築の巨匠、吉田五十八が改築したその建物は、ダイナミックなのに繊細。庭へ向かって伸びやかに広がる空間美に、しびれるばかりです。続けて訪ねたのは古家具店の「やっほ」。ジャンルは違えど、ここでも昭和デザインの凜々しさを改めて実感します。スクリーンショット 2017-08-08 16.03.32古家具店「やっほ」には、普通で使いやすい食器も並ぶ。ぷっくり厚手の白い小皿は沖縄「陶工房spw」のもの。

乙女気分の甘味処「みつばち」で休憩したら、賀茂大橋を渡って下鴨に戻り、韓国家具と骨董の名店「川口美術」へ。スクリーンショット 2017-08-08 16.06.07老若男女に愛されるレトロな甘味処「みつばち」の、抹茶クリーム白玉あんみつ

「ゆらぎのある美しさが、韓国骨董の魅力です」と店主。「でも、本当に惹かれるとき、そこに理由などないのだと思いますよ。心が動いて仕方がない唯一無二の美に出合う。それが骨董の楽しみです」スクリーンショット 2017-08-08 16.08.10温かな陶肌と、どことなくゆらいだ形に心惹かれる。高麗時代の花器は「川口美術」で。

スクリーンショット 2017-08-08 16.09.58店主が韓国で買い付けた骨董が並ぶ「川口美術」1階には陶磁器、2階は家具。民画も扱う

おっとりと優しい言葉を嚙みしめながら、夕暮れの川沿いをぷらぷらと。賀茂大橋からふと遠くを眺めれば、うっすらピンクに染まった北山の景色。これもまたより道の醍醐味。唯一無二の風景です。スクリーンショット 2017-08-08 16.12.49鴨川と高野川が合流する市民の憩いの場、鴨川デルタ。亀や千鳥の形の浮石が並ぶ。