石峰寺
-文/和樂スタッフ渡辺倫明
(通称、和樂の“日本美術部長”。白洲正子、伊藤若冲の記事は毎回担当)-
京都・深草にひっそりと佇(たたず)む「石峰寺」は、江戸時代前期に明から渡来し、日本に黄檗宗(おうばくしゅう)を開いた隠元(いんげん)の孫弟子に当たる千呆禅師(せんがいぜんじ)によって、宝永年間(1704〜1711)に創建された禅宗寺院である。
石峰寺は、由緒正しき禅寺として名高いだけでなく、1791(寛政3)年、75歳となっていた天才絵師・伊藤若冲がこの地に庵を結び、晩年の作画活動を行ったことでもよく知られている。
若冲に所縁(しょえん)の地は、錦小路や代表作「動植綵絵(どうしょくさいえ)」を寄進したことで知られる相国寺など、京都にいくつか存在している。しかし、この寺が若冲ファンにとって特別な場所となっているのは、彼が下絵を描き、亡くなるまでの晩年を費やして石工たちに彫らせた、五百羅漢(ごひゃくらかん)の石像群が今も訪れる人々を待ち構えているかにほかならない。
本堂裏手の竹林に群立する五百羅漢の石像は、釈迦の誕生からはじまり、托鉢(たくはつ)、涅槃(ねはん)、賽(さい)の河原などの名場面を再現したものとなっており、そのどれもが表情や姿勢を異にしているのが興味深い。当初は1000体以上もあったという石像は、現在、530体余が残るのみだが、豊かな表情を見せる仔細(しさい)なつくり込みには、若冲の繊細な感性が垣間見えるようで必見である。
本堂の南には若冲の墓も現存し、命日に当たる9月10日には毎年、若冲忌の法要が営まれ、若冲作の掛け軸が一般に公開されている。
石峰寺
住所/京都市伏見区深草石峰寺山町26 地図
拝観時間/9時~17時
(10月~2月は16時まで)
無休