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2019.03.16

空海ゆかりの名宝が集まった空前絶後の特別展「国宝 東寺ー空海と仏像曼荼羅」

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京都の東寺(教王護国寺)は、真言密教の根本道場として発展し、空海が唐よりもたらした密教の至宝が数多く伝わる仏教美術の宝庫でもあります。その名宝を紹介する特別展「国宝 東寺 空海と仏教曼荼羅」が、3月26日から6月2日まで東京国立博物館で開催されます。

弘法大師空海とは?

讃岐国に生まれ、留学僧(るがくそう)として中国のにわたった空海は、青龍寺の僧・恵果(けいか)に師事。密教の正統な継承者として認められ、真言密教の第八祖となりました。
帰国の際、空海は曼荼羅図や密教法具、経典などを持ち帰り、帰国後は嵯峨天皇より賜った東寺を真言密教の根本道場として密教を広めます。
空海のもたらした名宝のひとつが、現存最古の彩色曼荼羅である国宝『両界曼荼羅図』。曼荼羅というのは、サンスクリット語で本質、神髄、円を意味する言葉を漢字に置き換えた名称で、密教の教えをわかりやすく図式化・ビジュアル化したもの。
この曼荼羅図によって、唐の密教が日本へそのままの形で伝わることになったのです。

「国宝 東寺ー空海と仏像曼荼羅」は、空海ゆかりの名宝が集まった空前絶後の特別展!
『両界曼荼羅図(西院曼荼羅[伝真言院曼荼羅])』 国宝 絹本着色 平安時代・9世紀 左・金剛界185.0×154.0㎝ 右・胎蔵界183.0×154.0㎝ 東寺蔵 ※展示期間:4月23日~5月6日 大日如来を中心にして、如来、菩薩、明王、天などを集合的に描いた両界曼荼羅図。胎蔵界の「理」と金剛界の「智」の一対で密教の宇宙を表している

曼荼羅とは? 立体曼荼羅とは?

曼荼羅は胎蔵界金剛界のふたつが一対となって密教の教えを表現。胎蔵界は密教の経典「大日経」が、金剛界は「金剛頂経」が表わされていて、胎蔵界は「」、金剛界は「」という重要な教えを伝えています。
帰国当初、空海は「密教は奥深く、文章では表し尽くすことができないので、理解できない者たちに絵で示そう」と考え、曼荼羅を重視。それでもまだ難しいと感じる人のために効果的な方法を模索してたどり着いたのが、2D(平面)の曼荼羅図を3D(立体)にするという思い切ったイノベーションでした。
そうして講堂の須弥壇(しゅみだん)に登場させた21尊が「羯磨(かつま)曼荼羅」、一般に「立体曼荼羅」として知られる仏像群です。
その中心には、密教の教えで宇宙そのものである大日如来(だいにちにょらい)と4尊の如来からなる五智如来、両サイドに五大菩薩五大明王を配し、まわりを梵天・帝釈天四天王が守る立体曼荼羅の姿や配置は、曼荼羅をもとに空海が智恵と工夫を重ねた真言密教の宇宙そのものです。
立体曼荼羅はまさに、空海の傑出した英知によってこの世に姿を現した、密教の宇宙そのもの。かつてなかったこの仏像群は平安時代の人々に強烈なインパクトを与え、密教の深遠を伝えることになりました。

「国宝 東寺ー空海と仏像曼荼羅」は、空海ゆかりの名宝が集まった空前絶後の特別展!
特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」チラシ表

特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」が空前絶後のスケールである5つのポイント

1200年にわたって東寺が空海の教えとともに大切に守り伝えてきた歴史と仏教美術の名宝が東京で、空前絶後と言って過言ではないスケールで公開されるのはまさしく稀有なこと! 
そこで、この展覧会の5つの見どころをご紹介します。

その1、立体曼荼羅のうち15尊がほぼ360度ビューで見られる!

密教の仏像の最高峰である全21尊からなる立体曼荼羅のうち、今回は史上最多となる、国宝11尊+重要文化財4尊の計15尊を公開。
中尊である大日如来、金剛波羅蜜菩薩と、不動明王のほか、梵天、多聞天(たもんてん)、広目天(こうもくてん)は東寺講堂にとどまるものの、空海がつくり上げた密教の宇宙を体感するには十二分な内容です。
その上、一部を除いて仏像を前後左右360度ビューで見られのは、特別展だけのスペシャルバージョン。さらに、イケメン仏像として名高い「帝釈天騎象像(たいしゃくてんきぞうぞう)」が登場するのも話題で、密教や仏像に詳しくない人にとっても、興味深い展示内容です。

「国宝 東寺ー空海と仏像曼荼羅」は、空海ゆかりの名宝が集まった空前絶後の特別展!
『仏像曼荼羅イメージ』 東寺蔵 21尊の仏像からなる立体曼荼羅のうち15尊が特別展に登場!

その2、仏像だけではない東寺のマンダラワールドが出現!

密教の世界を図形化した曼荼羅はインドで成立し、布教に適していたことからアジア各地に普及しました。
東寺には両界曼荼羅をはじめとした6件の曼荼羅が伝来。
そのうち、国宝『両界曼荼羅図(西院曼荼羅[伝真言院曼荼羅])』、重要文化財『両界曼荼羅図(敷曼荼羅)』、長さ5m四方もある国内最大級の甲本(展示期間:胎蔵界3月26日~4月7日、金剛界:4月9日~21日)、元禄本(展示期間:胎蔵界5月8日~19日、金剛界5月21日~6月2日)が展示されます。
それに加え、如来や菩薩などの姿形や手で結ぶ印相の細かい規則を図にした重要文化財『蘇悉地儀軌契印図(そしつじぎきけいいんず)』(展示期間:3月26日~4月21日)などの密教美術も数多く、マンダラワールドを体感することができます。

「国宝 東寺ー空海と仏像曼荼羅」は、空海ゆかりの名宝が集まった空前絶後の特別展!
『両界曼荼羅図(敷曼荼羅)』 重要文化財 平安時代・天永3(1112)年 ※展示期間:右・胎蔵界3月26日~4月30日 左・金剛界5月1日~6月2日 密教の戒律や資格を授け、正統な継承者とする灌頂(かんじょう)儀礼では、灌頂を受ける者と縁のある仏を決めるために、曼荼羅に華を投げて当たった仏と縁を結ぶ「投華得仏(とうげとくぶつ)」の儀式が行われる。その際に壇上に敷かれるのが敷曼荼羅。落剥(らくはく)が長い歴史を物語る

その3、東寺の歴史を物語る名宝が大集合!

8世紀の平安京遷都にさかのぼる東寺の歴史は篤い信仰によって紡がれてきました。その歴史を彩ってきた名宝が集結するのも本展ならでは。
古くは平安京の羅城門に安置され、都を守護したと伝わる国宝『兜跋毘沙門天立像』から、空海ゆかりの舎利信仰にまつわる舎利会で用いられた重文『八部衆面』、真言僧として修法の伝授を受けた後宇多天皇の手になる国宝『後宇多天皇宸翰 東寺興隆条々事書(部分)』(展示期間:3月26日~4月30日)、東寺の歴史や宝物についてまとめた国宝『東宝記(とうぼうき)』(展示期間:巻一3月26日~4月30日、巻二5月1日~6月2日)まで、信仰を伝える名宝と対峙すると、感慨もひとしおです。

「国宝 東寺ー空海と仏像曼荼羅」は、空海ゆかりの名宝が集まった空前絶後の特別展!
『兜跋毘沙門天立像(とばつびしゃもんてんりゅうぞう)』 国宝 中国 唐時代・8世紀 東寺蔵 唐でつくられた本像は、腰が高くスリムなスタイルで、毘沙門天像の中では異色の存在。平安京の羅城門が転倒した後に東寺に移されたと伝わる

その4、最も重要な秘密儀式「後七日御修法」の道場を再現!

密教をもたらした空海は、宮中で修する鎮護国家の法会(ほうえ)「後七日御修法(ごしちにちみしほ)」を始めました。
この儀式は現在、東寺灌頂院の道場で行われているのですが、真言宗で最も重要な儀式としてかたく秘されてきました。その道場の様子が今回、展示会場内で再現されるのです。
後七日御修法にまつわる名宝は、空海が師・恵果より授けられた国宝『密教法具』のほか、国宝『十二天像』『五大尊像』の全幅を公開(展示替えあり)。
めったに拝観することのできない貴重な機会となりますので、ぜひともお見逃しのないように。

「国宝 東寺ー空海と仏像曼荼羅」は、空海ゆかりの名宝が集まった空前絶後の特別展!
『密教法具』 国宝 中国 唐時代・9世紀 東寺蔵 金剛盤に五鈷鈴(ごこれい)と五鈷杵(ごこしょ)を据えた『密教法具』は「後七日御修法」での大阿闍梨(だいあじゃり)の最重要な道具。恵果より空海が伝授されたとされ、重要な法会に用いられてきた名宝中の名宝

その5、空海がどれほど多才な人だったのかよくわかる!

空海は三筆に数えられた能書家であり、自身が信仰の対象となるほどの影響を与えた傑物です。
その姿を知らせる重要文化財『弘法大師像(談義本尊)』(展示期間:3月26日~4月21日)のほか、書の歴史に燦然と輝く空海筆の国宝『風信帖』(展示期間:3月26日~4月21日)などを展示。
空海の偉大な功績を知ることができるとともに、東寺を密教の根本道場として繁栄させ、今日まで受け継がれてきたのは、弘法大師空海の存在があったればこそ、ということが理解できることでしょう。

「国宝 東寺ー空海と仏像曼荼羅」は、空海ゆかりの名宝が集まった空前絶後の特別展!
『風信帖(ふうしんじょう)』 空海筆 国宝 平安時代・9世紀 東寺蔵 ※展示期間:3月26日~5月19日 空海が延暦寺の最澄にあてた3通の書状を貼り継いだ本書は、第一通の書き出しが「風信雲書」という文言から始まることから通称『風信帖』。平安時代の仏教のあり様を今に伝える貴重な史料でありかつ、空海壮年期を代表する筆跡として貴重なもの

特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」
東京国立博物館 平成館

会期:3月26日(火)~6月2日(日)
会場:東京国立博物館 平成館 東京都台東区上野公園13-9
開館時間:9:30〜17:00(金・土曜は21:00まで 入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(4月29日、5月6日は開館 4月1日は東寺展会場のみ開館)、5月7日(火)
観覧料/一般1,600円 
問い合わせ先:☎︎03・5777・8600(ハローダイヤル) 公式サイト 

※記事は和樂2019年4・5月号より 文/山本毅