『オルセーのナビ派展:美の預言者―ささやきとざわめき』、『挿絵本の楽しみ~響き合う文字と絵の世界~』、『篠田桃紅 昔日の彼方に』、『HUMAN-ヒューマン―日本画にみる人物表現』どれも会期は終了してしまいましたが、好評の展示会でした。ここでは、その様子を少しだけお見せしたいと思います。
オルセーのナビ派展:美の預言者―ささやきとざわめき
化粧台の前に立つ女性。その表情はなぜか険しく、画面からはどこか不穏な空気が漂ってくる――。19世紀末のパリで前衛的な芸術活動を行ったグループ、ナビ派の中心メンバーであるヴァロットンの、静けさの中に秘密や苦悩、駆け引きや緊迫したドラマが満ちている独特の世界に惹きつけられます。オルセー美術館が誇るナビ派コレクションから、ボナール、ドニ、セリュジエらの名作がそろいました。
フェリックス・ヴァロットン『化粧台の前のミシア』 1898年 デトランプ/厚紙 © RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski/distributed by AMF
挿絵本の楽しみ~響き合う文字と絵の世界~
中国の明・清時代と日本の江戸時代につくられた本の中から、解説書、記録類、物語など、絵の入った挿絵本を選んで、その時代背景とともに紹介。写真の『環海異聞(かんかいいぶん)』は、石巻から江戸に向かった船が難破し、ロシアのアリューシャン列島に漂着、乗組員数名がロシア艦で長崎に帰るという、江戸時代を代表する漂流記。初めて見たロシア人の服装や特徴を解説付きで記した絵がなんともユーモラス。
大槻玄沢撰 『環海異聞』 江戸時代後期(19世紀)写 静嘉堂文庫美術館蔵
篠田桃紅 昔日の彼方に
104歳を迎えてなお旺盛に制作を続ける篠田桃紅(しのだとうこう)の最新個展。旧作の絵画や書に最新作を加えて開催されました。書家であり、墨象(ぼくしょう)と呼ばれる墨の色と線で構成される抽象画で、世界的にも高い評価を受けている芸術家です。『Monument』ほか、100歳を超えてから制作された1m以上の作品からは、研ぎ澄まされた美意識と、たったひとりで紙に向かい続ける覚悟、力強い生命力が感じられ、心打たれます。
篠田桃紅 『Monument』2013年 146.0×98.0㎝
HUMAN-ヒューマン―日本画にみる人物表現
恋人から贈られた扇に見入っている最中、人の気配を感じ、あわてて扇を袂に隠して振り向いた、うぶで可憐な娘の姿をとらえた『娘深雪(むすめみゆき)』。上村松園(うえむらしょうえん)の大正期を代表する作品です。古今東西の画家たちを魅了してやまないモチーフ「人」に焦点を当て、美人画、歴史画、仏画などの名作を展示。横山大観(よこやまたいかん)、鏑木清方(かぶらききよたか)、小林古径(こばやしこけい)、安田靫彦(やすだゆきひこ)といった、近代日本画壇の巨匠らが描いた人間の理想像を楽しめる展示会。
上村松園『娘深雪』大正3 (1914)年 足立美術館蔵