「金沢の見せ惜しみ」という言葉があるのをご存じでしょうか。人に容易に見せることをよしとしない。雪深い風土を表すひとつの言葉かもしれませんが、こうした気質が、金沢の名品を保護する重要な一面を担ってきました。旧家に大切に秘蔵されてきたおかげで、美術品は極めてコンディションのよい美しさを保ってきたといえるのです。そんな金沢の日本美術を楽しめる展覧会が、市内の近接する3美術館で開催中です。伝統とともに歩んできた金沢の美。私たちの心を強く惹きつけて離さない名品を、ぜひご堪能ください。
石川県立美術館
開館35周年記念特別展 美の力
会期:開催中〜2018年5月20日
公式サイト
黒樂茶碗 銘「北野」石川県立美術館
加賀前田家十六代当主・前田利為が設立した財団前田育徳会所蔵の「賢愚経残巻(大聖武)巻第九」「古今集(清輔本)」を含む国宝4点、重要文化財34点など、茶道美術を中心にした逸品140点が一堂に揃います。金沢の個性を通観できる構成で、東京の展覧会でも日ごろ観ることがかなわない秘蔵の作品が、多数出品されます。ほかに俵屋宗達筆の「槙檜図六曲屏風」「狗子図」や長谷川等伯筆の「山水図襖」なども。
重要文化財 備前矢筈口水指 銘「破れ家」北陸大学
俵屋宗達筆「槙檜図六曲屏風」石川県立美術館
金沢21世紀美術館
POWER OF ART
会期:開催中〜2018年5月20日
公式サイト
「古九谷色絵網干蓮弁文大皿」個人蔵
現代アートの展示や市民交流型の企画で、たくさんの来訪者を集める金沢21世紀美術館。その特徴を生かして、本展でも金沢の美学を感じるワールドワイドな芸術作品が揃います。「彩り」「白と黒」「チカラ」「静と動」「愛らし」という5つのテーマでは、蒔絵がマイセンの飾り壺などとともに並び、黒樂茶碗が中国磁州窯の作品や井上有一の書と一緒に陳列。洋の東西を超えて芸術の楽しさを味わえる内容です。
棟方志功筆「風神雷神図」個人蔵
「砧青磁筍花入」個人蔵
金沢市立中村記念美術館
茶事の妙
会期:開催中〜2018年5月20日
公式サイト
重要文化財 大井戸茶碗 銘「筒井筒」個人蔵
金沢の実業家で、茶人だった中村栄俊氏の収蔵品を基にした中村記念美術館。こちらの美術館は優れた茶道具コレクションによって、その名を知られてきました。本展では、訪れた人がまるで茶事に招かれているかのように、待合から炭点前、濃茶、薄茶の茶道具をそれぞれのシーンごとに取り合わせて展示。ひとつひとつの茶道具が、響き合って物語を紡いでいくことを実感できる面白い仕掛けです。
野々村仁清作「色絵菊桐文茶器」金沢市立中村記念美術館
「堆黄龍文盆」個人蔵