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2018.06.07

大阪府・中之島香雪美術館はこんなところ!

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全国個性派美術館への旅、今回ご紹介するのは中之島香雪美術館です。

都会の喧噪からトリップできる静謐な空間で美術品鑑賞

中之島香雪美術館

中之島は、大阪屈指のビジネス街でありながら、美術館や科学館も点在する、文化の発信地としても知られています。2018年3月、この地に新たに「中之島香雪美術館」が誕生しました。1973年に神戸市御影に開館した「香雪美術館」が45周年を迎えたことを記念してつくられたもので、両館の所蔵品は朝日新聞社の創業者である村山龍平が収集した、日本と東アジアの古美術品約400点です。

中之島香雪美術館野々村仁清「色絵忍草文茶碗」江戸時代 17世紀/鮮やかな色絵陶器を完成させた野々村仁清。緑と青の上絵付けで描かれた忍草が印象的な作品

江戸末期・嘉永生まれの村山龍平は、政治議論だけでなく、社会のニュースを報道するなど新しい時代の新聞のあり方を築き、小さな新聞社だった朝日新聞社を、日本を代表する新聞社に育てた人。日本文化に対しても熱い想いを抱き、開国後に美術品が海外へ流出してしまうのを食い止めようと、新聞を通して社会に訴えるとともに、自身も美術品の収集に力を注ぎました。

中之島香雪美術館「稚児大師像」重要文化財 鎌倉時代 13世紀/「夢の中で仏と語らった」という空海の伝説を描いた幻想的な作品

中之島香雪美術館の開館1年目は、記念展として「珠玉の村山コレクション〜愛し、守り、伝えた〜」を、テーマごとに5期にわけて開催。1年をかけて、重要文化財19点を含む村山コレクションを公開していきます。4月28日から行われるのは、第Ⅱ期「美しき金に心をよせて」展。仏や神々を飾り、神聖さを表した“金”の世界をぞんぶんに堪能できる展覧会です。

中之島香雪美術館長谷川等伯「柳橋水車図屏風」(右隻)重要美術品 桃山〜江戸時代・16〜17世紀/美術館の入るツインタワーのもう一方のビル内には大阪屈指の音楽ホールがあり、幅30mという国内最大級の緞帳の原画にこの作品が使われた

なかでも長谷川等伯の「柳橋水車図屏風」は、この期間中にぜひ鑑賞したい、美術館随一の人気作品。宇治川をモチーフに雲や橋には切箔や金砂子が用いられた作品は、まるで工芸作品のような趣です。ほかにも弘法大師空海の幼少の姿を描いた「稚児大師像」に見る繊細な截金の円や、野々村仁清の「色絵忍草文茶碗」で使われている草を縁取った金彩など、美しい金を心ゆくまで鑑賞できます。

中之島香雪美術館

常設展示の見どころは茶室「中之島玄庵」。旧村山家に建つ重要文化財に指定された「玄庵」を、土壁や藁ぶき屋根など、本物と同じ材料を使い細部に至るまで再現したものです。正面の土壁は取り外しができるように設計し、広さや光の取り入れ方など中のしつらえが鑑賞できるようにつくられているのも特徴です。

切り子格子のエントランスに迎えられる、天井高7mという開放感のある館内は、都心のビルの中にあるとは到底思えない空間。街のにぎやかさからトリップできる静かな場所で、質の高い古美術品をじっくり鑑賞してください。

中之島香雪美術館