全国個性派美術館への旅、今回ご紹介するのはヴァンジ彫刻庭園美術館です。
見晴らしのいい美しい丘で、自然と芸術を心ゆくまで鑑賞
富士山の裾野に位置する静岡県長泉町にある「クレマチスの丘」には、3つの美術館とひとつの文学館が点在。そのうちのひとつ「ヴァンジ彫刻庭園美術館」は、イタリアを代表する彫刻家であり、具象彫刻の巨匠としても知られるジュリアーノ・ヴァンジの、世界で唯一の個人美術館です。美術館全体の設計、作品の置き方や照明の当て方にもヴァンジのこだわりが詰まっており、エントランスをくぐり最初に目にする色鮮やかなモザイク壁画にも「美術館に入る前に華やかな気持ちになってほしい」との思いが込められています。
また、敷地内の見晴らしのいい丘や美しいガーデンなど屋外にも、贅沢なスペースを使って彫刻を20点展示。これらは、1995年フィレンツェのフォルテ・ディ・ベルヴェデーレの大回顧展の際に出品された屋外大型彫刻の作品群で、環境との調和がテーマだった’90年代につくられた作品は、丘から望む雄大な自然や庭の花や緑とも見事に溶け合っています。
館内へ入ると雰囲気は一変、6mもの高い天井のコンクリートに囲まれた無機質な空間に、スポットライトで照らされひとつひとつの作品が浮かび上がります。角度によって表情を変えるようにも見えるヴァンジの作品は、人間の多面的な心を表現。静かな空間で対話するように鑑賞できます。
ジュリアーノ・ヴァンジ「説教壇」2002年
2018年10月30日までは、「須田悦弘 ミテクレマチス」展を開催。この場所、この空間と関係づけられたインスタレーション作品のほとんどが新作というのも話題です。須田作品の魅力である、まるで本物のような緻密につくられた細い蔓や薄い葉、精巧で美しい造形は「モンタナ」にも感じられます。
須田悦弘「モンタナ」2018年 木に彩色 © Suda Yoshihiro/Courtesy of Gallery Koyanagi
クレマチスをモチーフにした作品も多く公開。「ミテクレマチス」の展示会名のとおり、クレマチスは作家にとって心惹かれる花であると同時に、併設するガーデンに植えられた250種2000株のクレマチスともリンクした展覧会です。
展覧会では、クレマチスのほかに「睡蓮」や「雑草」も展示。
自然光の降り注ぐ広い空間にそっと咲く作品を鑑賞したあとは、庭に出てクレマチスの花々を見ながら散策するのも素敵な時間でしょう。
美術館内では結婚式を挙げることもでき、ヴァンジの「説教壇」の前で愛を誓う。
美術館や文学館以外にもミュージアムショップ「NOHARA BOOKS」やレストランなども併設した「クレマチスの丘」は、季節ごとに何度でも訪れたい場所です。