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2019.10.31

ゴッホ展の決定版!世界中の名品でゴッホの驚異的な進化を味わおう!【展覧会レポート/ゴッホ展2019】

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ヨーロッパから地球を半周するくらい遠く離れているのに、今日も全国各地で山ほど西洋美術展が開催される極東の最果ての国・日本。特に「上野」という街は本当に凄い。なんせ世界中から名品を集めて巨匠中の巨匠・ゴッホの大規模展を3年連続で開催してしまうのですから。

まさに西洋美術ファンにとっては贅沢すぎる環境にある近年の日本ですが、2019年のゴッホ展もまた、アートファンの期待を裏切らない見事な展示が待っていました。そこで、今回は現在上野の森美術館で開催中の「ゴッホ展」について、様々な角度から注目点を紹介していきたいと思います!

2019年のゴッホ展は何が見どころなのか?

ここ数年、毎年のように上野で大型展が開催され続けているゴッホ展。ゴーギャンとの関係性に着目した「ゴッホとゴーギャン展」(2016-2017/東京都美術館)、ゴッホ作品の日本からの影響を探った「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」(2017-2018/東京都美術館)に続いて、またも上野での開催となりました。

では、今回のゴッホ展には、どのような特色があるのでしょうか?まずは展示の特徴を簡単に見ていきましょう。

10カ国・地域、27か所にわたる所蔵先から上野の森美術館に作品が集結!

本展でまず驚かされるのが、作品のキュレーションの贅沢さ。これまで日本で開催されてきたゴッホ展は、ゴッホの故郷オランダの所蔵作品を中心に構成される傾向にありましたが、今回はどうも様子が違います。ゴッホとハーグ派の重要なコレクションを所蔵するオランダ・ハーグ美術館館長ベンノ・テンペル氏という強力な助っ人が監修に加わったことで、世界10カ国・地域、27か所の所蔵先から作品を借り出すことに成功。イスラエルやスイス、モナコ公国など、非常に珍しい所蔵先からの借用も実現するなど、貴重な作品が出揃っています。

テンペル氏が館長を務めるハーグ美術館。世界でも屈指のゴッホコレクションを所蔵することで有名です。周囲の風景に調和した落ち着いた建物や、それを取り囲む美しい水盤は見事。優れた美術館は建物自体が鑑賞の対象になるんですね。

ちなみに、本展に出品されている作品数は約70点。そのうち半数以上となる約40点がゴッホ作品(これは相当頑張っていると思います!)で、それ以外の約30点もモネ、セザンヌといった巨匠の作品が揃っています。

ゴッホ10年間の画業を俯瞰できる展示

ゴッホが画家として活動したのは、1881年から1890年までのわずか10年間。諸事情により正規の美術教育を修了していないゴッホは、オランダ時代、パリ時代を通して同時代の様々な画家たちと交流を重ねる中で、彼らからの影響を強く受けて自らの作風を大きく変化させていきます。

本展では、ゴッホの各時代の画風を特徴づけるような秀作が初期から晩年まで時系列に沿って展示。オランダでの修行時代に始まり、パリでの印象派と交流した時代、南仏アルルでゴーギャンとの共同生活を送った時代、精神病院で静養していた時代など、最晩年を除く全ての時代がまんべんなく網羅されているのです。

この中で注目してみたいのが、ゴッホの画業における驚くべき進化の早さです。弟テオの献身的なサポートを得て、わずか10年の画業の中で、約850作品もの大量の油彩画を超人的な集中力で描き続けたゴッホですが、画家になると決めて絵を描き始めた時、彼はまだ一介の趣味レベルの日曜画家に過ぎませんでした。

それからわずか10年。日々夢中になって絵画制作に取り組む中で、その作風は劇的に変貌を遂げていきます。

印象主義の手前あたりの作風に落ち着いていたキャリア初期から、亡くなる直前には20世紀前半の潮流を先取りするような表現主義的な画風にまで、短期間のあいだに驚くほどの進化を遂げていたのです。

本展では、ゴッホの画風が驚くべきスピードで変化していった一部始終を、最初期~晩年まで時系列に並べられた作品を通してしっかり体感することができるのです。

左:フィンセント・ファン・ゴッホ「永遠の入口にて」1882年 リトグラフ 個人蔵(クリストフ・ブロッハー博士)/右:フィンセント・ファン・ゴッホ「疲れ果てて」1881年9-10月 鉛筆・ペン・インク・筆・不透明水彩・簀の目紙 P.&N.デ・プール財団蔵

こちらはゴッホの初期作品。「農民」のリアルを捉えて描き出そうとしたゴッホは、日々のギリギリの生活の中で苦悩する農民の姿を好んで描いています。一連のデッサンは、凄く上手いわけではありませんが、切実な農民の苦しむ感情がよく伝わってきます。

フィンセント・ファン・ゴッホ「夕暮れの松の木」1889年12月 油彩、カンヴァス クレラー=ミュラー美術館蔵

そしてこちらが晩年の作品。麦畑で自決する前年、サン=レミの療養所に入院中、発作の起きない平常時に描かれた作品。色彩は豊かになり、太い輪郭線で単純化された造形、カンヴァス上に大きく盛り上がった厚塗りの筆触など、初期とは似ても似つかない強烈な作風へと変遷を遂げました。

ゴッホが交流を持ち、影響を受けた画家たちの作品と比較できる!

さらに本展の優れたところは、単にゴッホ作品を初期から晩年まで並べて作風の変遷をわかりやすくしているだけでなく、各時代においてゴッホが誰からどのような影響を受けて作風を変化させていったのか、一目瞭然でわかるように展示されていることです。時系列という「縦」の比較だけでなく、同時代の画家との「横」の比較も行うことで、ゴッホの画業をより深く味わえるのが本展の最も優れたポイントでした。

アントン・ファン・ラッパルト「ウェスト=テルスヘリングの老婦たちの家」1884年 油彩、カンヴァス ハーグ美術館蔵

たとえば、初期作品において、ゴッホの描く人物像に大きく影響を与えたのが、ゴッホがオランダ時代に約4年間交流したアントン・ファン・ラッパルトの存在です。日本では全く無名の画家ですが、ラッパルトはオランダ時代のゴッホのライバルであり、良き先輩でした。本展で展示されている「ウェスト=テルスヘリングの老婦たちの家」は小品ですが、ゴッホの初期作品に非常に作風が似ています。

左:フィンセント・ファン・ゴッホ「若い農夫の頭部」1884-85年 油彩、カンヴァス へヒト美術館蔵/右:フィンセント・ファン・ゴッホ「農婦の頭部」1885年 油彩、カンヴァス スコットランド・ナショナル・ギャラリー蔵

上記のラッパルトと、こちらのゴッホの作品とを見比べてみましょう。土色をした女性の顔色、色調を押さえた画面、適度に荒れた筆触など、非常に似通っていることがわかりますよね。

左:アドルフ・モンティセリ「陶磁壺の花」1875-78年頃 油彩、板 個人蔵/右:ピエール=オーフュスト・ルノワール「髪を整える浴女」1890年 油彩、カンヴァス モナコ王宮コレクション蔵

続いては、ゴッホ特有の、過剰なほどに盛られた絵の具の「厚塗り」は如何にして誕生したのか?それがわかる比較展示がこちらのモンティセリの作品です。

1886年、ゴッホはパリで画商をしていた弟・テオの家に突然押しかけ、約2年にわたるパリでの居候生活をスタートさせます。このときにゴッホは様々なパリの画家たちと交流を持ちますが、アドルフ・モンティセリの激しい筆使い、分厚いマチエールに感銘を受け、彼の画風を積極的に取り入れていくことになりました。これにより、ゴッホの作品は一気に「厚塗り」の傾向が強くなっていきます。

左:カミーユ・ピサロ「ライ麦畑、グラット=コックの丘、ポントワーズ」1877年 油彩、カンヴァス 静岡県立美術館蔵/右:アルフレッド・シスレー「シュレーヌのセーヌ川」1879年 油彩、カンヴァス イセ文化基金蔵

パリ時代以降のゴッホ作品に起きた変化は「厚塗り」傾向だけではありません。筆触が大胆になり、一気に画面が明るくなっていきました。それは、弟テオから紹介されて知り合った印象派の画家たちの影響でした。本展では、彼が交流したモネ、ルノワール、シスレー、ピサロ、セザンヌといった印象派画家たちの作品が勢揃い。どのゴッホの作品が、どの印象主義作家から影響を受けているのか、それぞれ見比べてみるのも面白いですね。

こうして、モンティセリに加え、印象派の考え方・ノウハウをもあらかた吸収し終えた1888年、ゴッホは画家の理想郷を作ろうと南仏・アルルへの移住を決意します。現在いわゆる私達がパッとみて「あぁ、これはゴッホの作品だな」とすぐにわかるような特徴を備えた作品は、このアルル時代以降に制作された「黄金期」の作品群です。

左:フィンセント・ファン・ゴッホ「麦畑とポピー」1888年 油彩、カンヴァス クレラー=ミュラー美術館蔵/右:フィンセント・ファン・ゴッホ「麦畑」1888年6月 油彩、カンヴァス P.&N.デ・プール財団蔵

こちらがゴッホが南仏・アルル時代に描いた明るく開放的な風景画。高価な絵の具を惜しげもなくガンガン使い、印象派から学んだ「筆触分割」技法を、自らの心象風景を大胆に表現するための手段として換骨奪胎して応用。もうこの時点で唯一無二の個性を確立しかけていますよね。

しかし、ゴッホの成長はこれで止まりませんでした。展覧会では省略されていますが、ゴーギャンとの惨めな共同生活の失敗を経て、彼の作風はいよいよ名作「糸杉」へと結実した最終形態へと進化を遂げていくのです。

その進化は、ぜひ本展の最終展示室で実際にあなた自身の目で見て確認してみて下さい。ゴッホの到達した前人未到の絵画世界があなたを待っています!

「癒やし系ナレーション」杉咲花の音声ガイドもオススメ

僕は展覧会があるとほぼ100%音声ガイドは借りることにしているので、少々ガイドの出来不出来にはうるさいです(笑)

しかし、今回の音声ガイドは文句なく大当たりでした。まず、収録時間は35分と大ボリュームな上、ゴッホの弟・テオに扮した声優・小野賢章がゴッホの残した手紙の内容をドラマ仕立てで語るという斬新な工夫が光りました。

そして、なんといっても良かったのはメインのナビゲーターを務める杉咲花の絶妙な癒やし系ヴォイス。抑制の利いた語り口ですが、決して棒読みではなく、好感の持てるナレーションが素晴らしかったです。

ちなみに、杉咲さんはプレス内覧会に先立って、オープニングイベントにも登場。ゴッホのひまわりをイメージした鮮やかな「黄色」のワンピースでフォトセッションに応じていました。「展示されているゴッホ作品の中では、どれが一番良かったですか」という記者からの質問には、「『麦畑とポピー』が一番印象的でした」と回答。すると、すかさず主催者から同作品の複製画が杉咲さんに手渡されるというサプライズ演出も。ちょうど10月で22歳の誕生日を迎えた杉咲さんに対する粋なバースデープレゼントでした。

絶対見ておきたいゴッホのオススメ作品、独断ベスト5!

野球で例えると「超大物助っ人外人」テンペル氏がキュレーションに全面的に関わったお陰で、代表作からレア作品、初来日作品まで非常に充実したゴッホ作品が揃った本展。そこで、ここでは僕がこれまで3回展覧会を観てきた中で、読者の方に絶対おすすめしたい傑作ベスト5を短評とともにご紹介します!

第5位:色彩とタッチに凄みが加わった「サン=レミの療養院の庭」

左:フィン左:セント・ファン・ゴッホ「サン=レミの療養院の庭」1889年5月 油彩・カンヴァス クレラー=ミュラー美術館蔵/右:フィンセント・ファン・ゴッホ「蔦の絡まる幹」1889年7月 油彩・カンヴァス、クレラー=ミュラー美術館蔵

色彩豊かな厚塗りの点描で、1ストローク1ストローク非常に丁寧に表現された生い茂る草木からは、ゴッホの集中力の凄まじさが伝わってきます。定期的に発作を繰り返した晩年期ではありましたが、発作が起きていない時期は画家として極めて冷徹な目を持ち、研ぎ澄まされた感性で作品に向かい合っていたことがわかる傑作です。ぜひ、近くまで寄って作品から放射される濃厚なエネルギーを感じ取ってみて下さい。

第4位:黄金色に輝くアルルの「麦畑」

フィンセント・ファン・ゴッホ「麦畑」1888年6月 油彩、カンヴァス P.&N.デ・プール財団蔵 © P. & N. de Boer Foundation

南仏の陽光の下、画家たちの集まる幸せなユートピア建設の夢を抱き、多幸感に包まれていたアルル時代に描かれた作品。画面の7割以上を一面に広がる麦畑の黄金色で埋め尽くした作品は、明るく鮮烈なイメージを残しています。よーく見てみると、麦畑の中には「緑」「灰色」「オレンジ」「黄色」「赤」など様々な色が使われており、筆のストロークも風に揺れる穂先を細かく表現していることがわかります。

第3位:叙情的な初期作品「馬車乗り場、ハーグ」

左:フィンセント・ファン・ゴッホ「馬車乗り場、ハーグ」1881-83年 油彩、板の上にカンヴァス ベルン美術館蔵(イェグリ=ハーンローザー財団寄託)/右:フィンセント・ファン・ゴッホ「雨」1882年頃 水彩、ボール紙の上に紙 ハーグ美術館蔵

こちらはゴッホのキャリア最初期の作品。暗くくすんだ空気感の中、画面の中に立ち尽くす人物の顔も描かれていません。おそらく技法的にはまだまだ日曜画家レベルなのでしょうが、画面から漂う妙な哀愁や寂寥感に惹かれました。また、最初期の作品は画材を買うお金がなかったのか、「板」や「ボール紙」など様々な支持体に描かれているのも要注目。

第2位:晩年の静物画の大傑作!「薔薇」

フィンセント・ファン・ゴッホ「薔薇」1890年5月 油彩、カンヴァス ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵 © National Gallery of Art,Washington Gift of Pamela Harriman in memory of W. Averell Harriman

ゴッホが「サン=レミ」の療養所を出所する直前に描かれたとされる本作。生涯、150点以上を描いたゴッホの静物画の中でももっとも画面が大きく色使いが美しい作品の一つ。満開の薔薇は、ひとつひとつ微妙に色合いや形状の変化をつけて丁寧に描かれていますし、背景の独特なうねりのある空気感や、少し歪んだ花瓶なども鑑賞ポイントです。

第1位:絵の具が生き物のようにうねる名作「糸杉」

フィンセント・ファン・ゴッホ「糸杉」1889年6月 油彩、カンヴァス メトロポリタン美術館蔵

そして、やはりいちばんのオススメは、本展のチラシ画像としても使われている「糸杉」です。ゴッホ独自の点描表現が進化し、厚塗りでうねりまくるストロークは、ゴッホ自身の内面から溢れ出るエネルギーがカンヴァスにそのまま放射されたかのようです。糸杉は、墓場に植えられることが多いことから一般的に「死」の象徴とされますが、その黒々と縦に伸びる形状に魅了されたゴッホは、3作品の糸杉を描きました。

意外な注目点は「ハーグ派の作家たち」

左:ヨゼフ・イスラエルス「貧しい人々の暮らし」1903年頃 油彩、カンヴァス ハーグ美術館蔵/右:ヨゼフ・イスラエルス「縫い物をする若い女」1880年頃 油彩、カンヴァス ハーグ美術館蔵

ゴッホ作品以外にどうしても最後に推しておきたいのが、ゴッホがオランダでの修行時代、彼らと直接交流する中で大きく影響を受けたオランダ・ハーグ派の作品群。ハーグ派とは、1870年~1900年頃にオランダ南西部・ハーグを中心に活動した画家たちのグループで、オランダ特有の地形や気候の中で、農村や水辺を観察した風景画や素朴で静謐な室内画を好んで描きました。

本展では、ハーグ美術館の所蔵品から選りすぐったハーグ派の素晴らしい作品群が集結。日本には滅多に上陸しない「知られざる」凄腕画家たちの傑作を味わうことができます。

何人か簡単に紹介しておきますね。

アントン・マウフェ

左:アントン・マウフェ「雪の中の羊飼いと羊の群れ」1887-88年 油彩、カンヴァス ハーグ美術館蔵/右:アントン・マウフェ「4頭の曳き馬」制作年不詳 油彩、板 ハーグ美術館蔵

ゴッホの従兄弟でもあったアントン・マウフェ。馬や羊など動物のいる叙情的な風景画を得意としており、当時すでに人気作家だったマウフェから、ゴッホは画家としての基礎を学びました。先日まで開催されていた「バレル・コレクション展」では、「アントン・モーヴ」と表記されていましたね。

マティス・マリス

左:マティス・マリス「デ・オールスプロング(水源)」オーステルベークの森の風景 1860年頃 油彩、紙 ハーグ美術館蔵/右:マティス・マリス「ウォルフヘーゼ近くの羊小屋」 1860年頃 油彩、板の上に紙 ハーグ美術館蔵

兄ヤコプ・マリス、弟ヴィレム・マリスとともに3兄弟それぞれ微妙に異なる画風でハーグ派の中核メンバーとして活躍したマリス兄弟。本展では、特にマティス・マリスの作品が充実しています。黄褐色に染め上げられた土臭い田舎の素朴な風景画を、ゴッホは高く評価していたといいます。

ヤン・ヘンドリック・ウェイセンブルフ

ヤン・ヘンドリック・ウェイセンブルフ「黄褐色の帆の船」1875年頃 油彩、カンヴァス ハーグ美術館蔵

オランダで伝統的に風景画のモチーフとして好まれてきた海景や水辺を描くことを得意としたウェイセンブルフ。17世紀オランダ絵画よりも筆触は粗く、明るい色調で物体の輪郭線もあいまいに捉えられており、印象派に非常によく似た作風。画面から漂う叙情的で静謐な雰囲気が素晴らしかったです。

アルベルト・ヌーハイス

左:ベルナルデュス・ブロンメルス「室内」1872年 油彩、カンヴァス ハーグ美術館蔵/右:アルベルト・ヌーハイス「ドレンテの家の中」1894年 油彩・カンヴァス ハーグ美術館蔵

農村での素朴な暮らしぶりが捉えられた室内画。とはいえ悲壮感や貧しさ由来の惨めさは感じられず、質素な日常生活の中に素朴な温かみが感じられる落ち着いた作風は、見ていてジワジワと良さが伝わってきます。

ヨゼフ・イスラエルス

左:ヨゼフ・イスラエルス「貧しい人々の暮らし」1903年頃 油彩、カンヴァス ハーグ美術館蔵/右:ヨゼフ・イスラエルス「縫い物をする若い女」1880年頃 油彩、カンヴァス ハーグ美術館蔵

そして本展のハーグ派作家群の中でも展示コーナーの最後に真打ちとして登場するのがイスラエルス。展示では、海辺で働く漁師や貧しい農民の働く姿、室内で家事をする女性などイスラエルスが得意としたモチーフを描いた作品が並んでいます。大胆な筆触で農民や漁民のリアルな生活風景を写実的に捉え、寂寥感漂う作品からフェルメールのような暖かい静謐さに包まれた作品まで、非常に見応えがありました。

多様な作品でゴッホの新たな魅力を味わおう!

2019年のゴッホ展は、ゴッホの画業を最初期から晩年期まで一気に楽しめるだけでなく、ゴッホのオランダ時代の画家仲間「ハーグ派」の高品質な作品も味わえるぜいたくな展覧会となりました。また、展覧会の解説パネルや音声ガイドでは、ゴッホと弟・テオの間でやり取りされた書簡なども多く引用され、展覧会場を巡るうちにゴッホの自伝を読んでいるような気分も味わえます。ぜひ、本展でまだ見知らぬゴッホの新たな魅力と出会ってみてくださいね。

展覧会基本情報

展覧会名:ゴッホ展
会期:2019年10月11日~2020年1月13日
会場:上野の森美術館(〒110-0007 東京都台東区上野公園1-2)
展覧会公式HP:https://go-go-gogh.jp/

書いた人

サラリーマン生活に疲れ、40歳で突如会社を退職。日々の始末書提出で鍛えた長文作成能力を活かし、ブログ一本で生活をしてみようと思い立って3年。主夫業をこなす傍ら、美術館・博物館の面白さにハマり、子供と共に全国の展覧会に出没しては10000字オーバーの長文まとめ記事を嬉々として書き散らしている。