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2019.09.13

見よ、この肉体美!「金剛力士立像」7つのポイントから日本彫刻界最高峰の技術を紐解く

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日本彫刻界の最高峰であり、今なお高い評価を受けているのが鎌倉時代に活躍した運慶(うんけい)をはじめとした慶派(けいは)の仏師たちです。慶派の仏像には、大きく7つの特徴が。慶派の仏師がこぞって参加した同派の金字塔、「金剛力士立像」2体を例にとってご紹介します。

「金剛力士立像」で知る、慶派の特徴

金剛力士立像【左】運慶・快慶「金剛力士立像 阿形」木造、彩色 高さ836.3㎝ 建仁3(1203)年 東大寺 【右】湛慶・定覚「金剛力士立像 吽形」木造、彩色 高さ842.3㎝ 建仁3(1203)年 東大寺 写真ともに/公益財団法人美術院

1.見るからに恐ろしい憤怒の表情

金剛力士立像

慶派の棟梁・運慶は終生、「生身(しょうじん)の仏」を求め、リアルな表現を追い求めたとされています。金剛力士の内面を見事に表した憤怒(ふんぬ)の表情をはじめ、慶派の仏像の表情は今にも何か語り始めそうなほどです。

2.筋肉隆々の圧倒的な肉体表現

金剛力士立像

実際に生きているかのような肉体表現を追求しながら、人間とは異なる超常的な動きを表しているところが、慶派ならではの肉体表現。いわゆるマッチョとは違う、神々しさがただよいます。

3.軽やかに流れる腰布までリアル

金剛力士立像

腰布の流れや体のまわりにひるがえる天衣(てんね)が、軽やかで自然なところは、慶派ならでは。特に「阿形(あぎょう)」の腰布や天衣は装飾的で、繊細で優美な作風を得意とした快慶の特徴がよく表れています。

4.木彫技術の粋を集めた寄木造

平安時代の仏師・定朝が完成した寄木造(よせぎづくり)は、一木造(いちぼくづくり)よりも大きな像をつくるのに適し、分業による大量制作も可能にしました。慶派の活躍は寄木造によるところが大きく、金剛力士像はその傑作です。

5.力強さを表す、誇張したポーズ

バランスのいい「阿形」にくらべると、「吽形(うんぎょう)」のポーズは腰を左に大きくひねり、右手のあげ方は不自然で、誇張が大きい。慶派はリアルな中にも迫力ある造形を意識していたということです。

6.グループによる分業で仏像制作

慶派の仏像は寄木造が主で、工房として分業制を敷いて造像を行っていました。それによって、南都復興の時期に多くの仏像を短期のうちにつくり上げることができたとされています。作者未詳の作品が多い理由も、そのためだと考えられます。

7.「玉眼」(金剛力士立像は、例外的に不使用)

リアルを求めた慶派は、奈良仏師によって始められた、水晶を用いた玉眼(ぎょくがん)の技法を多用しました。運慶は仏像によって玉眼の色を使い分けており、さすがに8m超の金剛力士立像には使われていません。

金剛力士立像口を開いた「阿形」はおもに快慶が鑿をふるったものとされ、運慶は監督という立場であった。迫力では「吽形」に譲るものの、バランスの取れた姿勢やリアルな表現は、さすが快慶! 口を結んだ「吽形」は、棟梁の運慶の指導を仰ぎ、弟・定覚と子・湛慶が中心となって制作。頭が大きいのは下から見上げることを想定したもので、わずか2か月で完成したことにも驚かされる。

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