2019年4月にSNSで約5万件のリツイートと17万5千件を超える「いいね」を集めたアートユニット・現代美術二等兵考案の「缶詰リング」が、2019年8月に発売しました。缶詰リングは、マルハニチロ株式会社の缶詰をリアルに再現した「缶詰リングコレクション」として、株式会社いきもんが製作。缶詰売り場でよく見かけるサケ缶やズワイガニ缶など全6種がラインアップされました。
発案した現代美術二等兵のふじわらかつひとさんと、商品化したトイメーカー・株式会社いきもんに缶詰リング商品化までの経緯を伺いました。
「誰もが想像する缶詰」であること
――今回発売された缶詰リングはリメイク版で、2007年の展示会に出品された「カニ缶リング」が初出だそうですが、まずカニ缶をリングにしようと思われたきっかけを教えてください。
ふじわら:現代美術二等兵はいろいろな作品をつくり、毎年展覧会で発表しています。2007年の個展のテーマが「カニ」で、カニ缶リングはテーマを元に数点作った作品の内の一つでした。きっかけは、「カニの缶詰を小さくしたら、指輪みたいになるなぁ」くらいのゆるい動機です。
――2019年4月にSNSにアップされたカニ缶リングのリメイクとなる2種類の缶詰リングのモチーフは、お店にある缶詰売り場を見回して、特に「みんなが知っている缶詰らしい缶詰」だと思うものを選ばれたそうですね。よく知られているデザインを選ぶことは、脱力系ユーモアの世界観を構築する“駄美術”を制作する上で重要でしょうか?
ふじわら:「人が思うスタンダードなイメージ」は非常に気にしますね。お題の部分が独りよがりになってしまうと、アレンジが伝わらなくなってしまいますから。
――SNSで反響を呼んだ、この2種類の缶詰リングは、2007年から結構な年月を経ての発表となっています。どのような経緯で再制作、発表へと至ったのでしょうか?
ふじわら:今年のゴールデンウィークに金沢で大規模な個展があって、数多くの作品を展示する必要があったため、過去に制作した作品の中からすでに手元にないもの、技術や材料の関係で完成度に納得できていなかったものを数点、再制作しました。缶詰リングはその内の一つです。
以前はSNSを使っていなかったのですが、最近はホームページやSNSにも作品をアップしていて、個展の告知もかねてSNSに缶詰リングの画像をアップしたんです。
――以前は展示会場でしか見られなかった作品をSNSに掲載したところ、これだけの反応が来た、と。告知としても大成功ですよね。
投稿した作品が話題になってから、すぐに株式会社いきもんさんから話が来て、あとはとんとん拍子に製品化の話が進んだそうですね。カプセルトイ版の缶詰6種類はどのような基準で選ばれたのでしょうか? やはり、今もブームが続くサバ缶は外せないでしょうか?
ふじわら:マルハニチロさんに許諾をいただいてから、私といきもんさん、マルハニチロさんで缶詰の希望を出し、すり合わせていきました。選ぶ基準にしたのは3点。缶詰と言えば誰もが想像するような商品であること、並べた時のバラエティ感、小さくなった時のかわいらしさに着目しました。
マルハニチロさんの商品はすべて候補でしたが、サバ缶ブームの事は正直意識していませんでしたね。ちなみに僕が個人的によく食べている「さけ中骨水煮」は今回の選から漏れました。
――(笑) では、「さけ中骨水煮」ファンのふじわらさんが思う、マルハニチロの缶詰のデザインの魅力とはなんでしょうか?
ふじわら:例えば「あけぼの さけ」の紅白のデザインは昔からなじみがありますよね。「缶詰」と言えばまず、思い浮かぶデザインだと思います。
「パロディー」にせず、オフィシャルにした方が面白い
カプセル玩具メーカーの株式会社いきもんの長澤さんに、どのように缶詰リングを商品化していったのかを伺いました。
――SNSの投稿が話題になってから、ふじわらさんにお声がけしたのはすぐだったそうですね。
長澤:はい。現代美術二等兵さんとは以前からお付き合いがありましたし、面白そうな作品がアップされ、SNS上で話題になっていましたので、すぐにご連絡しました。
マルハニチロさん公式の方が面白いと思ったので、正式にライセンスを取得しました。メーカーが販売している食品を、商品名を少しだけ変えるいわゆる「パロディー商品」よりも、精巧に作る方が弊社らしいものになると思いましたので。
――よくありますよね。「あ、あの商品が小さくなってストラップに!」と思って見ると、名前が少し違うという(笑)
長澤:ガチャガチャ業界ではおなじみですね…(笑) 缶詰リングは製作過程でマルハニチロさんに何度もご確認いただきながら、精巧にミニチュア化しています。
――どのような内容を確認されたんですか?
長澤:実際の缶詰をそのまま縮小するように比率を保持してリングにしていったのですが、缶詰の種類によって縦横比の割合が異なるため、たびたびサイズを調整しました。缶のラベルのデータをマルハニチロさんからお借りして、色味やサイズ感をギリギリまで調整して、確認していただきました。
またメッキ塗装の色も、金の色味が濃いもの、薄いもの、ツヤのあるもの、光沢を落としたものなど、数パターンご提案してその中から選んでいただきました。
――缶詰リングは、缶の素材感をリアルに再現されたそうですね。
長澤:メッキだけでなく素材自体にも金属を使っているので、缶詰らしさを出しつつ、アクセサリーとしても遜色ない質感に仕上がっていると思います。
缶詰リングは、金型を使い金属を流し込むダイキャスト製にすることで、缶詰としての金属感や指輪としての金属感をより感じられるものにしているのだとか。
ミニチュアとしての精度の高さも注目の缶詰リングは、全国のゲームセンター、家電量販店、東急ハンズ、TSUTAYAなどのガチャガチャコーナーに順次登場予定。豊洲にあるマルハニチロさんのアンテナショップ「マルハニチロプラザ」に設置され、こちらなら確実に手に入れることができるそうです。
精巧であればあるほど、缶詰を指にはめる可笑しさや喜びもひとしおですよね。チェーンが付属しているので、リアルなミニチュアとしてバッグなどに付けても楽しめますよ!
【プロフィール】
現代美術二等兵
籠谷シェーン・ふじわらかつひとからなるアートユニット。「ぐれだるま」「こけしアレー」「ナスカの夏、ペルーの夏」など、現代美術にクスッと笑えるスパイスを加えた“駄美術”を制作。ユニットではあるが、作品は共同でひとつのものを作るのではなく、それぞれが制作し、 展覧会時に持ち寄るソロ二人組み形式。
公式URL:
現代美術二等兵 | ホームページ駄美術手帖
http://www.g-b-2.net/gb2/
現代美術二等兵ふじわらさんツイッターアカウント
https://twitter.com/f2touhey
いきもん公式ツイッターアカウント
https://twitter.com/ntc_ikimon?lang=ja