西洋の機械式時計は使い物にならなかった?!
日本に初めて時計が輸入されたのは、記録によると1551年、キリスト教の布教にやってきたフランシスコ・ザビエルがもたらしたとされています。その後次々に来日した宣教師たちは、天文機器などとともに時計の製作技術ももたらしました。初めて見る機械式時計に、好奇心旺盛な人々は胸を高鳴らせたに違いありません。が、ここには一つ重大な問題がありました。西洋の機械式時計には、実用性がないのです。当時西洋では、すでに現代と同じ1日24時間の定時法が採用されていましたが、日本ではそれとは全く違った「不定時法」という方法で時間を数えていたからです。
複雑至極な時間の進み方、不定時法とは?
現在の世界基準である定時法では、1日は24時間と決まっており、1時間の長さも均等ですが、不定時法では違います。不定時法では、まず一日を昼と夜に分けます。そしてそれぞれを6分割し、1日12刻とします。昼夜の切り替えの基準となるのは夜明けの「明六つ」と、黄昏時の「暮六つ」。明六つが一日の始まりで、時間が進むとそこから5つ、4つ、と下っていき、4の次はなぜかいきなり9に飛びます。それからまた8つ、7つ、と下って暮六つになると夜の始まりです。なぜ数字を足すのではなく引くのか、なぜ基準が6なのか、なぜ1〜6ではなく、4〜9にしてしまったのか、いろいろとツッコミどころはあります。
また、十二支を使って一日を12刻に分ける呼び方もあります。この場合は、一刻をさらに四等分して、「牛一つ」「牛二つ」と呼びました。有名な「草木も眠る丑三つ時」とは、現在の午前2時〜2時半くらいのことをいいます。
さて、複雑なのは時の呼び方だけではありません。当然、昼と夜の長さは季節によって違います。ですから不定時法では、同じ一刻でも冬は夜が長くて昼が短く、逆に夏は昼が長くて夜が短いのです。
夏至と冬至の時間配分(大名時計博物館)