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2019.08.27

漆器の手入れと洗い方まとめ。上手に使えば一生使える!

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「漆の器を購入してみたものの、お手入れのやりかたが分からない」そんな初めて漆器を使う方へ、取り扱い方法や洗うときの注意点など、最初に知っておきたい基礎知識をご紹介します。

漆器(しっき)とは?

「漆器」とは、文字通り漆(うるし)のほどこされた器(うつわ)のこと。漆器は、器の原型となる「素地」と仕上げに使われる「塗料」の2つで主に構成されています。素地に使われるのは、桜や欅(けやき)などの木のほか、合成樹脂、樹脂に木の粉を混ぜたものなど。木製の漆器は手にしたときに熱くならず、割れづらいのが特徴です。一方、樹脂でつくられた漆器は割れやすかったり漆が剥がれやすいこともあります。
また、塗料で使われるのは天然漆のほか、ウレタンなどで漆の質感を模した物もあります。塗料を塗る回数でも価格も変化します。作業工程は最低でも4、5回。多いものだと50回以上の工程があります。

そもそも「漆(うるし)」とは?

いわゆる漆器などで意味する「漆」は、漆の木から採った樹液のこと。10年以上の歳月をかけて漆の木を育てたあと、1本の漆の木から採取できる量は、たった200mlほどと言われている大変希少な素材です。
その歴史は大変古くからあり、日本で出土した最古の漆器は縄文時代のもの。中には12000年以上前の漆の木の欠片もみつかっています。現代まで「漆」が受け継がれているのは、その希少性だけでなく、道具をより丈夫に美しく仕立てる特性のため。いにしえから伝わる知恵の凝縮された「漆」の道具、現代において使うにはいくつか注意したいポイントがあります。

ちなみに…筆者が最近購入したのは、杉田明彦さんの黒色の漆のお椀。欅の木に古道具のようなニュアンスがあるベンガラ仕上げ。薄い口に対して高台は厚みがあり、上品な佇まいと持ちやすさを兼ね備えています。

漆器を残していくことは、日本人の生き方を残していくこと

縄文時代から塗料や接着剤として使われていた漆。丈夫でどんな材質にも活用できる漆の優れた特性は、蒔絵や沈金(ちんきん)といった多様な装飾を生みました。海を渡った漆器はその独特な艶で人々を魅了し、英語でJAPANと呼ばれるほど。

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輪島の漆芸家・小森邦衛さんの作品

近代の漆芸史を語る上で欠かせない漆芸家に、松田権六(まつだごんろく)さん【1896〜1986】がいます。蒔絵が専門で『漆の神様』と呼ばれながらも、日本の漆の行く末を案じ、漆椀を収集。その研究を後世に残しました。

國寶や美術品といふものも結構ではあるが、漆の特徴を最も良く生かしてゐるものは、木偏の椀を措いて他にないと確信してゐる。漆のお椀が今の家庭の食卓からだんだん姿を消すのでなく、國民の一人一人が汁椀を使ふようになってもらはねばならない。

【『漆椀百選』 荒川浩和編著 「序 お椀を語る」 松田権六著】

軽い、強い、冷めない、口あたりがよい。漆椀のよさを挙げればきりがありません。作者のわかる漆器を求めれば、修理がきくし、次の世代に渡しても塗り直しを頼むことができます。まずは銘々の漆椀を毎日の食卓に。漆器を残していくことは、日本人の生き方を残していくことなのです。

漆が特に苦手なものは、乾燥。

さて、漆器と聞くと「お客さまのための特別なときに使うもの」と思われがちですが、実は日常的に使った方がツヤが出てより美しくなるもの。逆に長い期間、戸棚にしまいこむとカビや乾燥で、漆器がダメージを受ける可能性があるのです。ここからは、日常的に長く使うために覚えておきたい「洗い方」を紹介します。

漆器の洗い方と乾燥方法

漆器は陶磁器に比べてやわらかい素材のため、たわしなどで洗うことはNG。他の食器との接触にも気をつけて、やわらかいスポンジで洗いましょう。少量の台所用洗剤を使っても問題ありませんが、長時間のつけおきや食器洗浄器や乾燥機は傷やダメージの原因になるので、使わないことをおすすめします。

漆器を洗ったら、乾く前に拭く

気をつける点は、洗い終わったあと。漆器は湿度を嫌うため、自然乾燥を待つ前に、ふきんで拭いてあげましょう。

高台のまわりやお椀の底などは水がたまりやすいので注意。

戸棚にしまうときの注意点は? 漆器の保管方法

直射日光を避けて、戸棚にしまいましょう。重ねて収納する場合は、傷に注意。陶磁器を下に置くように重ねて、それでも気になる場合は、器の間にガーゼなどをはさみましょう。

漆器がカビてしまった場合は?

白カビの場合は、消毒液をふくませたガーゼなどで拭き取り、洗えば問題ありません。ただし、青カビや黒カビなど器の繊維に入り込むタイプのカビは、一度発生すると落ちないので要注意。漆器を長期間使わない場合は、ときどき戸棚から出したり、陰干しして湿気を吸わせましょう。

漆器を使うときの注意点 Q&A

Q.熱いスープを入れても大丈夫?

A.沸騰したお湯など高温のものを突然注ぐと、漆の塗りが白色に変色してしまう場合があります。同じように強い直射日光によってシミができてしまうことも。熱いスープを注ぐ際など、急激な温度変化を避けるときは、一度ぬるま湯につけてから漆器を使うと安心です。

Q.揚げ物や酢の物を盛ってもOK?

基本的にどちらを入れても大丈夫です。お酒などをいただく場合も問題ありません。ただし、保存容器として長く入れたままにすると傷むことが考えられるので、できるだけ避けた方がよいでしょう。

Q.電子レンジ・食洗機は使っても大丈夫?

直火、電子レンジ、オーブンはNG。また、冷蔵庫に入れると乾燥によりヒビが入ることも。

Q.漆器を避けたほうが良い料理は?

A.100度を超えるような料理のほかは、特に避けるべき料理はありません。汁物だけでなく、飯物やおひたし、揚げ物、お刺身、蕎麦、美しい佇まいにあわせて自由な発想で組み合わせをお楽しみいただけます。

漆器は生きている道具

こうして見ると、漆器をあつかう上で注意するべき点は、やさしく洗うこと、乾燥に注意すること、超高温を避けること。人間が嫌うことを避けていれば基本的にはOK。扱いは、そんなにむずかしくありません。漆器と聞くと、普段使いから少し離れた非日常的なシーンをイメージしますが、実は、使う人の生活とともに育つ「生きている道具」なのです。そう思うと、ハードルもぐっと下がって、毎日使うたびに愛着も湧きます。陶磁器に盛られた料理のなかに、漆器がひとつでもあると食卓がきりっとしまるし、手にしたときのなめらかな触感は陶磁器とは違った喜びがあります。これから漆器を購入される方は、ほんの少しだけ扱いに注意しながら、ちょっとずつ育てていく気持ちで漆器を使ってみてください。

参考文献:会津漆器協同組合Webサイト日本特用林産振興会

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