Craft
2019.05.25

中国陶磁、マイセン、大倉陶園。才色兼備の陶磁器に出合える展覧会3選

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2019年夏、決して見逃すことのできない陶磁器の展覧会!

食事やお茶など、毎日、何らかの形で使っている陶磁器。世界の中でも日本ほど、さまざまな形や色、材質の陶磁器を用いている国はないのではないでしょうか。

そんな陶磁器の中でも世界有数の美しさで知られる作品に注目した展覧会が、大阪・中之島香雪美術館の「茶席を彩る中国のやきもの」(5月25日~8月4日)、東京・渋谷区立松濤美術館の「華めく洋食器 大倉陶園100 年の歴史と文化」(6月8日~7月28日)、東京・パナソニック汐留美術館の「マイセン動物園展」(7月6日~9月23日)。

繊細な絵付けや装飾でハイクラスを魅了した陶磁器の美しさを、この機会にぜひ堪能したいものです!

唐物の名宝が一堂に会する、
中之島香雪美術館「茶席を彩る中国のやきもの」

朝日新聞社の創業者である村山龍平は、美術品を収集し茶の湯に傾倒していくなかで、茶会で使用するための茶器や懐石道具を集めました。
その中には、鎌倉時代から近代にかけて日本へもたらされた中国のやきものが、少なからず含まれていました。

中世以来の貿易陶磁史の縮図のような、村山コレクションの中国陶磁

本展では、室町時代に舶来の茶器として珍重された天目茶碗や青磁の花入、明時代末期の景徳鎮窯で制作された「古染付(こそめつけ)」「祥瑞(しょんずい)」とよばれる鉢や皿など、茶席に彩(いろどり)を添える中国陶磁約100点が紹介されます。

特に注目されるのが、これまで公開される機会が極めて少なかった建窯「油滴天目」や大正時代に刊行された豪華茶道具図録に掲載されて以降100年近く秘蔵されていた吉州窯「梅花天目」の茶碗をはじめ、室町時代後期の記録に登場する唐物「肩衝茶入 銘 薬師院」、江戸時代後期に「番付」がつくられるほど人気が高まった香合など、形や文様ともに幅広いバリエーションとなっています。

展覧会情報

 
名称 茶席を彩る中国のやきもの
会期 2019年5月25日(土)~8月4日(日)
会場 中之島香雪美術館 大阪府大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト4階
休館日 月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
開催時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
料金 一般 900円、高大生 500円、小中生 200円
公式サイト

近代の洋食器の歴史がわかる!
渋谷区立松濤美術館「華めく洋食器 大倉陶園100年の歴史と文化」

1919(大正8)年に大倉孫兵衛、和親父子によって創設された大倉陶園は、日本を代表する洋食器メーカーとして、今日まで世界に誇る製品を生み出し続けてきました。
「良きが上にも良きものを」の理念のもと生産された磁器は、フランスのセーブルやドイツのマイセンなどの名窯にも比肩すると高く評価されています。

日本の洋風文化発展の一翼を担った大倉陶園

品格を備えたその洋食器は、皇室をはじめ、数多くの文化人や財界人に愛されたほか、老
舗ホテルやレストランでも供され、日本の洋風文化の一翼を担ってきました。
本展では、大倉陶園の草創期から現在までの作品を通じ、その優れたデザインや品質が紹介されるとともに、日本の洋食器文化において倉陶園が果たしてきた役割を探ります。
また、最新の調査結果を反映し、これまで知られることのなかった創業当時の様子を伝える資料も併せて展示されます。

展覧会情報

名称 華めく洋食器 大倉陶園100年の歴史と文化
会期 2019年6月8日(土)~7月28日(日) ※会期中展示替えがあり
会場 渋谷区立松濤美術館 東京都渋谷区松濤2-14-14
開館時間 10:00~18:00(金曜のみ20:00まで)
休館日 月曜(7月15日は開館)、7月16日(火)
入館料 一般500円、大学生400円、高校生・60歳以上250円、小中学生100円
公式サイト

世界に冠たるブランドのかわいい磁器
パナソニック汐留美術館「マイセンの動物園展」

300年前、ヨーロッパで初めて硬質磁器を生みだしたドイツの名窯「マイセン」は、いまなお高級洋食器として垂涎の的です。その磁器の技術力の高さは実は、彫像作品によく表れています。

マイセンのさまざまな動物がそろった展覧会

展覧会を構成するのは4つの章。
マイセン磁器で表現された神話と寓話をモチーフとした作品の「神話と寓話の中の動物」。スノーボール作品を中心に器の形態のマイセン作品に表された動物たちを紹介する「器に表された動物」。
柔らかい色合いでし表現された犬や猫、ペンギンといった動物たちの表情が見られる「アール・ヌーヴォーの動物」。
そして、1920~30年代のマイセンでモデラーとして活躍した彫刻家による動物に加え、エッサーに影響を受けた成型師による動物彫刻を展示する「マックス・エッサーの動物」。

《ライネケのキツネ》や《猿の楽団》といった動物彫刻から壺や皿に描かれた動物まで、リアルでありながら可愛らしいマイセンの超絶的な技法による動物たちが一堂に会します。
出品作品は約120点。うち8割が彫像作品で、約9割の作品が個人蔵で展覧会に出品されるのはこれが初。いずれも次の公開があるかないかというレアものぞろいなので、これを見逃したら次は……。

展覧会情報

名称 マイセンの動物園展
会期 2019年7月6日(土)~9月23日(月・祝)
会場 パナソニック汐留美術館 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
開館時間 10:00~18:00(8月2日、9月6日は夜間開館につき20:00まで 入館は閉館の30分前まで)
休館日 水曜、8月13日(火)~15日(木)
入館料 一般1,000円、65歳以上900円、大学生700円、中・高校生500円 小学生以下無料 
公式サイト

書いた人

通称TAKE-G(たけ爺)。福岡県飯塚市出身。東京で生活を始めて40年を過ぎても、いまだに心は飯塚市民。もともとファッション誌から始まったライター歴も30年を数え、「和樂」では15年超。日々の自炊が唯一の楽しみ(?)で、近所にできた小さな八百屋を溺愛中。だったが、すぐに無くなってしまい、現在やさぐれ中。