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Culture
2019.09.17

見るものの本能を刺激する!浮世絵で見る歌舞伎の大胆な演出、「ケレン」が面白い!

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なんでもありだから面白いし、気が抜けない。歌舞伎の世界には、現代の芝居や芸術が失いかけている、豪快で痛快で、本能を刺激する楽しさが詰まっています。その楽しさとは「ケレン」。ケレンとは、見た目の面白さや奇抜さを狙った演出や演技のこと。宙乗りや大立ち回り、妖怪出現から血みどろシーンまで、大小の仕掛けによるそれらは、「つくられた非日常」として差し出されるから面白い(し、びっくりするけど怖くない)のです。そして、そんなケレンをさらに過剰に!ユーモラスに!美しく!描いてみせるのが浮世絵。血しぶきも幽霊も、人気絵師の手にかかれば極上の娯楽に早変わり。今回は、歌舞伎のケレンを描いた、見る人をただただ純粋に楽しませてくれる浮世絵作品をご紹介します。

宙に吊られてびゅーんと飛ぶ!めくるめく非現実の世界

ケレン三代歌川豊国「きつね忠信」嘉永元(1848)年 大判錦絵 早稲田大学演劇博物館

舞台から花道に進んだ忠信(実は源九郎狐)が、吊り上げられて空中に浮かび、客席を見下ろしながら3階席上のゴンドラまで飛んで行く…スペクタクルな仕掛けに胸躍る「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)」の宙乗りシーン。錦絵は三代歌川豊国を襲名した国貞の作。

ガマガエルに乗った主人公が、妖術でドロンとガマに変身!

ケレン歌川豊国「見立三十六句撰 天竺徳兵衛」安政4(1857)年 大判錦絵 国立国会図書館

主役の徳兵衛がガマの妖術を使って大騒ぎする「天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし)」。火を噴くガマに乗った徳兵衛が舞台上の池に飛び込んだり、徳兵衛自身がドロンとガマに変身した後、花道でそのぬいぐるみを脱いだり…と歌舞伎ならではの荒唐無稽(こうとうむけい)っぷりが楽しい!

歌舞伎も浮世絵も、化けてだましてナンボです

ケレン歌川国芳「白須賀十右衛門と猫石の怪」天保6(1835)年 大判錦絵三枚続 静岡県立中央図書館

幕末に流布した化け猫騒動に、お家騒動をからめた鶴屋南北(つるやなんぼく)の演目。三代目尾上菊五郎など登場人物の背景に、猫股(十二単を着た怪猫)が現れるが、彼らはその存在に気づかないという場面。国芳の浮世絵では大きな化け猫も描かれ、ケレン度アップ!

血みどろさえも娯楽に変える!ケレンこそ歌舞伎の醍醐味です

ケレン月岡芳年「英名二十八衆句 団七九郎兵衛」慶応2(1866)年 大判錦絵 東京国立博物館 ©Image:TNM Image Archives

「血みどろ絵師」の異名をもつ芳年(ほうねん)が、歌舞伎のスプラッタシーンなどを描いた連作。残酷絵、無惨絵とも。鮮やかな刺青と真紅の下帯に赤い血。強烈な色で彩られた「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」の殺人シーンは、残虐性と様式美が混ざった、凄惨だが美しい見せ場。