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Gourmet
2020.09.02

オーガニックスーパーでは一面が豆腐売り場!?ヨーロッパで独自に発展する豆腐の世界

この記事を書いた人

和食に欠かすことのできない豆腐。その豆腐が近年ヨーロッパで独自に発展しているのはご存知でしょうか。オーガニックスーパーでは、一面が豆腐売り場で占められていることもあるほど、豆腐の存在は一部の層に受け入れられつつあります。ヨーロッパの豆腐とは、一体どのようなものなのでしょうか。ヨーロッパの自然食品やオーガニックスーパーを中心に販売している、ドイツの豆腐メーカー「タイフーン(Taifun)」広報部の方にご協力をいただき、奥深いヨーロッパの豆腐の世界をご案内します。

ヨーロッパで豆腐が人気となったわけ

まず、豆腐がヨーロッパで発売されるようになったのは1980年代のこと。当時は、まだ豆腐を知るヨーロッパ人は少なく、豆腐はアジアンレストランで使われる程度でした。しかし、この30年間で急速に豆腐文化はヨーロッパに浸透することになるのです。初めに豆腐に目をつけたのは、ビーガン(動物性のものを一切食べない完全な菜食主義者)でした。豆腐は良質なタンパク質の含有量が多い植物由来の肉の代用品として知られていくことになります。

その後ヘルシー食ブームの流れで、豆腐はビーガンだけでなく、ヘルシー志向のヨーロッパ人に植物性食事として人気が広がるようになりました。また、豆腐は日本やアジア食だけではなく、自分たちの食文化のどんな料理にも使えて、アレンジがきく食品として知られるようになり、ヨーロッパの食卓に浸透していくことになります。

ヨーロッパ人にとっての豆腐の味

日本で美味しい豆腐料理のひとつは、豆腐の味をシンプルに楽しめる冷奴や湯豆腐です。日本には豆腐の美味しさをとことん極める豆腐屋も多くあり、こだわりを持って作られた豆腐をシンプルに味わうことは、ちょっとした贅沢ではないでしょうか。しかし、ヨーロッパの食卓において、日本人のように豆腐をシンプルに食べることはほとんどないのです。その理由は、豆腐には味がないから。食べた瞬間、豆腐の美味しさが口の中に広がっていくあの感覚。ヨーロッパ人にはその美味しさがなかなかわからないのだそうです。

確かにヨーロッパの木綿豆腐などは水気がなく、ぱさぱさとした食感で豆腐そのものの美味しさを堪能できるものではありません。豆腐を純粋に食べるというよりは、お肉の代用としてアレンジするために作られてきたからです。しかし、ヨーロッパの豆腐もここ10年ほどで日本のものと近くなり、絹ごし豆腐は日本の豆腐に近い美味しさが感じられるものも販売されています。それでもヨーロッパの絹ごし豆腐もやはり味がないと感じるそうで、ヨーロッパ人と日本人では豆腐の味の感じ方が違うようです。

ヨーロッパ人の豆腐の食べ方

ヨーロッパで販売されている豆腐

それでは、ヨーロッパ人はどのように豆腐が食べるのでしょうか。豆腐は基本的に動物性タンパク質の代用品という位置ずけで調理されています。例えば、パリで数年前から見かける豆腐ハンバーガー。豆腐をハンバーグ代わりに食べるという食べ方です。豆腐をミキサーにかけ、味付けをして焼いてハンバーガーとしていただきます。お肉のジューシーさが特徴的なハンバーガーとは違いますが、食感もしっかりしていて、意外と美味。ベジタリアンやビーガンだけでなく、女性に人気があります。

私が住むフランスではがんもどきに近い豆腐のガレットというものがフランスの豆腐メーカー「SOY(ソイ)」から販売されています。木綿豆腐をがんもどきのように具材を混ぜて味付けをして焼いたもの。オーガニックのお店では、豆腐ガレットはチーズやきのこ、ハーブ入りのものなどがあります。調理法も、フライパンで3分ほど焼くだけと、いたって簡単。ビーガンやベジタリアンだけでなく、忙しくても身体にいいものを食べたいという、ヘルシー志向のヨーロッパ人に人気があります。

また、ヨーロッパでは豆腐はマヨネーズがわりに豆腐マヨネーズというものが販売されています。豆腐とオイルで作られるのですが、マヨネーズ代わりになる美味しさ。豆腐がしっかりと厚みを出してくれ、オイルも普通のマヨネーズよりは少ない分量でできるので、ヘルシーなのです。

それ以外に豆腐はスイーツにも使われることもあります。生クリーム、クリームチーズやバターの代用として豆腐が使われるのです。特に絹ごし豆腐はその柔らかな食感がデザートに向いているようで、ティラミスやチョコレートケーキなどに使用されています。

バラエティー豊かなヨーロッパの豆腐

ヨーロッパでは豆腐は木綿豆腐や絹ごし豆腐以外にも、フレーバー豆腐が販売されています。豆腐に味がないと感じる人の多いヨーロッパで、豆腐といえばフレーバー豆腐が一般的になっていると言ってもいいでしょう。「タイフーン(Taifun)」広報部の方によると、豆腐をヨーロッパで販売する際に、ヨーロッパ人の嗜好に合うものに豆腐を作り変える必要があったのだそう。その中で、トマトやバジル、マンゴーカレーなどのフレーバー豆腐が生み出されていきました。

フレーバー豆腐は木綿豆腐から水分を抜き取ったようなかなり硬め豆腐となっています。最初はバジルやトマト味って豆腐に合うのだろうかとちょっと疑問に思っていましたが、いざ食べてみると意外に食べれる味です。豆腐ガレットのように焼いたり、サラダと一緒にいただくのが一般的な食べ方です。

ヨーロッパには燻製の食文化があり、燻製豆腐もヨーロッパでは販売されています。燻製豆腐は味わい深い味となっていて、ワインなどのおつまみとしてアレンジがききそうな味となっています。

私たち日本人が慣れ親しんだ豆腐が遠いヨーロッパで独自に発展していったのは興味深いこと。今後、豆腐はどのようにアレンジされていくのか、楽しみです。

書いた人

大阪生まれ。学生時代は東京で過ごし、卒業後なんとなく思い立ちフランスへ移住。パリの大学院では文化コミュニケーションを学ぶ。気がつけばフランスでの生活も十余年。どっぷりと洋の生活に浸かる中で、和の魅力を再発見する日々。第二黄金期時代の日本映画とスクリューボールコメディ、銘仙着物、和食器が好き。