鯛は魚の王様。江戸時代には魚の中の魚と称えられました。美味と豊饒の象徴でもある晴れやかな食材です。ご飯ものやお茶漬けにしても、なお品格ある魚は鯛だけでしょう。そのおいしさをたっぷりと味わいたい!そんな思いをしっかり叶えてくれる、鯛を扱いなれた料理店をご紹介。名店の贅沢な鯛茶や鯛飯。食べているほんの数十分が、豊かな時間に昇華しそうです。
鯛には胡麻の風味がよく合う!
銀座あさみの鯛茶漬け
鯛茶で名を馳せる「銀座あさみ」は白胡麻を、そこからほど近い「ぎんざ山路」は、黒胡麻を使う変わり種です。
ぎんざ山路の鯛茶
東京では、新橋演舞場界隈の花街の名残を残すあたりに鯛茶の名店がいくつもあるのが面白いところ。まぐろを魚の華とする東京にあって、このエリアだけは鯛を別格に扱っているように感じるのです。
銀座あさみ
ぎんざ山路
鯛一尾がのる存在感と贅沢感
六本木与太呂の鯛めし
鯛のうまみを余すところなく土鍋で炊き上げる鯛飯の名店、「六本木与太呂」の本家があるのは大阪。ではこのスタイルの鯛飯は大阪が発祥かと思いきや、そうではありませんでした。聞けば、大阪の創業者が、鯛の名産地でもある愛媛県の宇和島に行った際、巡り合った一品からとのこと。おいしさとプレゼンテーションの素晴しさに感銘を受け、自分の店でも取り入れたそうです。
六本木与太呂
そぼろ状の鯛の美しき逸品
銀座皆美の鯛めし
そぼろ状の鯛飯では、盛り付けの美しさでも目を引く「銀座皆美」のエピソードが面白い。こちらの本店は島根県の松江です。松江藩の7代目領主、不昧(ふまい)公松平治郷が、オランダ料理と自身の好みを融合させてこの逸品をつくり上げたというのです。不昧公はそもそも汁かけ飯が好きで、またねぎやわさび、海苔といった「そば具」と呼ばれるものを消化促進のため日常的に摂っていたそうです。そこに鯛を合わせ、そば具をのせ、出汁をかけて食べる御殿料理に仕立てたのが、皆美スタイルの始まり。格式ある料理になったのもお殿様が好む鯛ならではでしょう。