Gourmet
2019.09.30

カレーは和食?レトルト食品大国ニッポンのレトルトカレーは非常食にもおすすめ

この記事を書いた人

カレーという料理は、実に面白い。

カレーは様々なスパイスを使ったインドの煮込み料理の総称だが、その姿は日本のカレーとは程遠い。いや、日本のカレーが本来の姿から逸脱していると言うべきだろう。インド人にとってのカレーとは、あらゆる具を入れたスープである。それにチャパティを浸して食べるのだ。

一方で日本のカレーは、スープどころかシチューのようなとろみがついている。これを米飯の上にかけて食べる。日本を訪れた外国人は、日本語の「カレー」が英語では「Curry」と訳されていることに対して驚愕する。このふたつは、実際には全く異なる料理だからだ。

「Curry」と「カレー」の違い

海外、特に南アジアや東南アジアを訪れたことのある人なら、日本国外の「Curry」を体験したことがあるだろう。

まず、Curryはカレーのような麦茶色ではない。黄土色のものもあれば、薄緑色のものもある。そしてCurryは必ずしも米飯とセットではない。むしろ米飯がないことの方が多い。

日本人は弥生時代からコメを食べて生きてきた民族だ。しかもそのコメは南アジアで消費されるインディカ種ではなく、粘性のあるジャポニカ種。明治時代に日本にやって来たCurryがコメの性質に合わせて独自進化を遂げたことは、まさに必然である。

さらに日本のカレーは、インドでは食の禁忌に触れてしまう牛肉と豚肉を躊躇なく入れる。前者はヒンズー教徒、後者はイスラム教徒が口にできない食材だ。

故に、「カレーは和食」というのが世界の共通認識なのだ。

レトルト食品になったカレー

その上で、日本人はカレーをレトルトパウチ食品として開発してしまった。

日本は世界の頂点に立つレトルト食品開発国であり、この分野では他の国々に勝っている。これは決して誇張ではない。

レトルトパウチを開発したのはアメリカで、元々は軍用糧食のための発明である。それを一般市場向けに発売する動きはあったが、アメリカは第二次世界大戦前から電気冷蔵庫が家庭に普及していた国だ。わざわざ食品をレトルトパウチに詰めて売る必要性がなかった。

だが、国が変われば事情も変わる。アメリカほど冷蔵庫が普及していなかった日本では、「思い立ったらすぐに食べられる」「常温で何か月も保存できる」というレトルト食品の利点が大いに受け入れられた。

その先鋒が大塚食品の『ボンカレー』である。

「レトルト食品大国」としての日本

日本のカレーは先述の通り、「スープ」ではない。どちらかと言えば「ソース」に近い料理だ。それを米飯の上にかけるわけだが、これほどレトルトパウチと相性のいい料理は他にないのかもしれない。

日本式のカレーがなければ、レトルト食品の普及と発展はもっと遅れていたはずだ。

現に海外では、中身を問わずレトルト食品自体を見かけることがあまりない。全く存在しないというわけではもちろんないが、日本ほど色とりどりのレトルト食品が売られている国はどこにもない。

筆者は1年のうちの3ヶ月ほどを東南アジアで過ごすが、この地域で代表的なレトルト食品といえば粉末飲料である。現地の人々が休憩時間を過ごす屋台には、必ずレトルトパウチのお茶やコーヒーがぶら下げられている。これを1袋ずつ切り取って使う仕組みだ。

しかし、腹を満たすために食べる料理をレトルトのもので済ませるということはあまりない。せいぜい袋麺か、ごくたまに缶詰を開けるくらいだろう。

そういう事情があるから、筆者が東南アジアに渡航する際はよくレトルトカレーを持参する。現地の友達へのお土産にするのだ。相手からして見れば「日本でしか売られていない珍しい食べ物」だから、それだけでも大いに喜んでくれる。

非常食に最適!

日本は自然災害が頻発する国でもある。

先日、筆者の住む静岡市に台風15号が接近した。この台風は当初、駿河湾の西側即ち静岡市に暴風域が上陸すると予報されていた。ところが徐々に東へ逸れていき、結果として房総半島に大きな被害を与えた。

やはり、常日頃から非常食の用意だけはしておかないといけないと痛感している。筆者の自宅の食料棚には人数分の缶詰、カップ麺、そしてレトルトパウチのカレーと米飯がある。もちろん、いざという時のために使う用途だ。

特にレトルトカレーは、災害時には大活躍必至の食品。もっとも「大活躍必至」というのはいささか不謹慎かもしれないが、阪神大震災を経験した筆者の友人曰く「カップ麺とレトルトカレーには本当に助けられた」とのことだ。それがなければ、避難生活も破綻していたという。

日本人の偉大な発明であるレトルトカレーは、大災害に遭遇してしまった人々の命をも救っているのだ。