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2019.12.10

パリジャンから大人気!フランス流「寿司」は日本と何が違うの?合わせるお酒も紹介

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パリの街を歩いていると、『寿司』と書かれた赤提灯が掛っている寿司レストランを多く見かけます。そう、パリではここ10年ほど寿司がブーム。しかし、フランスの寿司は私たち日本人が食べる寿司とは異なります。フランスではどのように寿司が食べられるのでしょうか。現地からフランスの寿司事情を紹介します。

ヨーロッパ1の寿司消費大国フランス

一昔前、フランスでは「寿司の生魚がちょっと…」という理由で、寿司はそこまでフランス人に受け入れられていなかったように記憶しています。生魚を食べる習慣のないフランス人は、寿司、刺身を体が受けつけないといったようでした。しかし、90年代の後半からフランスで寿司レストランが増え始め、スーパーにも寿司のティクアウトコーナーができ始めるようになりました。そして、2013年フランスはヨーロッパ1寿司を消費する国という結果が発表されました。なんとフランスではマクドナルドやバーガーキングなどハンバーガーのファストフードチェーン店と寿司レストランの数があまり変わらないという驚くべき結果も出ています。美食の国フランスでは、寿司ブームが何年も続いているのです。

寿司はパリジャンに人気!

市場調査・コンサルティング会社Kantar TNSは寿司ブームの実態を把握するため、フランス人の寿司の購買消費統計調査を行いました。Kantar TNSの調査によると、22%のフランス人は少なくとも月一回は寿司を食べると回答しています。一方で、寿司ブームとはいえ、全てのフランス人が寿司を食べる習慣はあるわけではなく、50%のフランス人は寿司は食べる習慣がないとも答えています。また、寿司ブームはフランス全土ではなく首都中心であるのが特徴。少なくとも月一回は寿司を食べると回答した40%のフランス人はパリまたはパリ郊外に在住。実際、2015年、フランスに寿司レストランは約1500件あり、そのうち、3分の2はパリ、またはパリ郊外に集中しています。パリには趣向を凝らした寿司レストランが増え始め、寿司はグルメで見た目も美しいフォットジェニックな食べ物と認識され始めています。

フランスでは寿司はファーストフード

日本で寿司といえば、何年も修行をした職人が握る寿司店や回転寿司が一般的ですが、フランスではSushi Boxと呼ばれるテイクアウトの人気があります。フランス人は寿司をファーストフードとして捉えています。特にSushi Shop(スシ・ショップ)やPlanète Sushi(プラネット・スシ)のランチボックスが人気です。Sushi Shopは年々販売規模を拡大し、大型スーパーのカルフールやモノプリでもSushi Boxを販売しているほどです。その人気の理由は冷めていても美味しくて、持つ帰りが簡単で、自宅で分け合いながら食べることができるという点のようです。

パリ郊外の我が家のポストには寿司のデリバリーのチラシがよく入っています。

また、現在フランスでは寿司宅配が流行中です。フランスでデリバリーといえば、ピザか寿司かというぐらい、寿司のデリバリーは市民権を得ています。スマホやネットで簡単に注文でき、すぐに配達してくれるというのが人気の理由です。寿司のデリバリーをよく利用するフランス人は「寿司はピザに比べて、特別感、高級感がある。それに何と言ってもヘルシーだ」と話します。

日本人経営の寿司レストランは極めて少ないフランス

パリに集中する寿司レストランですが、数多くある寿司レストランのうち、日本人経営は数えるほどしかありません。フランスの寿司屋は主に、中国人経営がほとんどです。しかし、多くのフランス人にとって、寿司レストランが日本人経営かどうかというのはさほど重要ではありません。実際にどの寿司レストランでも毎日多くのフランス人客で賑わっています。

フランスで人気の寿司のネタは?

フランスでブームの寿司ですが、実は日本の寿司とはかなり別物。日本の寿司ネタの魚の種類は実に豊富ですが、フランスの寿司ネタは基本的にサーモン、マグロ、海老、いくらです。中でもサーモンが一番人気で、多くのSushi Boxには、ネタはサーモンがふんだんに使われています。魚屋では、鯛やアジなどは普通に販売されていますが、寿司ネタとして使われることはあまりないようです。

フランスではMaki(マキ)と呼ばれる、巻き寿司の人気があり、創造的な巻き寿司が多く見られます。巻き寿司ではアメリカ同様アボカドが多く使われているのが特徴で、チーズが名産のフランスらしく、巻き寿司にチーズが入っているものが人気です。また、海外では意外に多い海苔が苦手という人の為に、生春巻きの皮とサラダを海苔代わりに使った巻き寿司などもあります。年々フランス人の嗜好にも合わせた寿司も増えてきて、フランスの寿司はフレンチナイズされつつあるのです。

お洒落なフランスの寿司

最近のフランスの寿司は、見た目もお洒落なものが増えてきているのが特徴です。テイクアウトで一番の売上高を誇っているSushi Shopではエビフライを巻いたカルフォルニアロールにオニオンのフライチップが乗っている創作的なカルフォルニアロールやこれまたエビフライを巻いた寿司にマグロとスパーシーソースの乗ったカルフォルニアロールなど創意工夫された寿司を提供しています。

またSushi Shopでは、フレンチの有名シェフとのコラボレーションも好評を得ています。パリの二つ星レストランの「シュール ムジュール パール ティエリー・マルクス」総料理長であるティエリー・マルクス(2013年)、世界一星を持つシェフと言われた故ジョエル・ロブション(2014年)や、2017年日本人オーナーシェフの店として初めてフランス版ミシュランガイドの2ツ星を獲得した「レストラン・ケイ」のオーナシェフ小林圭(2017年)等とのコラボが話題となりました。フレンチシェフが手が蹴るのはフランスと和を融合した創作寿司。まるでフランス料理のように思えてしまうほど、見た目も美しい寿司です。

フランスでは寿司は白ワインと!

フランス人はどのアルコールと合わせて寿司を食べるのでしょうか。ワインの国のフランスでは、白ワインと寿司の組み合わせの人気あります。ブルゴーニュ地方のシャブリやアルザス地方のピノグリ、リースリング、ケヴュルツトラミネール、ロワール地方のサンセールやポイリーフュウメなどの白ワインが寿司によく合うと言われています。近年パリでは酒ブームなので、酒と寿司を楽しむフランス人も年々増えています。また、寿司レストランでは、日本のビールキリンやアサヒと一緒にいただくのが好きというフランス人もいます。

一流フランス料理のシェフも寿司レストランをオープン

フランスではここ数年、フランス人のシェフによる寿司レストランのオープンが目立ちます。故ジョエル・ロブションは日本酒の旭酒造がタッグを組みJoël Robuchon Dassai(ジョエルロブションダッサイ)をパリにオープンしました。メディアでも人気のフランス人シェフ、シリル・リニャックがLe Bar des prés(ル・バー・デ・プレ)を開店し、フランスの寿司は仏和融合の創作寿司として、一段上のステージに入っています。

日本の寿司がフランス人の口に合うように創作されたことは、興味深い事実です。実際フランスの創作寿司はなかなか美味でした。フランスの寿司のさらなる進化が楽しみです。

参照文献

ISA,  Les sushis, un plat courant et accessible pour 22% des Français

L’express,Les chefs français se lancent dans le sushi!

BFM Business, Le sushi : un marché au bord de l’implosion,

Le Figaro,La concurrence se durcit sur le marché des sushis

20minute,Les restaurants de sushis presque aussi nombreux que les fast-food

書いた人

大阪生まれ。学生時代は東京で過ごし、卒業後なんとなく思い立ちフランスへ移住。パリの大学院では文化コミュニケーションを学ぶ。気がつけばフランスでの生活も十余年。どっぷりと洋の生活に浸かる中で、和の魅力を再発見する日々。第二黄金期時代の日本映画とスクリューボールコメディ、銘仙着物、和食器が好き。