平安の随筆家・清少納言も愛でた、秋のすすき
平安時代の宮廷で一条天皇の中宮(ちゅうぐう)定子(ていし)に仕えた清少納言(せいしょうなごん)は、名随筆集『枕草子(まくらのそうし)』64段で、「秋の野のおしなべたるをかしさは、薄(すすき)こそあれ。穂先の蘇枋(すおう)にいと濃きが、朝霧に濡れてうちなびきたるは、さばかりの物やはある」と書いています。
現代の言葉にすると、「秋らしい風情がただよう野原には、やっぱりすすきがなくちゃ。穂先が赤くなったすすきが朝露に濡れ、風になびいている姿よりも素晴らしいものって、ほかにあるかしら」。清少納言のひとかたならぬ〝すすき愛〟が溢れています。
すすきは『万葉集(まんようしゅう)』にも詠(うた)われ、平安時代には秋に欠かせない草花として、人々の心に強いインパクトを与えていたのです。
現代のすすきの名所、箱根仙石原へ
箱根(はこね)仙石原(せんごくはら)はその昔、樹木の広大な草原が広がっていた場所で、〝開墾したら千石もの収穫があるだろう〟ということから「千石原」と書かれていたといいます。
結局は開墾されることはなく、ススキの群生は守り継がれ、「かながわの景勝50選」「かながわの花の名所100選」に選ばれ、たくさんの人の目を楽しませています。
仙石原・台ヶ岳(だいがだけ)の斜面をおおいつくすすすきは、9月から穂が徐々に黄金色になり始め、最盛期は11月ごろ。一面に広がるすすきは幻想的なほどで、圧倒的なスケールで迫ってきます。
また、時間や日差しによって表情は変わるところも見どころで、朝は優しく瑞々しく、日中は黄金色に雄大に波打ち、風に吹かれ夕の姿には物悲しさがただよう……。
すすきをかき分けるようにして続く道から、また離れたところから、どこから見ても日本の秋の情緒を味わうことができるのも仙石原の魅力です。
仙石原ススキ草原 現在のススキ状況
すすきの移ろいを堪能できる「小田急 箱根ハイランドホテル」
仙石原のすすき草原の近くに立つ「小田急 箱根ハイランドホテル」は、三井財閥の総帥(そうすい)まで務めた実業家・團琢磨(だんたくま)男爵が大正14(1925)年に建てた別邸をいかして、長男・伊能(いのう)が昭和32(1957)年に開業。昭和52(1977)年に現在の建物に建て替えられました。
現在は、「森のレジデンス」の客室に温泉露天風呂付きツインがあるほか、愛犬と泊まれるドッグフレンドリールームも用意。料理や温泉、スパなどで好評を博しています。
とりわけ秋のすすきの時季におすすめしたいのが、夕・朝食付きの【お日にち限定】秋の風物詩、仙石原高原で秋を満喫!すすきプラン(11月30日まで)。秋から冬へと移り変わる季節の美しさを、ゆっくり味わってみてください。
左/ようやく全線開通した箱根ロープウェイ。右/小田急 箱根ハイランドホテルの「森のレジデンス」温泉露天風呂付きツイン。
左/11月13日まで開催の「箱根スイーツコレクション2016秋」にて、小田急 箱根ハイランドホテルで提供されているお月見をテーマにした一品。右/大人の高原リゾートらしい趣で迎えてくれるホテルの外観。