穏やかな刈込に茶室が見え隠れするのどかな庭園
-文/和樂スタッフ小西治美(京都出身のフォトエディター。寺社にも強い)-
嵐電北野線の等持院(とうじいん)駅から静かな住宅街を散策すること約10分、足利家ゆかりの「等持院」に着く。沿線に洛西の名刹が点在し、住宅地を縫うように走る嵐電は、500円の1日フリー乗車券を求め、目的の社寺まで歩くのがおすすめ。
等持院は、室町幕府を開いた足利尊氏が天龍寺の夢窓疎石(むそうそせき)を開山に迎えて衣笠山の南麓に創建。そして歴代足利将軍の菩提寺として発展した。境内の霊光殿(れいこうでん)には、足利尊氏の念持仏と伝わる地蔵菩薩像を正面に、左右には足利歴代の将軍と徳川家康の木像が安置されている。その容貌は実物に忠実につくられているというが、一体一体個性的に表されている。たとえば金閣寺をつくった3代義満は、じつに福々しい顔だ。
日本庭園は西芳寺(さいほうじ)、天龍寺の庭園をつくった夢窓疎石の作と伝わるが、後世に幾度も改修されている。方丈の北側に尊氏の墓所があり、それを境に東西ふたつの池を中心とした庭が展開する。
書院から西側の庭園に降り立ち、高台に立つ茶室清漣亭(せいれんてい)に向かう。この茶室から見下ろす芙蓉池(ふようち)と方丈の眺めも味わい深い。清漣亭の東には樹齢400年余という有楽椿(うらくつばき)があり、早春から3月までピンクの花を咲かせる。苑路(えんろ)を進むと東庭に至る。ここは大小ふたつの島で亀島をなす心字池(しんじいけ)があり、閑静な佇まいを見せる。池の周辺には四季折々の花が咲き、いつ行っても目を楽しませてくれる優しい日本庭園である。