恵文社 一乗寺店
-文/和樂スタッフ高橋亜弥子
(旅をはじめ日本文化全般。彬子女王殿下連載担当)-
いい書店といい喫茶店、それにいいパン屋があれば、その町には人が集まる。京都の中心地からはちょっと離れていても、出町柳から〝叡電〟に乗って一乗寺に行きたくなるのは、「恵文社 一乗寺店」があるから。「本にまつわるあれこれのセレクトショップ」と謳うように、ここに来れば出合える本がたくさんある。
新しい本も古い本も、雑誌も小冊子も、つくり手が愛情をもって世に出した本が、選び抜かれて書棚に並ぶ。小説、エッセイ、学術書…という分類で書棚が分かれているわけではなく、独自に立てられたテーマ別に、たとえば「山に行きたい」であれば、山の写真集も登山ガイドも山岳小説も漫画も紀行文も一緒に、並んでいる。単行本も文庫も新書も隔てなし。表紙のデザインが素敵なものは、表紙が見えるように置かれてアピールされる。
星の数ほどある書物を文脈とビジュアルで編集して見せるのは、紙と空間の違いはあるけれど、雑誌的といえるのかもしれない。雑誌のページをめくるときのワクワク感や驚きが、恵文社の店内で書棚を見て歩くときにも感じられるのだ。
ギャラリーやイベントスペースでは絵画の展示やトークショーなどが開催され、本に関係する雑貨も販売している。人と本、本と物、人と物をつなぐ場所。こうした風通しのよい、新しい発見に満ちた書店の存在を思うと、つくり手側としては「いいものを届けます!」と心から誓いたくなる。
恵文社 一乗寺店
(けいぶんしゃ いちじょうじてん)
住所/京都市左京区一乗寺払殿町10 地図
営業時間/10時〜21時
定休日/無休