〝あんこ〟名店東西11店の中から、第1弾は京都・北野天満宮の名店「粟餅所・澤屋」をご紹介します。
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特集 美味しい!美味しい!あんこ銘菓店GP!
ニッポンの食文化ともてなしの心が息づく〝あんこ〟名店東西11店
庶民のおやつとして親しまれてきた日本のあんこ菓子。あんは小豆と砂糖と水を基本につくられるごく単純な食べ物でありながら、深い感動を呼ぶ味わいは魅惑に満ちた日本の伝統食のひとつです。時代を超えて愛されてきた名店の不動の人気菓子11点を選出。
わざわざ店に足を運ばないと手にできないものばかりですが、店を訪れたらその価値がわかります。折箱に詰めてもらっている間に、その店の空気を味わってください。温かいもてなしを始め、小さな和菓子店に宿る美もまた残したい日本の美。あんこ菓子で甘いひとときを過ごしませんか。
370余年続く北野天満宮の茶屋菓子
粟餅所・澤屋の「粟餅」京都
この特集で紹介する11軒のあんこ菓子はその店の家族がつくる味。なかでも、息の合った家族の連携プレーが店頭で見られるのが「澤屋」です。
江戸中期、自作の粟(あわ)を餅につき「粟餅」として北野天満宮境内で売ったことに始まり、今でも茶店で供するのはこの一品のみ。
13代目主人・森藤哲良(もりふじてつろう)さんを中心に、3世代の家族が入り交じって華麗な手さばきを見せる光景は、粟餅と並ぶもうひとつの〝北野名物〟。
注文が入ると、それっと始まる家族総出の餅菓子づくり。つきたての粟餅をちぎって丸める役。団子の餅にあんをまとわせる役に細長い餅にきな粉をかける役と、家族だれもが同じことができるのです。
これほどまでに手早く、できたてを出すのは、粟餅が少しでもやわらかいうちに食べてもらいたい一心から。
自慢のこしあんは、ヘラですくったらスッと跡が残るぐらいに練り上げます。やわらかな粟餅に寄り添う、しっとりとキメの細かいあんこ。仕上げの決め手をしつこく聞いたところ「北野さんに毎月奉納する粟製の鏡餅のお返しにいただくしゃもじを使うてるけど、それかな」とご主人。
冗談ではなく、お授けのしゃもじが調理場から出てきました。柄が短いので指先まであんを炊く鍋の状態が伝わるの・・・かも? あん炊き担当の当代と次期14代目のとぼけたやり取りも家族ならではの和やかさ。どこか粟餅の見た目にも表れているようです。
家族それぞれ、あんこの包み方が違います
店舗情報
粟餅所・澤屋 あわもちどころ・さわや
住所:京都府京都市上京区北野天満宮前西入る南側紙屋川町838-7
電話:075-461-4517
営業時間:9時~17時(売り切れ次第終了)
休み:水曜・木曜・毎月26日
撮影/石井宏明 構成/藤田 優、後藤淳美(本誌)※本記事は雑誌『和樂(2019-2020年12・1月号)』の転載です。