江戸時代も現代も、北斎の名画をガイドにして旅に出よう!
風景版画で名を馳せた浮世絵師といえば、東海道五十三次や江戸名所シリーズをヒットさせた歌川広重(うたがわひろしげ)、そして葛飾北斎です。
江戸中期のスター絵師ふたりの木版画は「作品」ではなく「商品」。
江戸に暮らす人々の楽しみだけでなく、武士や商人たちが参勤交代や商いで上京し、国へ帰る際の江戸土産としても爆発的に売れました。
安価で、丸めたり畳んだりすれば持ち運びやすく、現代の旅のガイドブックのような役割も果たした風景版画に、人々はどれほど江戸の薫りを感じ魅せられたことでしょう。
広重の風景画がどこか情緒的なのに比べ、北斎画には〝おかしみ〟があります。おかしみとは、面白さや趣のある感じのこと。
北斎は実際にはない景色を画面に取り込んだり、平面であるはずの絵の中に三次元的視覚効果を潜ませたりしています。
登場する人物だけでなく、水の流れや風が吹く様子もアニメーションのように動き出しそう!
本来あり得ない自然景観も人物も、優れた画力や北斎にしかないアィディアによって疑問を感じさせません。
それどころか「いつか行ってみたい」「自分の眼でこの風景を見たい」と思わせるのです。
江戸時代の人と同じように、令和に生きる私たちも〝北斎の絶景〟に心躍らされます。
50代半ばから精力的に旅へ出た北斎。
その絶景画の実際を目の前にしたら、何を感じるのでしょう。
北斎目線でリアル絶景を眺めてみるのも面白そう。
まずは、『冨嶽三十六景 相州江の島』の舞台、湘南・七里ガ浜へ!
富士山と江の島の絶景は北斎が描いたほぼ江戸時代のまま!
①【七里ヶ浜】神奈川県鎌倉市
正面に富士山、左手に江の島と、北斎の絵図と同じような絶景を望めるのが、稲村ヶ崎から小動岬(こゆるぎみさき)までの七里ヶ浜(しちりがはま)。
特に冬場の冠雪した富士山は格別です。
稲村ヶ崎から腰越(こしごえ)までは江ノ島電鉄の駅が海岸に近いので、この絶景を味わえる気軽なショートトリップが可能。
江の島大橋を渡って江の島へ上陸するのも、徒歩約20分と程よい距離です。
電車や徒歩で絶景が楽しめます。
左の山上には今はなき江島三重塔。潮が引くと歩いて渡れることも!

刻々と姿を変える富士山。江島三重塔の位置に現在は展望灯台!

七里ヶ浜・絶景スポット
稲村ヶ崎展望台(鎌倉海浜公園稲村ヶ崎地区内)
神奈川県鎌倉市稲村ガ崎1-19 横浜横須賀道路「朝比奈IC」より約17㎞
七里ヶ浜・立ち寄り情報
「温泉で体を休めながら北斎が描いた絶景を堪能!」 「稲村ヶ崎温泉」は、鎌倉の海と江の島、そして富士山まで眺望できる日帰り湯。20年ほど前までは世界中で2か所しか確認されていなかったモール泉と呼ばれる天然温泉は、太古から広がっていた松林を源にしたもの。
撮影/佐藤敏和 構成/小竹智子、鈴木智恵(本誌)
※本記事は雑誌『和樂(2017年10・11月号)』の転載・再編集です。

