温泉宿を教えてくださったのは…

山崎まゆみさん 温泉エッセイスト。河出文庫シリーズ3部作『温泉ごはん』『ひとり温泉おいしいごはん』『おいしいひとり温泉はやめられない』(すべて河出文庫刊)が大好評。『味の手帖』に「おいしい温泉 ひとり旅」を連載中。
【福島・会津東山温泉】「会津地鶏の雪見鍋」を「向瀧」で

トップバッターは和樂本誌でもおなじみ、登録文化財制度第一号の温泉宿「向瀧」。
秋から冬の名物鍋が「会津地鶏の雪見鍋」です。ホロホロに煮込んだ手羽先を鶏出汁の鍋に入れて、野菜と一緒に煮込みます。
「仕上げに大根おろしを加えるため、汁がうっすらと白く染まり雪のように見えます」とご主人・平田裕一さん。

山崎さんは「ニシンの山椒漬け」も記憶に残る一品だったそう。
身欠き鰊(にしん)を醤油、酢、みりん、山椒の葉で漬け込む「鰊の山椒漬け」は、「宿オリジナルの日本酒『美酒佳肴』にもよく合いました」。
ほかにも、「鯉の甘煮(うまに)」や「こづゆ」など地域に根ざした食材が堪能できるのがこの宿の魅力。
山崎さんなら「向瀧」でどうすごす?
自然湧出の自家源泉の湯を「やわらかく、肌に優しい」と評する山崎さん。
「どの季節に入っても45℃に保たれていて、やや熱めですがお湯の純度を感じます」。
さらに冬の「向瀧」名物が「雪見ろうそく」。雪深い会津にわざわざ足を運ぶ価値があると評判です。

120本ものろうそくの火をご主人を筆頭にスタッフが毎日、つけて回るそう。
心尽くしのもてなしに心も体も温かくなります。
【山形・湯田川温泉】「どんがら汁」を「九兵衛旅館」で

「どんがら汁」とは庄内地方の冬の名物鍋で、日本海の荒波にもまれて脂ののった寒鱈(かんだら)をぶつ切りにして大根と煮込み、味噌仕立てにしたもの。
大鍋でつくり、汁物としていただきます。「大きなお椀の中には鱈の身や白子、そして鱈の出汁がしみた大根が入っています。
夢中になって食べると、胃腸が温まりました。クリーミーで塩気もあり、お酒がほしくなる味です」
とその味を振り返る山崎さん。

「どんがら」の「どん」とは鱈の「胴体」を意味し、「がら」とは骨や内臓部分のこと。魚の鍋といえば「身」が主役になる料理が一般的ですが、「どんがら汁」は骨や内臓も主役なのです。「九兵衛旅館」のご主人・大滝研一郎さんによると、
「この鍋は身よりも骨や内臓が大事なんですよ。肝をすりつぶして味噌に入れると、なんともいえないコクが出ます」。
「九兵衛旅館」では、どんがら汁が必ず入るコースは毎年1月中旬から2月中旬までの提供(2月中旬以降は、アンコウ鍋のコースが始まります)。
山崎さんなら「九兵衛旅館」でどうすごす?
山形県鶴岡市にあるこの温泉宿は、作家・藤沢周平が愛した宿でも知られている。
藤沢周平ゆかりの品々や直筆の俳句などが集められたギャラリーも見どころだが、いちばんの名物は「金魚が泳ぐ大浴場」。

「ゆらゆらする水面とその中を泳ぐ金魚をのんびりとした気持ちで眺めていると、自然とこちらもゆるみますね。
肌にさらりと心地いい泉質(ナトリウム・カルシウム・硫酸塩温泉)も相まって癒されます」

湯田川温泉は開場1300年と歴史のある温泉地でありながら、大型旅館のない、こぢんまりとした温泉街であるところも魅力。
地元民がお風呂がわりに使用する共同湯「正面湯」も親しみやすくて山崎さんおすすめです。
温泉Tips 山崎さんが温泉旅に持って行くもの1
「温泉旅に必ず携帯するのが、国内の地図。火山帯の位置やどの山から水脈がきているのかを知っておきたいんです」(山崎さん)。
紙の地図の方が広く全体像を把握するのに適しているとか。まねしてみたい!




